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パンデミックによせて

作者: 清水悠(Yew)

 友人から勧められた動画を見ることにした。

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 動画のサムネイルはどこかの家で撮影された居間の様子。

 ソファーに男女が座っている。

 早速再生ボタンを押すと、色の濃い眼鏡で目元を隠しマスクで口元も隠した男のアップから始まる。

 一瞬引きつったが、カメラのスイッチを押しに来たのだろう。男はソファーまで下がり、そこに置いてあったパネルを手にして座った。向かって左側には女性の姿がある。

 その女性が会釈をして語り出した。

「皆様こんばんは、私はルーシー・ライダーです。国王陛下の随行員をしています。彼の持っているパネルの、国王陛下の車椅子を押しているのが私です。

 彼はジョン……ごめんなさい、職務上フルネームは言えないということなので。つまり、ジョン・ライダー」

 会釈する男性の方を向いて、「ちょっと自分のパネルも出して。ありがとう」

「パネルの首相の後ろに立っていますね。眼鏡で分かり難いけど。そうそう、この映像は去年のものですね。今は二人ともマスクをしています。済みませんが、その説明もしますのでこのままで失礼します」

「ここからは私が説明しましょう。私の眼鏡は職務上のものです。私達はご覧のように一緒に生活しています。しかし、二人とも大変大切な方々と接しないといけない職務に就いています。勿論職務中は殺菌処理された制服を着ていますし、このような私服に着替えてから帰宅します。ですが、彼女も私も感染していない或いは衣服に病原をつけていないとは言い切れないと考えています。そこで、我が家では生活空間を分けることにしました。元々の寝室を彼女の生活空間とし、書斎兼作業部屋に簡易ベッドを持ち込んで私の生活空間としたのです。

 更に、食事は一緒にしないことにし、共有空間は換気を徹底、何方かが利用した後は時間を空けてから利用することにしました」

「ここまで神経質にする必要はないのかも知れません。ですが、私達は二人とも別々の重要な方と接する仕事なので念には念を入れた、と言うことです。

 ここまでご覧になって、私達が並んでソファーに座っていることに違和感を感じた方もいらっしゃると思います。ですが、これは別々に撮影してそれを後から編集したものです。

 今これをご覧になっている皆様はご自宅にいらっしゃることと思いますが、どうか外出なさる前にそれが必要か再度ご検討ください。例えば買い物であっても回数を減らせないか。お子様やペットと散歩に行く時も人混みを避けられる道順を選べないか。

 皆様ご自身が感染・発症しない為だけでなく、感染症を拡げないためにご協力ください。

 ご静聴ありがとうございました」

 彼女がもう一度会釈をすると、彼の方の映像がフェイドアウトして改めて映し出されたソファーにはテディーベアが座っていた。

 彼女は抱き抱えると「代役お疲れ様」とマスク越しにテディーベアにキスした。

 その後近づいてきて手を伸ばし、一つウインクすると動画が終わった。

 と言うわけで、どこかの世界の映像技術のある王政を布いている国家が舞台となっています。私はこの世界のエピソードを夢という形で見聞しているのです。

 この世界のその他の物語については、いずれ機会があれば。


 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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