死にたい君と僕の出会い
【プロローグ】
「ごめんね 照夜」
僕は無力だ
そう実感させられたのは中学3年生へ進学する時....
僕は中学生1年の夏から彼女(優夢)が居た
彼女といられればなにをしてても楽しかったどんな苦難も笑って乗り越えられた
でも、彼女は僕に何も言わずに自殺してしまった
僕は彼女の事を分かった気になって居ただけで彼女の気持ちなんて何も分かっていなかったんだ
だから、彼女を助けられなかった.....
彼女が最後に僕に言った事は
「自分の好きなように生きて」
だった
だがその言葉だけで立ち直ることは出来ず無気力になっていた高校入学式
完璧と表しても足りないくらいの美しさを持った同級生を見つけた
彼女は茶髪に綺麗な緑色の目をしていた
彼女とはきっと関わる事なんて無いだろうそんな風には思ってた入学式当日予想外にも僕に彼女から話しかけてきた
「ねぇ 君って名前''伊藤照夜?」
それは正しく僕の名前だった
「そ、そうだけど 君は?」
正直入学式の時に見た目は覚えたが名前は聞いていなかった
「覚えてないかな?」
え?会ったことがある?
「多分中学の時に一緒だったと思う 私の名前は佐藤明莉」
明莉...
確かに中学の時に居た、けど中学の時と容姿が全くと言っていいほど違う
「明莉......さん?」
なんでさん付けなんだよ馬鹿
「ごめんね突然話しかけて」
まぁ別に良いんだが確かに混乱してるのかもしれない一旦落ち着こう
「で、話しかけてきた理由なんだけど実は誰でもいいから話を聞いてもらいたくて......その...見た事ある人が居たから話しかけた...と言うか」
なるほどそう言うことか
まぁ用事もないし何かここで話を聞かなかったら後悔する気がする
「良いよ」
ここで良いよと言ってしまったことで僕は3年間あのトラウマと戦うことになるとは思っても見なかった
そして彼女も......
【第1章】
⦿死にたがりな君の人生相談
そうして彼女に着いてきた訳だがこれはどうしたらいいんだろう
まさかまともに話したこともないのに女子の部屋に連れてこられるとは思わなかったぞ
も、もう一度深呼吸をして落ち着こう
まぁきっとこの状況、普通の男子高校生ならとんで喜ぶシュチュエーションなのだろうが僕は喜べない
何故なら喜んでしまったら優夢を裏切った気がするからだ
「お待たせ、じゃあ話を聞いて貰ってもいい?」
「ああ」
良し覚悟は出来た
「実はね私、自殺を考えてるの」
え?
「ちょ、ちょっと待って 自、自殺!?」
「うん。自殺」
確かに彼女は自殺と言った
僕がこの世で一番嫌いな言葉だ
「ごめんねこんな話突然されても困るよね」
まぁそりゃそうなるのが普通だが
「なんで自殺を考えてるの?」
まずはそこから聞いていかないと
「きっと照夜君も知ってると思うけどいじめられてたの」
あぁそんな事は知っていた
だが見ないふりをしてた
「いじめには耐えられてたんだけど私の唯一の親である母を亡くしてもう生きてる意味が分からなくて」
成程そんな事が
「ごめん......明莉さん」
「明莉でいいよ 何?」
明莉はきっと愛想笑いなのだろう
不器用な笑顔で聞いてきた
「僕は明莉がいじめられてたのを知っていたのに助けに入ることが出来なかった」
「そうなんだ」
意外にもあっさりした返答に驚きつつも続ける
「僕は中学3年の時に彼女を失ってどれだけ命が儚いものかを知ったその時から周りの人を助けようとしている」
彼女は黙って聞いている
「だから僕は君を高校では救ってあげたい」
明莉は一通り聞いて口を開く
「そんな事はもういいのただ私は死にたいだけ」
「駄目だ!死んでも奴らは気にも止めないし貴方をいじめた人達だけが幸せに暮らしてしまう!明莉だけが苦しむなんて駄目だ......幸せになって見返してやって欲しい」
それが僕の本心だった
「確かにそれは癪だけどでも生きてて楽しい事なんてなかっただからこれからも幸せにも楽しいと思える事でさえ無いと思う」
彼女の考え方は確かに今までの人生を考えれば妥当だ
だったら……
「僕が、僕が!明莉を幸せにしてみせる」
......言ってしまった
彼女は呆けた顔をして僕を見ている
「あ!ご、ごめ」
遮るように彼女が言う
「じゃあこれから1ヶ月猶予をあげるそれで私が少しでも生きたいと思えたらとりあえず生きといてあげる」
よ、良かった
「熱烈な告白もされちゃったしね」
「ちょ、別に告白なんかじゃ」
「照夜って意外と可愛いとこあるんだね」
最悪だ......
