まどろみの国
ふっと目覚めた。
となりでユウがううーん、と言って寝返りをうつ。
私、生きてる。
両手をしげしげとみつめる。
いつからかこの世界ではみんな眠りに支配されて、ごくたまに目が覚める。
眠ったまま安らかな死を迎えるのが通例になっていて、目覚めた私は途方に暮れる。
ユウを起こそうと試みるが、失敗。
起きている間にできることをしなくちゃ。
寝室のカーテンが風に揺れてる。そっと覗いたら窓が開いていて、かなりの高さに目がくらむ。
太陽が眩しい。
起きたら読んで、と書かれたノートを発見。ユウの文字が踊ってる。
「今度目覚めたら海に行こう」
「冷たいミルクとフレンチトースト」
「大笑いしてちょっとだけ泣こう」
「僕が死んだら、おわかれのキスをして」
「生きろ!」
「ずっとそばにいるよ」
お腹は空いてないけれど、フレンチトーストの味を思い出そうとしてみる。
食糧は部屋のドアから差し入れられる。ほとんど手つかずのまま下げられる。
どうして?こんなに眠いのだろう?
生活さえままならないくらい眠って過ごしている。
ユウ。
涙がこぼれてしばし泣きじゃくる。
ノートに「大好きよ!」と書いて、睡魔に襲われる。
今度生まれ変わったら、みんなと一緒に起きて幸せに暮らそう。
「おやすみなさい」
ユウのとなりでまどろむ。
「おやすみ、いい夢を」
白いもやの向こうでユウの声が聞こえた気がした。