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運命という名の約束

「……なんのこと?」


 少しとぼけるゆうだが、確かに目が泳いでいる。


 しばらく何も言わずにゆうのことを見ていると、はぁとため息をつき、ゆっくりと話し出した。


「半分正解。私ね、陽斗君に会うまでは生前の記憶も今までの記憶全てなくて、気づけばあの桜の木の下にいたんだ。でもね、陽斗君が酔っ払って帰ってきたあの日、突然今までの記憶の波が私を襲ったんだ。きっかけはわからないけど」


 少し控えめの笑顔を見せたゆうは、少し遠い目をして話を続けた。


「これ、言っても信じないかもしれないけど、陽斗君はいままで二回転生していて、一番最初は私の夫だったんだ」


 俺は混乱した。


 俺が転生?ゆうの元夫?


 正直頭の処理が少し追いついていなかった。


「そして、このアパートに陽斗君が転生するたびに引っ越してきて、私と暮らすの。多分、これは運命以外にあらわしようがないとおもうの」


「じゃあ、何故ゆうは俺と転生しないんだ?何故ずっと幽霊としてこの世を彷徨っているんだ?」


 何故か少しずつ受け入れてきた俺は、ふと思ったことを聞いた。


「陽斗君は最初、交通事故の時私のことをかばって死んでしまった。そのおかげで私、さくらは軽症ですんだの」


 俺はゆうがさらっと言った「桜」という名前に少し違和感というか、懐かしさというか、複雑な感情を抱いた。


「その後、私は陽斗君を失った悲しさから病んでしまって、自殺をしてしまったの。かつて住んでいたこのアパートで」


 俺はほとんど理解してしまった。


 何故ゆうがこのアパートにずっといたのか。他の人には何故見えないのか。あの日、交通事故にあった日俺についてきていた理由……


「そして、陽斗君、まこと君を自分のせいで失ったという未練から幽霊として彷徨うことになったの。そして、毎回あなたが転生するたびに記憶はリセットされ、私が記憶を取り戻した日のうちにあなたが死んでしまうことを陽斗君が交通事故にあった日思い出したから急いであとをつけたの」


「でも俺は死んでいない。これは何故だ?」


 俺はその時気付いた。ゆうの身体が少しづつ透けていっていることに。


「私があの軽トラの運転手に憑依して、直前にブレーキをしたの。まぁ、それでも陽斗君は重症を負っちゃったんだけどね」


「そして、このまま放置していたら死んでしまうから次は俺に憑依して救急車に連絡したと」


 俺はゆうに確認した。


「そうだよ。でもよかった。今度こそあなたを守ることができて」


 ゆうの目に涙が浮かび、次第に頬を伝って膝の上に置いていた手の甲に落ちる。

 その時のゆうの表情はとても暖かく、優しかった。


 その時だった。


 ゆうは無数の光に包まれた。


「……?!」


「今度こそは自分も大切な人も助けてね」


 ゆうはその一言を言うと、無数の光となってゆっくりと消えていった。


 気づけば俺の目には涙が浮かんでいた。


 そのあと、しばらくゆうのいた、いや桜のいたところに額を当てて泣きじゃくった。

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