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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
81/173

13-17-4-28

休憩をとってから、全員で食事をして父が結論を持ってくるまで無理をしない程度にダンジョン内を探索することにした。

あくまで普段と変わらないように、エネミーを倒して、換金できるものを拾って、連携を見直して。

あまりにもいつも通りの日常の延長だったので昨日のことはすっかりと忘れてしまいそうだった。

だが、やはりどこか頭の片隅に不安があり、いつもよりも思考が鈍く感じる。

スキルを発動させるタイミング、攻守の切り替えるタイミング、誰がどこに居て何をしようとしているのか把握する視界の確保。

そのどれもがいつもよりうまくできていなかった。

それでも何とかチームワークや経験でカバーをして大きな怪我もすることなく無事に昼頃まで戦い続けることができた。

下の階に行くかどうかの話もあったが、無理に先に進むよりもわかっている場所で無理しない程度に、体力を温存しながら父の結論を待つ、ということに話は落ち着いた。

今、地上ではどういうことが起こっているのか、どんな話し合いがなされているのか。

セーフティーエリアに戻って軽い食事をしながら少しの休憩を取る。

固形食はダンジョンにこもる冒険者たちのために作られただけあってかさばらず、道具袋の中でどれだけもみくちゃにされていようと崩れないほどの強度、さらに栄養面も一つ食べればある程度お腹は満たされて必要なエネルギー等も接種することができる、片手間に食べることのできる大きさでもあるので忙しい人も時間を撮られることもなく食事することのできる、まさに冒険者にとっては必ずと言っていいほどの持っておくべきアイテム。

…なのだが如何せん問題点も多い。

まず味が悪い、食べやすいように味が付いているし、バリエーションもあるのだがどの味もひたすらそうじゃない、と言いたくなるような味付けをされている。

なぜか妙に魚の生臭さだったり、かび臭いチーズのようなにおいがしたり、必要以上に甘い味付けがされているのか。

そして何より堅い。

道具袋の中でもみくちゃになっても大丈夫な硬度をしている、そのせいでとてつもなく堅いのだ。

下手をすれば歯が欠けてしまうほどに。

その硬度を保つためにこれ以上ないほどに水分も抜かれているので一口含めば口中の水分を持って行かれる。

食べるときは飲み物が必須になるし、なんならいつも以上に用意しないといけない。

中には水に浸してふやかしてから食べる、という猛者もいるが水に溶け込むことによって風味がより悪化した、という話も聞く。

ので、結局ただたんに変に細工をせずに食べるという行動の方が被害も少なく食事を終えれる。

味が悪いとは言ったが慣れてしまえば食べることは造作もなくなる。

現にアーロンとソーヤもあまり食べたことがないが、それでも何も考えないようにすればそれなりに食べ進めることができた。

…できれば過度な甘さをつけるのは控えて欲しい、というのは本音だがこれもおそらく必要なエネルギーを取るにはしょうがないことだったのだろう。

そういうことにでもしないといつまでたっても改善されないこの甘さの説明がつかない。

アストとフィーも微妙な顔をしはしているが、それでももしゃもしゃと食べ進めている。

旅での生活中これを食すことも多いからか、少し慣れているようにも見れる。

食事を終わらせると、胃の中に納まった固形食が中で膨らんでいるのではないのか、というほどの満腹感がもたらせる。

こうなってすぐに動くのはあまり推奨できないので、軽く食休みを入れることとなる。

「あいかわらずこれ全然味よくならねぇな。」

「ハハッそうだな、最も味に関しては店でも問題視してるらしくて随時更新しているらしいんだがな…。」

「それでこれかぁ…。」

「もっと前はこれよりひどかった、って意見もあるくらいだからな、だんだんと良くはなってる…んだと思う?」

「よかった指触係の味覚がいかれてるとかじゃないんだな。」

「それもあるかもしれないなぁ…期間限定フレーバーで暴走しているしな…。」

などと冒険者ならだれでもするような会話を繰り広げながら休む。

軽いストレッチをしつつ武器防具の点検もして、少しダラダラとする。

ソーヤは相変わらず警戒心が抜けきらないようで小さな物音がしただけで視線をそちらに走らせたり、すぐに戦闘態勢がとれるようにするために決まったところに弓矢を置いていたりしている。

これでは心も体もあまり休まらないのではないのか、とは思うがその在り方を今すぐに変えることは難しい、ということなので徐々に、旅をしている中で何か変わるようなことがあればいい、とのことだった。

ソーヤのこの行動は幼いころの強烈なストレスによってできてしまったことなので緩和させるにはそれだけ長い時間がかかる…らしい。

ソーヤがダンジョン内でも落ち着けれるように、早く実力をつけてもっと頼れる人にならないと。

そうひっそりと思い、ソーヤの近くに座る。


そろそろいいころ合いだろう、と休憩を辞めて荷物を片付けているときだった。

ソーヤがまた何かの物音に反応してセーフティーエリアの出入り口のところを見つめる。

今度は何だろうか、と思ってアーロンが察知スキルを使用する。

そう大きな物音がしていないはずなので大したことではないはず。

だが、確認は無駄にはならないだろう、という思いだった。

その察知結果は昨日と同じ気配…父だった。

手荷物はあまり多くはなさそうで、特に不自然な歩き方をしているわけでも無さそう。

ともかく怪我はなさそうでアーロンは内心ほっとしつつソーヤに父が来ただけだから大丈夫、と伝える。

それを聞いてソーヤはすぐに身構えるのをやめて、そっか、と小さくつぶやく。

「よう、無事だな?」

ほどなくして父は再びセーフティーエリアに顔を出した。

実際に見ても怪我やら疲弊を感じる様子はない。

「もちろん、もうこの階層じゃ四人なら平気っぽいし。」

「その油断が命取りになることもあんだから油断するんじゃない。」

「わかってるって。」

父がここに来た、ということは何かしら地上で決定が下されたということ。

それが、どういうことなのか少し不安もあった。

だから少しソワソワしていたのかもしれない。

それに気づいた父が少しだけ口元を緩めて、こういった。

「全員ここから出るぞ、ただし…上じゃなくて横から、な。」

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