まぁこんな事で明莉が少しでも明るく考えてくれるようになっただけラッキーと思うか......
⦿彼女の最初の要求は?
はぁなんであんな事言ったんだろうか
僕は前日にあんな発言した事を後悔していた
「なんで2人で遊園地なんか......」
「もう!昨日あんなに熱烈な告白してくれたのにもうヘタレたの!」
はぁ......結局告白という事になってしまったのか
でも明莉をこのまま見捨たら絶対にもっと後悔するよなぁ
まぁ告白じゃないと言う所だけ否定しとくか
「だから昨日のは告白じゃ」
「あ!ジェットコースターだ!乗ろ?」
こんな笑顔で言われたら着いていくしか無いじゃないか
昨日の愛想笑いとは訳が違うな
「その笑顔はズルだ......」
「よしじゃあ行くよ!」
ジェットコースターあんま得意じゃないのに
「くそやっぱ乗るんじゃなかった……」
「なんでそんな事言うの〜照夜可愛かったのに〜」
可愛い......かそんな事をお前に言われても嫌味にしか聞こえないな
「おい明莉が起きなかったせいでもう3時じゃねぇか」
「ねぇ照夜口悪くなってない?」
あ、少し口調が荒ぶり始めてるなちょっと落ち着こう
「ごめん ちょっと口悪くなった」
「まぁ良いんだけどね 隠し事が無くなった方が楽だし」
またその笑顔だ
僕に優夢を裏切らせないでくれ
「また暗い顔してる……」
「え?」
暗い顔してる?
そう言われたのか?
「え?じゃないよ照夜私が笑うと何故か暗い顔する」
僕は気持ちを隠すのが苦手だったんだな
自分で気にしてもなかった
「じゃあ私は昨日悩みを聞いてもらったんだから今度は私が聞く番だね」
「え?僕は別に……」
「駄目!これは命令だからね」
女王様の始めての要望は隠し事を無くすって事か?
これは1ヶ月の間に僕が殺されないか?
そんな1日だった
⦿彼女はズルい
あの日の夜は僕のトラウマを話して結局別々の布団に寝た
不幸にも僕の両親も既に他界しているだからどちらの家に居ようと変わりはない
ただ家に帰りたい
「ごめんけど明莉今日は家に帰らせて貰ってもいいか?」
「えぇ〜いつも一人だから人が居ると気分的にも楽なんだけどな」
明莉は本当に半月前に死にたいと言っていたのかと思うほど元気だ
だが、僕は知ってる
明莉が無理している事に、だから僕も極力家に帰って1人にしておきたくは無い
その間に自殺しそうだからだ
「しょうがない、結果を言う日まではこっちに居る」
「ありがとね」
やはり彼女は安堵したような表情をしている
きっと彼女の悩みはあの日言っただけでは無いのだろう
「無理はしなくて良いから」
「......!」
図星だったようだ
明らかに表情がさっきと変わっている
「私は幸せ者なのかもね……」
「突然どうした?」
「そりゃ照夜が気づいてなかったらきっと1ヶ月間ずっと無理してた」
そうだろうな
明莉は心配を掛けないようにしてくれているのは分かっている
「ありがとね!」
さっきのありがとうよりも可愛い笑顔で言う
もしかしたら遊園地の日も頑張って笑顔を作っていたのかもな
「本当に優夢さんは君が彼氏で良かったね」
「止めてくれ昔の僕は今ほど相手を理解してあげられなかった」
だから……優夢は死んだ......
