火◾️痛い空腹
【火焔】
「・・・痛い」
しばらく天地さんに追い掛け回され
何回げんこつされたか分からない位された
【火焔】
「・・・はぁ」
そして今は岩で固められテラスでお仕置きされている
首だけは出してもらえてるが
・・・首から下は巨大な岩と化している
【火焔】
「・・・苦しい」
・・・首から下はピクリとも動かす事ができない
・・・予想以上に過酷なお仕置きだ
・・・いつになったら開放してもらえるのだろうか?
【火焔】
「・・・・・・お腹空いたな」
何気なくつぶやいた自分の言葉で
【火焔】
「・・・・・・・」
・・・あの子の事を思い出した
・・・あの子もきっとお腹空いてるだろうな
・・・きっと・・・僕よりも
【火焔】
「・・・・・・・」
空腹は僕たち技能者には何より酷な事だけど
きっと、それは他の種族の人たちだって同じ
・・・誰でも空腹は辛いはず
【火焔】
「・・・・・・・」
・・・あの子はいつもこんな空腹を感じているのだろうか?
・・・あの子は今何処にいるんだろうか?
・・・一体いつからこんな生活をしているのだろう?
【火焔】
「・・・・・・名前・・・か」
・・・名前
・・・あの子の名前
・・・あの子は
「ちょっとは反省したか~?」
突然背後から声が聞こえ飛びそうだった意識が戻った
【天地】
「・・・お前、今寝てなかったか?」
【火焔】
「寝てないです!もう辛くて辛くて!寝られるわけ無いじゃないですか!!」
不愉快そうに僕を睨む天地さんに慌てて言い訳した
・・・もう少しで寝てしまうとこだった
【火焔】
「僕はいつになったら開放してもらえるんでしょう!?」
必死に天地さんに言葉を向けた
・・・寝てしまいそうになったけど
・・・この状況は本当に辛い
・・・全身がムズムズするというか
・・・一歩間違えたら気が狂いそうな気がする
【天地】
「まぁ~今回はこれくらいで許してやろうかね~」
そんな僕を愉快そうに眺めながら手を向けた
すると弾けるように僕を固めていた岩が消えて行った
【火焔】
「ぬわー!!」
想像以上の開放感から僕は大きく手を上げ声を上げた
・・・身動きができるって素晴らしい
・・・何故か感動した
【天地】
「次なにかしたら徐々に時間を増やして行くからな~?覚えとけよ~」
そんな僕を見下した目で脅してくる
・・・大人げない人だ
【天地】
「ほら、これやるよ」
そして、突然封筒のような物を投げてきた
その中にはお札が数枚入っていた
【火焔】
「え!?なんですかこれ!?」
【天地】
「給料だよ、お前がここで家政婦やってる」
慌てて声を上げた僕に軽く返してきたが
【火焔】
「もらえないですよ!僕は別に何もやってないですし!!」
更に慌てて天地さんに封筒を差し出した
言葉通り正直僕は何もやっていない
食事を並べて片付けをする程度だ
【天地】
「そーだろ~?俺もそう言ったんだよ~
でも、魔境がやれって言うんだから仕方ないだろ?」
って事はこれは魔境さんからって事なのだろうか?
【天地】
「まぁ~これでお前を遠慮なくこき使えると思えば安いよな~」
・・・って事は今までは遠慮していたのだろうか?
【天地】
「飯の準備は魔境がやってくれてるから早く来いよ~先食ってるからな」
そう言って天地さんは廊下へと歩いて行ってしまった
【火焔】
「・・・いいのかな?」
お金が入った封筒を眺めてみた
・・・確か、100エンが10枚で1000エン1枚の価値で
・・・その1000エンが8枚あるから
・・・8000エンもらったって事だ
・・・ジュースが1本100エンくらいで買えるから
・・・このお金でジュースは80本買える
【火焔】
「・・・でも、そんなにジュースはいらないな」
・・・正直、お金をもらっても使い道が思いつかなかった
お金を封筒のままポケットに入れ真っ暗な廊下をリビングに向かって歩き始めた
【火焔】
「・・・・・・・・」
・・・本当にここの夜は静かだ
・・・まるで時間が止まったようにも感じる
・・・でも
・・・とても美味しいそうな香りだけは感じた
【火焔】
「・・・・・・・・」
その香りに誘われるように足を進め
香りの放つ部屋をそっとのぞき見た
【火焔】
「・・・・・・・・」
そこにはリビングに座ってご飯を食べている天地さんと魔境さんの姿
その姿を見ているだけで僕は自分の空腹が更に増していくのを感じた
【火焔】
「・・・・・・・・」
・・・お腹に痛みを感じるほどの空腹感
・・・今、僕がリビングに行けば僕のご飯が用意されていて
僕はすぐにご飯を食べる事ができ
この空腹感から解放される
【火焔】
「・・・・・・・・」
・・・でも
・・・でも、あの子は
・・・どうなんだろう?
