13-17-12-5
おやつのデザートを食べ終えて、二人でディアナの言っていた修練場、とやらに向かうこととなった。
喫茶店はあれだけがっつり食べたり追加注文したり、飲み物をいくらかお代わりしたのにも関わらず思ったよりは料金がかかってなかった。
安いのもいい所だよね、と後ろでディアナが言っていた。
下手すると宿屋付近にある安めとうたっている食堂より安く済むかもしれない。
これで営業時間やら店内に入る時の服装やらを気をつけたらここでしばらく食事をするのもありかもしれないなぁ、と思い、アーロンはこの喫茶店の位置をしっかり把握するようにした。
店の位置の覚え方ですら難儀する。
周囲の店はこの喫茶店以外はすぐに変わってしまうことが多いし、下手すると道中の道がどこかで変わるかもしれないこともある。
自由すぎる町だがさすがに道の幅やらを変えるのまではやりすぎでは?と思ってしまう。
まぁわりとよくあることらしいが……。
一応規則として道を大胆に塞いではならない、というルールはあるらしいが、その尺度は個人の判断に任されがちで、道の景色が変わるのは別に構わないらしい。
ここまで大幅に変わるとなるとどうやって道を覚えたらいいのかがさっぱりわからない。
ディアナが言うにはベースとなる町の間隔はそこまで変わらない、ということなので案外大きな道の本数は変わらなかったりするので細道には入らないようにして大きな道だけの本数を数えるといい、という話を聞いた。
まぁその大きな道も先ほどの店が変わると道幅か変わるかもしれない、というところで細道っぽく見えるようになってしまうこともあるらしいが……。
それを言うとディアナは歩数とかも結構参考になるよ、といったが……。
歩数は、いちいち確認してないから少し、いやかなり難しいな……とだけ伝えておいた。
何度も店の改装で道幅がかわったりする、ということを経験するとだいたいの元となったベースの道というのはなんとなくわかるようになってくるらしいが、新参者……というかたまたまふらりとやってきたような冒険者にはとても難しいことだ。
まぁそのおかげかせいか……シペリセラにいる人はだいたい困ったときによく声を掛けてくれたり、道に迷っていたら快く道を案内してくれたりしてくれるのでおおらかな人が多いような気がする。
「それでね~この道を右に曲がって……。」
「待ってくれ、まだ歩くのか。」
「実際の距離はそこまで離れてはないんだけれど結構回り道してるよね、しかも階段の上り下りもあって複雑だし。」
「どうしてこんなところに……。」
「ギルドができた後で作られたもので、居住区あたりに近くなくって、表通りにはあんまり面してなくって、広い場所が確保できる……っていうのがここしかなかった、って話を聞いたよ。」
「あぁ……一応色々考えた結果なのか……。」
「まぁそのせいで色々通りにくさやら道の幅やら~~って問題が出てきて結局妥協案としてこういう階段が出来上がったわけだよね。」
「もはやこれ修練場いくまでが訓練じゃねぇか……。」
「いえてる!」
そのようにして話ながらわりと歩き回って数分。
ようやく修練場にたどり着いた。
修練場は思ったよりも広く、そして人が少なかった。
「人少ないな。」
「この修練場の存在を知ってる人がそもそも少ないし、場所も今の通り複雑だからね、迷子になっちゃう人の方が多いからここに来るよりは外のフィールドやらダンジョンで体を動かしたほうが実戦経験も積めるし迷わないって、来ないひとが多いんだよね。」
「なるほどなぁ。」
「シペリセラまで来る人のほとんどはそこそこもう戦えるようになってる冒険者、っていうの関係してるのかも。」
アーロンは自分と仲間たちのことを考え、それもそうか、と納得する。
そこそこ武器を扱えて、少なくとも町から町への移動が可能な人であったなら、わざわざこんな通いづらいところに来たりはしない。
「だから結構穴場扱いなんだよね、けどその分自由にいろんなこと試せるからおすすめだよ。」
「道が複雑すぎてディアナの案内がないともう二度と来れねぇ……なんなら帰ることも出来なさそうだな……。」
「あはは!任せてよ!」
笑い飛ばすディアナが頼もしく見えた。
「さ!鍛錬鍛錬!あっちに射撃場とは離れてて広いところがあるからあっちでやろ!」
「お、おう!」
走り出して修練場を勝手知ったる、といった雰囲気で案内するディアナに置いてかれないようについて行く。
走って、見て回って改めてその広さに驚く。
人がそれほどいないにも関わらず設備はかなり整っているように見える。
さきほどの歩き回った間隔では病院と呼べる施設もわりと近くにある上に、日差しが遮れるように屋根をつけたり、休憩スペースも完備されていて、有料だが飲み物の準備だってある。
「これは確かに修練場として、訓練場として、運動場としてかなりいいな……。」
「でしょ!」
鍛錬をよくするリュディにこの場所を教えてやりたいな、と思いつつ、あの道のりをどうやって案内できるほどに把握するか、こっそりと悩みだすアーロンだった。