でもそう言うことをサラッと言ってくるあたり彼女なりの優しさなのだろう
「僕は明莉と出会えて良かったと思ってるよ」
「彼女が泣いちゃうぞ」
彼女のそう言っている目は少し悲しみを浮かべていた
明莉はその顔が出来るからズルい......
⦿決断の1ヶ月
「明莉あの日から1ヶ月経ったけどどう?」
そう、今日は明莉が決断する日だ
「照夜......私、分かんない」
「え?」
「私はこれからも生きてて良いのかな? 皆に虐げられて、嫌われて、母親も亡くした私は今誰にも認めて貰えない気がしてならないの 誰も私なんか見てくれない気がする 友達もできない 働く事も出来ない」
「そんな訳あるか!」
僕はいつの間にか明莉の頬を叩いていた
「明莉はとても優しい心を持ってる! 相手の事をしっかりと見てあげられる! 誰よりも我儘だけど絶対に聞いてくれないような我儘は言わない! それは明莉が周りの人に対して気を使ってるからだ! 自分勝手に生きてそれから誰も助けてくれないって言え! 僕はどんなに明莉が自分勝手でも我儘でも絶対に見捨てたりしない! 明莉の性格から全て見てやる! だから絶対に生きてていいかなんて聞くな! 生きてて悪い人間なんて居るもんか!」
いつの間にか僕は泣いていた
でもそれは悲しいからじゃない今の明莉は見ていてとても可哀想だ......
「ごめん......ごめんね ......照夜」
気づいたら2人で泣きあっていた
「結局明莉は生きるのか?死ぬのか?」
「あんなに熱心に私を愛してくれる人が居るなら生きてても良いかな」
あれは僕が再確認してみても愛してると思われても仕方ない
いや!僕には優夢が居る 優夢は裏切れない
その日の夜久しぶりの自分の家に帰れて寝ていると妙な夢を見た
「もう!好きに生きてって言ったのにまだ私に囚われてるの!」
「え?優夢?」
でもそんな事は有り得ない死んでいる人間が今更夢に出てくるなんて
「私が貴方を置いて勝手に死んだのは謝るわ! でも貴方も私に謝りなさい!」
「なんで僕もなんだ」
勝手に死んだのは君じゃないか
「貴方にはちゃんと好きに生きてと遺言を残したはずよ!」
「でも優夢を思い続けるかは勝手だろ」
「そうね勝手よ! でもね! 自分が好きになり始めてる子に対して無理矢理気持ちを隠してるのは凄く......かっこ悪いわ!」
かっこ悪い......
優夢にかっこ悪いと言われたのか......
「そんなあからさまに落ち込まなくても ただ私が言いたいのは1つ! 好きになった子が居るなら告白ぐらいしなさい! 私はもう死んでしまったのだから気持ちを切り替えなさい!」
「なんでだろう優夢にも明莉と同じズルさがある気がするな」
「気にしな〜い」
気にしな〜いって無理に決まってるだろ......
「じゃあ告白ぐらい頑張んなさい!男なんだから!」
「はいはい優夢の事を考えるなとかは無理だけどな」
「早く忘れろ〜!」
そんな事が出来るわけない
まぁ確かに過去に囚われているのも駄目だって自分でも分かってた筈だもんな......
⦿彼女の死を乗り越えたのに
「どうしたの照夜何が吹っ切れたような顔してるけど」
全てお見通しなのかよ怖すぎる
「何?明莉って心でも読めるの?」
「まさか」
と言って明莉は苦笑する
「でも確かに吹っ切れたのはそうだな」
「それは良かった あんなに私に説教してくれる人が自分の事棚に上げて言ってるままだったら私は死んでたかもね」
「直ぐに死ぬってワードを出すの止めよ」
「でも私はまだ死にたいって気持ちもあるよ」
少し沈黙が流れる
「て言っても照夜が死なせてくれないだろうけどね」
「そうだな 絶対に明莉には幸せになってもらいたい」
......ん?今なんか恥ずかしいこと言った気がするぞ
「......嬉しいよ照夜」
「なんでくっついてくる!」
「照夜が可愛いからかな〜」
やっぱ明莉って死にたいと言ってたのも嘘なんじゃ...ない...か?
え?明莉が倒れ......た?