【火焔】
「・・・・・・・・」
・・・あの子もきっと今この場所にいるはず
・・・きっと、この香りを感じているだろう
・・・でも、この場所にあの子の食事は無い
【火焔】
「・・・・・・・・」
・・・あの子は僕らがご飯を食べているのをどんな気持ちで見ているのだろう?
【火焔】
「・・・・・・・・」
僕はリビングに顔を出さず暗い廊下に戻った
そして静まり返ったキッチンを覗いて見た
【火焔】
「・・・・・・・・」
そこには誰の姿もない
物音も聞こえない
でも
【火焔】
「・・・・・・・・」
僕はゆっくりと目を閉じた
・・・なんの物音も聞こえない
・・・誰の気配も感じない
・・・でも
・・・あの子はここにいると思った
【火焔】
「・・・・・・・」
ゆっくり目を開けると
【火焔】
「・・・・・・・っ」
・・・僕の目にあの子が映った
【髪の長い子供】
「・・・・・・・・・」
・・・その子は食い入るように冷蔵庫をのぞき見ている
・・・でも、その中に食べ物なんて入って無い
・・・それはきっとあの子も分かっているだろう
【髪の長い子供】
「・・・・・・・・・」
でも、その子はすがるように冷蔵庫を見ていた
【火焔】
「・・・・・・・・・」
・・・僕はいつもこの子に悪い事しかしてない
・・・良い事だと思ってした事は
・・・この子にとって迷惑にしかなって無くて
【火焔】
「・・・・・・・・・」
・・・もしかしたら
・・・今、僕が考えてる事も迷惑でしかないのかもしれない
・・・でも
【火焔】
「・・・・・・・・・」
・・・僕の手が届くのなら
・・・僕に出来る事をしてあげたいと思った
【火焔】
「・・・・・・・・・・」
僕はその子の手を握った
その手からは小さな温もりを感じた
【髪の長い子供】
「・・・・・・・・・・」
その子は少し怯えたような目を僕に向けた
【火焔】
「・・・行こう」
安心してもらえるように笑顔でその子の手を引っ張り歩き出した
温もりを感じる手を引っ張りながら真っ暗な廊下を進む
・・・そのつないだ手からその子の小さな震えを感じた
【火焔】
「・・・・・・・・」
その子と一緒にリビングに入った
【天地】
「おせーぞ?なにやってんだ~?」
そんな僕たちに天地さんはいつもと変わらない言葉を向けてくる
【天地】
「早くしないとお前の分なくなるぞ~?」
そして、いつもと同じようにからかうような笑顔で笑った
そんな天地さんに少し恐怖を感じた
・・・やっぱり天地さんにはこの子が見えてない
・・・そうとしか思えなかった
【火焔】
「・・・あの」
恐怖は消えないけど天地さんに声をかけた
【火焔】
「・・・僕、今日外で食べて来るんで僕の分も天地さんが食べてください」
今、僕がこの子にしてあげられる事はそれしか思いつかなかった
【天地】
「はぁ?」
そんな僕の言葉に天地さんは不思議そうに頭を傾げた
【天地】
「給料貰ってすぐ無駄遣いか~?ガキがガキな事言ってんじゃねーよ!さっさとこっち来て食え!」
そして僕を叱りつけるように言葉を返してきた
【火焔】
「・・・でも」
そんな天地さんの目から逃れるように視線を下げた
真っ直ぐに僕を見る天地さんの目が
・・・何故かとても怖かったから
【髪の長い子供】
「・・・・・・・・」
突然その子はまた僕の手を振り払った
【髪の長い子供】
「・・・・・・・・・」
そして、その子はテーブルに置いてあるパンを1つ手にとった
・・・今度ははっきりと感じた
・・・パンを握るその子の手は
・・・怯えたように震えている
【火焔】
「・・・待って」
その子の震えを止めるように僕はその子の手を握った
そして、その子が握ったパンを取り上げてテーブルに戻した
【火焔】
「・・・・・・・・・」
・・・正直、怖い
・・・いつもの天地さんなのにいつもの天地さんじゃない
・・・もしかしたらこの子は僕にしか見えてないのかもしれない
・・・でも
【火焔】
「・・・僕」
・・・何故か
【火焔】
「僕、外で友達とご飯食べてきます!」
・・・この子の手を握っていると勇気がもらえる気がした
声を上げ宣言し
リビングに背を向けその子を引っ張るように走り出した
その瞬間
僕は思い出したんだ
【火焔】
「行こう!竜輝!」
僕と初めてあった日に教えてくれた
この子の名前を




