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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
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11-15-5-24

道中強いエネミーに会うこともなく、少し広い空間にたどり着く。

その出入口のところには見張りのように武器を持って、くつろいでいる者がいる。

「中入ってもいいか。」

ミコトはそう、その人に話しかけ、了承の返答をもらってから中へと入る。

さっきまでのダンジョンの見た目と何も変わらないが、この広間のような空間がミコトの言っていたセーフティーエリアなんだろう、と察した。

無事にセーフティーエリアにたどり着いて、三人は各々好きなところに腰を下ろす。

「にしてもダンジョン内にこういう落ち着ける場所があるんだな。」

「どの階層にも必ずこういう場所はある、といっても安全かどうか、って言われると微妙なんだけどな。」

ミコトの発現に思わず驚き、えぇ、と声が漏れる。

セーフティエリアとは、と言葉の意味を問いただしたくなってしまう。

「セーフティーエリアって呼ばれるのはエネミーが出現しない一定の空間のことを指すから、この範囲内で突然の奇襲はないってだけでエリア外に出現したエネミーなら普通にエリア内に入れるし、攻撃もしてくるだから中にエネミーが入ってこないように、基本的にはあぁやって安全を確保する人がいるんだよ。」

こちらの考えていることを見抜いたように、ミコトが聞かれる前に説明を始めた。

頭の回転が速いとこういう人の考えですら読めるようになるのだろうか、若干の恐ろしさを感じながら説明には納得して、見張りの居た方向を見る。

ミコトの言う通りならばこの広間は出入口が一個しかない袋小路になっているためあの出入口が破られでもしない限りこの広間内はエネミーの出現がない場所となる。

「けどな。」

こういう場所が各層にあるならばダンジョンというのもそんなに危険が多いもの、というわけでもないんだろうか、と考えているとミコトが口を開く。

「一定範囲、つまりこの広間、通路っていう区切りでそれが決まっているわけじゃない。」

「?ここの広間は大丈夫なんだよな。」

「あぁ、ここは一定範囲内のところにたまたまこの広間があっただけだ、ほかのところだとな…細い通路が迷路みたいに入り乱れるところだったり罠だらけの空間だったり、そこ一帯が水没してたり、通路の途中の一部だったり、範囲が狭すぎて意味がなかったり…とセーフティーエリアだけど安全とは言えない場所もあるから実際に安全に使えるセーフティーエリアってのは割と重要なんだよ。」

どこか遠い目を浮かべながらそう答えたミコトの目はどこかここではないところを見ていた。

過去に何かあったんだろうか、と思ったが深い詮索は避けるべきと思い、とくに聞くことなくアーロンは食事の準備を進めた。

ソーヤに一言準備をするぞ、と声をかけると、小さく頷いて飲み物の準備を始めた。


程よく冷えたお茶が汗をかいて渇いた身体によくしみわたる感覚に思わず深めにため息をこぼす。

「ん、これうまいな。」

ミコトは持ってきた自分の分のパンを食べ、うれしそうにそういった。

「な、うまい。」

「うん、おいしい。」

アーロンとソーヤもそう返事をしながら食事をする。

家で父のために用意したとき味見と称して出来立てを食べたあの熱々のものもよかったが、冷めたものだがこの自分たちのために作られたものを友人たちと一緒に同じものを食べる、というのもそれはそれでおいしいものだ。

「これ中身を甘いもんにしてもよさそうだよな。」

「なんだ、ミコトは甘いの好きなのか?」

「まぁな、姉ちゃんも甘いのが好きでさ、双子だからかそりゃもう何するも何食べるも一緒だったからほとんどの好みが一緒だったから多分それで余計にな。」

「双子ってそんなとこまで一緒なのか、不思議なもんだな。」

「全員が全員そうってわけじゃないと思うぞ?正反対なやつもいるし鏡写しみたいなやつもいる、俺と姉ちゃんは似ていた、ってだけだ。」

「そんなに語れるほど周りに双子の実例がいるのがすごいな…。」

「言ったろ?母親の家系が双子がやたらと多いって、だから母さんと伯父さんも双子で、これが正確も食の好みも正反対、そのくせ一緒に居たがって同じことしたがるもんだからさぁ、大変、ってよーくばあちゃんから話されたんだよ。」

言われたことを想像して、それだけでうへぇ、と気分が滅入るようだった。

自分も血のつながった弟がいるし、アードカークに居た頃は近所の子供たちの世話を引き受けたこともあるから自分も子供だったが、それでも年下の小さい子供の世話というのはとても労力がかかる。

中にはそりの合わない性格の子らもいれば、意思疎通が難しい年ごろで機嫌を損ねることもある。

それだけでも大変だというのに、さらにミコトの言っていたようなことが加わってきてさらにそれが毎日のように続く。

「いや…すごいな…。」

「どうしたそんなに感情込めて…。」

「その苦労めっちゃわかる…。」

「あ?えー…?」

ミコトは、まるで親の立場にある人のような反応を返されたから戸惑っていた。

ちらり、とぼんやりとしているソーヤのほうを見て少し、目を見張っている。

恐らく、これはソーヤが手のかかる弟分だったと勘違いされているんだろう。

「いや、ソーヤじゃないからな、故郷の年下の子供たちの相手したときのこと思い出してただけだからな?」

「あ!そういう…なるほどな。」

思考を読まれたことに驚いたのか、ミコトは少し肩を跳ねらせてからそういった。

こういう世間話でなら相手の思考を察して、一言入れることは出来るんだなぁ、と自分の思考力を見直しつつ食事を進める。

ソーヤは話題に上がったことも気にせず…というよりは聞いてないのかもしれないが、のんびりと食事をしている。

「で、この後どうする?」

どれだけダンジョン内にいるのだろうか、下には潜るのか、とりあえずの具体的な目標はあるのか。

午前中はダンジョンの仕組みやら戦闘になれるために一階層で時間を使ったが、慣れてきた今、どう動くかは完全にミコト任せになる。

「そうだな…とりあえず二階に降りてみて数回エネミーとの戦闘をしてからの判断になるが、午後は二階をメインに探索をしたい。」

「わかった。」

「うん、いいよ。」

特に問題はないため、そう返事をして最後一口を口の放り込む。

「じゃ、飯食ったら少しの休憩時間を挟んで二階層に向かう。」

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