なんで!なんでなんで!クソっ明莉は1時は思い直そうとしてくれたけどまだやっぱり完全に思い直した訳じゃなかった!
そりゃそうだ! 死にたいって気持ちが早々に変わるわけがない!
机の上には睡眠薬が大量に置いてあった、きっとあれを使ったんだろう
とにかく今は明莉が助かることを祈るしか......
それから何とか明莉は一命を取り留めた
だけど僕の心境はぐちゃぐちゃだ
とにかく目が覚めたら明莉と話をしないと!
2日後明莉は目を覚ました
「明莉!」
あぁ......良かった
「馬鹿野郎」
僕は涙を流しながらそう言った
「ごめん......なさい」
明莉も涙を流していた
僕が動いた事で怒られると思っていたのか目を瞑った明莉だったがそんな事気にせずに明莉の体の上に頭を乗せた
「照夜......怒ら……ないの?」
「怒る気力すら無い 生きててくれて良かった......」
本当に体的にも精神的にも疲れていたのだろう
その体制のまま僕は眠ってしまった
「ん......うぅ」
「おはよう照夜」
「んぁ?寝てた?」
「ぐっすりと」
恥ずかしい......
「と言うより明莉なんであんな事を」
「ごめんね 私も1度は生きていようと思ったでも、それでも不安だったの 昔裏切られたように照夜にも裏切られるんじゃないかって だったら死んだ方がまじだと思ったの」
「確かに僕には明莉の気持ちの全てを理解する事は出来ないだからこそ寄り添ってあげたいだから二度と死のうとしないでくれ」
それは心からの"懇願,だった
「本当に心配をしてくれてたのは寝顔でもう分かったよ 凄く安心した顔をして寝てたから」
彼女も全てを察してくれていたようだ
「病院ではとにかく安静にしててくれよ」
「分かってるよ」
そう言って少し前に見せてくれたように苦笑する
その笑顔はもう懲り懲りだ
今回の事件もあったし急いで準備しなくちゃな
⦿遂に夢の(?)同棲生活
「ただいま〜っと」
「おかえり」
明莉が久しぶりに優しく笑った
「で、私が帰ってきたのはいいけどなんで照夜の荷物が泊まらせてた部屋に置いてあるの?」
「こっちに移ってきた」
それ以外に無いのに明莉は何を言ってるんだ?
「いや!移ってきたって外食してきたみたいなノリで言わないで貰える?」
その例えはよく分からないがまぁ良いだろ
「また自殺を試みられたらもう僕の心臓が持たないからな」
「だからって私の家に住むの!?」
何度言えば明莉は納得するんだ
こんなにしつこく聞いてくるほどか?
「いや!照夜は確実におかしい」
「だから心を読むなって」
「ごめん......って読んでないわ!」
確かに僕も感情的に行動していたのは間違いないかもしれない
だが死なれては僕もそのまま後を追って逝ってしまいそうだからまぁ良いだろ
「そうゆう訳だからよろしく」
「よろしくじゃないわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「あぁ良かった!明莉が元気になってくれて」
「そうだね!良かったね!もう何言っても通じないのは分かったから良いよ!」
よしこれできっと明日から明莉に生きていて貰えるだろう
「あ、その代わり家事は交代交代だからね!」
「別に構わないけど洗濯はそっちに任せる」
流石に洗濯はやりたくない 理由はお察しの通りだ
「嫌だよ 別に気にしないから1日置きに交代で洗っといて!」
せめて気にしろよ
「僕が気にするから嫌なんだよ」
「あれぇ?照夜君って何気にむっつりすけべなんだね〜」
何がむっつりすけべだ別に僕はすけべでもなんでもない
「まぁ私も照夜のアレを洗うんだからやるんだよ」
ニヤニヤしながら明莉が話している
「アレとか言うな!別のものに聞こえるだろ!」
「え?下着のことでしょ?」
なんで最初からそう言わないんだ
「頭がおかしくなりそうだ まぁ洗濯は任せるからな!」
「ちぇ〜まぁやってあげるよ その代わり命令権引き続き使うからね」
「しょうがないからそれで許してあげよう」
「何故に得意げなの? まぁいっか」
さぁこれから明莉との夢(?)の同棲生活だ
どうなることやら