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2人の朝

「……て……きて……起きて!」


 身体が揺さぶられ、耳元での大声に眠りから覚めた俺。


「んっ……あぁ……」


 意味の無い言葉を発しながら起き上がり、目をゴシゴシとこすると、笑顔のゆうが俺の目の前にいるのを視認した。


「……ゆう?」


 寝ぼけていたのか、目の前にいる少女がゆうであるのか確認すると、ゆうがくすくす笑いだした。


「寝ぼけているの?ご飯作ってみたから、早く食べて!」


 そう言いながら少し床から離れたところでぴょんぴょんするゆうは、小学生のような無邪気さがあった。


 ずっとこのぴょんぴょんを見ていたい……でも、早く食べないと、ゆうが怒りそうだ…


 俺はそう考え、自分の左にあるテーブルを見ると、美味しそうな朝食が並んでいた。

 食パンの上に卵を割り、その周りをマヨネーズで囲んで焼いたものと、カップのヨーグルト、コップに入った牛乳が今日の朝食の献立だった。


 こんな立派な朝食をまた食べれることが出来るとは…


 俺は少しの間、感激に浸っていた。


「いただきます。」


 俺は両手を合わせてそう言うと、目の前の食パンを持ち、そーっとかじった。


「どう?上手く出来てる?」


 少し不安そうな顔で俺の顔を見るゆう。


「すっごく美味しい。」


 正直、食パンが少し焦げていて少し苦味があるのだが、それを言うとゆうが泣き出しそうで怖かったから黙っておいた。


「良かったー。久しぶりに作ったから心配だったんだー。」


 また愛らしい笑顔を見せるゆう。


 あぁ……たまんねぇ……


 しまった!変態のような反応をしてしまった!声に出てたりしてねぇよな…?顔にも出てなかったか…?


 心配になった俺は、ちらっとゆうの方を見た。


 ゆうはテレビで放送されているニュースを見ているみたいで、俺のことは見ていなかったようだった。


 良かった……とりあえず食べないと、会社に遅れてしまう!


 俺は速く、でもしっかり味わって朝食を食べた。


「ご馳走様。」


 俺はまた両手を合わせてそう言った。


 皿を片付けようと、食べ終わった皿を持ってキッチンに行こうとすると、ゆうに止められた。


「後片付けは私がやっておくから、陽斗は出社の準備をしてて。」

 

 ゆうはそう言うと、俺が持っていた皿を持ってキッチンへ向かった。


 幽霊でも皿は持てるのか…


 俺はそんなことを考えながら着替えを始めた。


~数分後~


 スーツ姿になった俺は、玄関で靴を履き替えていた。


「気をつけてね。張り切りすぎて空回りしないように。」


 見送りのために来てくれたゆうは、少し不安そうな笑顔でそう言った。


「心配し過ぎだよ、ゆう。じゃあ行ってきます。」

 

 そう言いながらゆうに向かって手を振る俺。


「行ってらっしゃい。」


 相変わらず不安そうな笑顔で見送るゆう。


 あまりゆうを1人にしたくなかったが、仕事に行かない訳にもいかない。


 俺はそんなことを考えながら家のドアを閉めた。

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