歓迎会
今回結構長くなりました。
あらかた仕事が終わり、そろそろ帰ろうかなとデスクの上を片付けている時、部長から声をかけられた。
「鈴木君、今日君の歓迎会をしようと思うんだが、どうかな?」
たしか、上司からの誘いは断ってはいけないんだよな?
でも、遅くまで優を1人にして大丈夫か?
「大丈夫です。」
「本当か?!おーい皆、今日は鈴木君の歓迎会をするぞー!」
すごく嬉しそうに部長は帰ろうとする社員に向かって言った。
「それはいつものところですよね?」
黒髪で眼鏡をかけているいかにも真面目そうな女性が部長に聞いた。
「もちろんだ。さぁ、行くぞー!」
部長は俺の肩を2、3度軽く叩いて、他の社員達と一緒に部屋を出ようとした。
あっ先輩達について行かないと場所分かんねぇ!
俺は急いでデスクを片付け、カバンを持って先輩達のあとをおった。
ここは普通の居酒屋。
今俺の歓迎会をしているが、部長と黒髪で眼鏡の人が酒の飲み勝負?をしていた。
ガチャン!
その音は、部長が飲みすぎて頭を机にぶつけてしまった音だった。
その部長は、そのまますやすやと寝ているのか、幸せそうな顔で目をつぶっていた。
「部長もまだまだですね。」
そう言いながらまだ酒を飲む黒髪の女性。
「さっすが凛ちゃんだね〜」
陽葵先輩に凛ちゃんと呼ばれた女性は、あんなに飲んでも少ししか酔ってないらしく、ハキハキと喋った。
「もちろんです。陽葵さんも私と勝負しますか?」
酒の瓶を片手で持ち上げてそう言う凛先輩。
「いや、私はいいよー。その代わり、陽斗君がしたいって!」
陽葵先輩は横に座っていた俺の背中をバンッと叩き、少し悪巧みをしているような笑みを浮かべた。
「じゃあはい、まずは1本目をどうぞ。」
そう言って酒の瓶1本を俺に渡す凛先輩。
「いや、俺は……」
凛先輩に反論しようと口を開こうとしたが…
「ほら、さっさと飲んで!」
やけに嬉しそうな陽葵先輩に止められた。
俺は仕方がなく、酒の瓶をコップに注ごうとした。
「いや、そのまま飲んでください。」
次は凛先輩に止められた。
俺は仕方なく酒の瓶に口をつけ、一気に飲み干した。
その瞬間、俺はさっきの部長みたいに頭を机にぶつけ、そのまま眠ってしまった。
□◾□
「陽斗君?!」
私は横で眠っている陽斗君をゆすって起こそうとした。
「ひまりしぇんぱい?」
完全に酔ってる……
やっぱりお酒に弱かったんだー。
通りで烏龍茶ばっかり飲むと思ったらそう言う事だったんだ。
「弱いですね。」
そう言い、まだお酒を飲む凛ちゃん。
「凛ちゃんが強すぎるんだよー。まぁ陽斗君が弱すぎるのもあるけど。」
私は作り笑いをしながらそう言った。
「主役がこうなっちゃったんだし、今日はもう解散にしよっか。」
「そうですね。時間も時間ですし。」
「あっはい!」
「ところで、部長とこの新人はどうするんすか?」
スマホをいじりながら蓮君は言った。
確かに…部長も陽斗君も1人で帰れるわけないし、かといって家が分からないから送ることも出来ないし…
私が色々考えていると、凛ちゃんが口を開いた。
「私、この部署全員の住所知っているので、送ることは出来ますが、1人で2人は…」
凛ちゃんナイス!
ってか、なんで全員の住所知ってるの?!ちょっと怖いんだけど……
「じゃあ、私が陽斗君を送るよ!凛ちゃん、陽斗君の住所教えてくれる?」
「では、陽斗君の住所はメールで送っておきますね。」
「ありがと。」
私がそう言った瞬間、自分の携帯がピコンと鳴った。
凛ちゃんからのメールを開いて陽斗君の住所の確認をした。
この距離なら、タクシーでいっか。この距離ならそこまでお金がかからないはず。
「それでは、私は部長を送りますね。」
「了解っす。」
「あっありがとうございます!」
「じゃあ、お疲れ様〜!」
私はみんなにそう言うと、陽斗君を背負ってお店を出た。
ちょっと重いけど、何とか行けそう…
私はゆっくりと近くにたまたま止まっていたタクシーに向かって歩いていった。
今日入社してきたのにもう女性に送って貰えるとか幸せ者過ぎるよ、陽斗君。
私がそんなことを考えていると、何とかタクシーに着いた。
陽斗君を後部座席に座らせ、運転手さんに陽斗君の家の住所を伝えると、タクシーは発進した。
私は運転手さんにカップルだと勘違いされたけど、何とか説明して、多分納得して貰えた。
にしてもカップルかー。何も知らない人には私達がカップルだと思うんだ。
そんなことを考えると、私の体温は少し高くなった気がする。
「ありがとうございました。」
私はまた陽斗君を背負って運転手さんにそう言うと、陽斗君の家へと向かった。
家に着き、陽斗君の鞄をあさって鍵を取り出して、鍵を開けようとした。
……あれ?鍵が開いてる……
鍵を開けようと鍵を鍵穴に差し込み回すと、全く手応えがなかった。
試しにドアノブを回すと、普通に開いた。
家の電気はついていた。
もしかして、陽斗君の彼女さんがいるの?!
そう思った私は、試しにこう言ってみた。
「お邪魔しまーす。」
そう言っても、家の中はシーンとしていた。
誰も…居ない?
そう考えた私は、とりあえず家にあがり、陽斗君をベットの上に寝かせて陽斗君の家をあとにした。
男の子の割には結構片付いていたな……
私はそんなことを考えながら自分の家に帰るため、近くの駅に向かった。




