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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
170/173

13-17-12-3

古き良き、初めて入ったのにもかかわらず、ちょっと懐かしいような感じがする。

そんな喫茶店だった。

「これは……。」

「シペリセラでは結構珍しいでしょ?ほらこっちこっち。」

ディアナがそういったように、シペリセラではかなり珍しいと思った。

しかもそれなりに繁盛している様子で店員の様子もそろそろつぶれてしまう、といった焦りや悲壮感もない。

あくまでゆったりと、のんびりとした空間。

「このお店だけじゃなくって、シペリセラにはあと数件くらいこんな感じで昔から残ってるお店、っていうのもあるんだよ。」

「え、そうなのか?」

店員に席まで誘導されて、荷物を軽く置く。

「うん、まぁシペリセラにいる以上いろんなお店だったり商品が目まぐるしく変わっていくのはある程度しょうがないし覚悟の上ではあるんだけれど……たまにどうしても疲れちゃう人とかもいるんだよね。」

「ディアナみたいにその地の人でもか。」

「うん、体調がよくなかったりまぁ色々あるじゃん?そういうときにこうやって落ち着く場所としてず~っと必要とされてるんだ、だからこのお店は変わらないの。」

テーブルの脇に置いてあるメニューに手を伸ばして、全部手書きであろうメニューはとても見やすいように配慮してあり、字も綺麗で読みやすい物だった。

そしてどういうものかがわかりやすいように、だろうか?

小さく料理や飲み物のイラストが描いてあって、どこかかわいらしい印象をうける。

まるっぽくてふわふわとした絵柄だからだろうか、ちょっと微笑ましさすらある。

メニューの内容も定番を押さえていて、奇を狙ったようなものはあまりない。

たまにん?と思うようなものもあるが、それはよその地域ではわりと家庭的な料理に含まれるものだったりして多くの人がこの場でなつかしさを感じることができるように、という心配りのようなものなのかもしれない。

なんならアーロンの出身地であるアードカークではよく食事に出されるパイやスープもちらりと書いてある。

それどころかトレヴィオあたりの地方でよく食べられている料理までも準備されている。

確かにどの料理も比較的手に入りやすい食材でちょっとだけ調理方法だったり手間が違うだけで知ってさえいれば作れるのだろうが、こんなに量を書いてあって、ちゃんと管理できているのだろうか……と少し考えてしまう。

「メニュー、多いな。」

思わずそう呟いてしまうほどだった。

「うん、最初見たらびっくりするよね。でもどれもおいしいから安心してよ。」

ディアナがそう笑いながら色々とお勧めを教えてくれる。

どれもこれも変わらないもの……かと思いきや、ちらっとシペリセラらしい日替わりメニューもちゃっかり書いてあるところが少し面白い。

ディアナがおすすめしてくれた料理がこの辺りではあまりお目にかからない、どちらかというとアーロンの出身地、アードカークでは珍しい部類の辛い味付けをされたものだったので、物珍しさもあってそれを注文することにした。

暑い地方の郷土料理らしく、さっぱりとしつつ辛みの刺激がちょうどいいバランスで食欲が出るだとかなんとか……。

「でも辛い物あんまり食べたことがないなら辛さは抑えめにしておいてもらったほうがいいのかも。」

「そんなに辛いのか?」

「ここは調節できるからわりとそんなこともないけれど……辛い物って割と慣れてないと食べれない!っていう人おおいからさ。」

「なるほどなぁ、それじゃあちょっと控えめにしてもらうかな。」

そうやって注文する内容を決めていく。

注文を終えてからは、基本的には雑談で、その中にお互いの武器についての話になったのは、冒険者らしい、といえるのかもしれない。

「アーロンの武器は盾なんだよね、しかもかなり大きいし……盾だけなんだ。」

「結構珍しいよな、盾だけって。」

「うん、チーム組んでてもタンク専門になる盾だけ持つってことはまぁまずあんまりないよね……ってそんなこと言ったら大剣もそんなにメジャーな武器じゃないけど。」

「それもそうだよな、ディアナも大剣使うんだろ?なんでそれにしたんだ?」

女性の冒険者もそれなりにいる、だが大体の人は扱いやすい片手剣だったり細身な槍を使っていることが多い。

攻撃を受けて耐える、よりも受け流すもしくは避けきる、ことで相手の隙を誘いその間に攻撃をするというスタイルが多いのだ。

「私?私はスキルとの相性かな~。」

「スキル?大剣と相性のいいやつって……なんかあったっけ?」

自分の父親であるセスは相性関係なしに自由にスキルと組み合わせをして自分に合うように戦っている上に、自分はスキルとの兼ね合いやスタイルの問題から武器を変えた身であるため、すこし相性のいいスキル、というのがピンとこなかった。

「私ね、頑丈とか扱う武器の重さによって与えられるダメージ量が増えたりする、みたいなスキルがあるみたいなの。」

「重さでダメージ量を……?」

「そう、だから重い武器といったらやっぱり大剣かなーって思ったんだけどね、スキルで一応力持ち、みたいなのもあるけどずっとスキル使って持ってるわけにもいかないから自前の筋肉も育てなくちゃいけないしで結構大変でさ。」

ディアナの話を聞いて、あぁ確かに相性がいいな、と感じる。

そもそもどんなスキルがあるのか、なんて全部知っているわけではないからディアナの持っているスキル自体がほとんど初耳ではあるのだが、それでも効果を聞く限りとても大剣と相性がよさそうに思えた。


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