2話 ゴブリン1
いつの間に移動したんだ...?
全く見えなかった。
生物的には人間に近い動きをすると思う。
人間は走り出すときに踏み込むと言う動作が必要になる。
その時に少しタイムロスをする。
そのタイムロスすらも確認出来なかった。
「グギャ.......ギュア」
黒いゴブリンは何か独り言を呟くように何かを口にするが俺はその言葉がわからないため何を言っているのかすらわからない。
俺は黒いゴブリンをじっと見つめていると黒いゴブリンは手を前にだし、手のひらを下に向くようにだす。
「グギャ、ギャア、グルギャア」
俺はその言葉を聞きながらも手に持つ木刀に力を込める。
黒いゴブリンが何かを言い終わるとその手のひらと地面の間に魔法陣が浮かび上がり、一体の普通の緑肌のゴブリンが召喚される。
「グギャ......」
黒いゴブリンは召喚した緑色のゴブリンに何かを命令し、黒いゴブリンはそのまま近くに置いてあるベンチに座りこちらを見る。
「えぇ?普通にベンチ座るの?」
堂々と歩いていくかと思えばベンチに座るだけだったのか...
今の状況は白亜の巨塔の前で向かい合う俺と緑色のゴブリン。
そして、すぐそこのベンチに座ってこちらを見ている黒いゴブリン。
どう言う状況なんだよ......
俺はとりあえず目の前にいる緑色のゴブリンに集中する。
テレビで見てた感じだとそれほど力はないように感じた。
それに多分戦闘経験などほとんどないだろう。
まぁ、俺も対人はほとんどやった事ないからわからんが、それでもVRで培った戦闘技術はある。
おかしいな。
結構対峙して時間があっているが緑色のゴブリンが襲ってくる気配が全くない。
俺はそう思い黒いゴブリンの方をチラッと見ると丁度、ベンチから立ち上がり、ボクシングの開始合図の様に手を下から上に動かし、
「グギャ......ギャ!」
まるでReadyfightと言っているかの様に黒いゴブリンが言った瞬間に緑色のゴブリンは今まで佇んでいたのをやめ、走ってこっちに突撃してくる。
「やっぱ今の試合開始みたいな合図だったのか!」
俺は咄嗟の事だったが余裕を持って一旦後ろに下がる。
「まずは行動パターンだ」
どんな攻撃をしてくるか。どんな風に回避するか。どんな風に攻撃を繋いでくるか。
まずはそれを観察する。
緑色のゴブリンの攻撃手段は右手に持っている短剣くらいだろう。
後は殴る、蹴るくらいだと予想出来る。
流石になんか変な攻撃はしてこないだろう。
ファンタジー特有の魔法を使ってきたりとか......
あの黒いゴブリンはどんな技が使えるかわからんけど...
俺は横目でチラッと黒いゴブリンを見る。
黒いゴブリンはまたベンチに座って俺たちの戦いを注視している。
「グギャ...」
こっちに集中しろ、とでも行ってくるかの様に緑色のゴブリンは何かを言ってもう一本短剣を何処からか取り出した。
「早くやればよかったかな...」
ちょっと後悔した。