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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
17/173

11-15-5-7

翌朝

アーロンはいつもの通りに起きて、朝食の準備をしていると物音につられて起きたのか、まだ若干眠そうなミコトがリビングにやってきた。

「ミコト、おはよう、よく寝れた?」

「おはよう、寝れたよ…まぁ話に花が咲きすぎて寝付くの遅かったんだけどな。」

「深夜まで話し込んでたの?」

「まーそうだな、日付は完全に超えてた…。」

まだ眠いようなら寝ててもいいとミコトに伝えたが、一度起きるとなかなか寝付けない性らしくおとなしく起きることにしたらしい。

「アーロンは朝飯の準備か?」

「そうそう、まぁ簡単にミルクとパンと昨日の残りか卵焼くくらいだけどねー。」

「なんなら手伝ってやろうかと思ったわけだが?」

「お客様はおとなしく席に座ってお待ちくださーい。」

朝から新鮮な気分だ。

父親のセスは冒険者という職業柄いつも家にいるわけでもないし、朝はそんなに得意な人でもないのでまずこの時間に起きて軽口を叩きあうことはまずない。

そして幼馴染であるソーヤも、朝が極端に弱く、何ならおこしに行くまでずっと眠り続けてしまうような性質のうえ、口数も少ない。

だから、今日のように朝早くから自分と同じような時間に起きて、それで会話にも付き合ってくれる人、なんていうものはほとんど初めてのようなものだ。

いつもは自分の独り言だけが響く部屋だったが、今日は帰ってくる声がある。

それは、とても気持ちのいいことだな。

などと、ほわほわした思考を浮かべながらアーロンは手慣れた様子で朝食の準備を進めていく。


その後、いつもの通りソーヤを起こしてから、父を起こしに行く。

そうして全員がそろってから食事を取り始める。

「で、今日はアーロン達はどうするつもりなんだ。」

「俺たち?とりあえず午前中のうちにギルドに行って、昨日狩ったフォレストウルフを納品して報告しないと。」

それからの予定は未定だけれど父さんは、と続ける。

「俺は昨日怪我したやつの様子をみに行く、大したことはないと思うが念のためな…それに場合によっては医者のところまでいかないといけないからな。」

なんにしても今日は家に戻ってくる予定だそうで、夕飯の準備はしてくれるようだった。

「ミコトはどうするんだ?しばらくトレヴィオに留まるなら部屋を貸そうと思うんだが。」

「あー…そうですね、ちょっとお世話になろうかな…と思っています。」

少し、考えるようなそぶりを見せたミコトはすぐに、そう答えた。

「ほかに何かやることがあるのか?」

アーロンが聞いていたミコトがこの町に来た理由はアーロンの父親であるセスに会いに来た、といこと。

昨日の時点でその目的は達せられている、昨日の反応からミコトにとってこの会って話をする、という行為はそんなに重要なことではないと思える。

例えば、母親にトレヴィオの近くによるなら知り合いがいるから挨拶をしておくように、と念を押されたような。

どこか、そうしないと気まずい理由があったために、会いに来た、ように思えてならないのだ。

そんなに重要でもない用事が終わって一休みしたら、別の目的地に向けて移動しそうなものを、ミコトはもう少し、ここに滞在する、ということを選んだ。

と、いうことは、父には会う、という目的以外にも何か別の目的があると、考えれたのだ。

「ん?あーアーロンとソーヤには話してないっけ。」

ミコトはその質問に少し首を傾げたあとに、そういって一人で納得して、そのまま言葉をつなげる。

「俺はまぁ、冒険者としてあちこち移動してるんだけどさ、本業としてはダンジョン研究の為をしていてさ、世界中のダンジョンを潜っていろいろ調べてるんだよ、だからこのトレヴィオの近くにもダンジョンがあるのならそこには行ってみるべきだ、って昨日セスさんと話していたんだよ。」

深夜までずいぶんと熱心に話し込んでいる原因はそれだったのか、とアーロンは一人で納得する。

「だから、そう長い間じゃないがここで少し世話になろうかと、思ってるんだがー…いいか?」

ミコトの視線がソーヤに向けられる。

この家の所持者は一応ソーヤで、アーロンとセスはソーヤの好意で衣食住を共にしている居候、この家における決定権はソーヤにある。

ソーヤは一瞬、なぜ?といいそうな顔をした。

保護者という役割を持っているセスがいるせいか、ソーヤに決定権がある、という意識が圧倒的に薄い。

だが、流石に気づいたのか、一瞬で目が覚めたように目を開いて、そのままの勢いでしゃべりだす。

「う、うん、もちろん…いいよ。」

寝起きのせい、緊張のせい、声を出してなかったせいか、多少どもったり、喉がガラガラと変な音を立てたが、食卓を囲む者たちにはちゃんと伝わった。

「ありがとう、ソーヤ。」

朗らかな笑顔を浮かべながら、ミコトはそういう。

ソーヤは心の優しい子だから、ミコトのような人間を見捨てたりすることはない、アーロンはそうわかっていたが、実際の結果を見てみるまではわからず、内心、ソーヤの返事にほっと、一息つく。

「にしても、ダンジョンの研究なぁ…具体的には何をどう調べてる?目的とかはあるのか?」

ソーヤからの滞在のお許しが出て、セスはそう話を変えた。

いや、実際変えた、というよりは恐らく昨晩の時点でそうとう気にはなっていたが後回しにしていた質問をようやくここで投げれた、という感じだろうが。

「具体的に…まぁ基本は踏破済みのダンジョンなら踏破した人から話を聞いたり、あとは中に入って実際中にいるエネミーの種類の把握と階層ごとの特徴、そのダンジョンの性質を探るってのがほとんど。」

「ほー?それを把握してどうするんだ?」

「ダンジョンはなんというか…感覚的に人のように個性がある、けれど、情報を集めて比べてみるとある程度一致している個性があったりもする、それを知って法則がわかれば…。」

「未踏破ダンジョンでも先陣を切る冒険者の死亡率が下がる、ってことか。」

セスの言葉にミコトはこくりと、頷く。

アーロンは、あまり年の変わらないであろうミコトのその思考能力の高さ、志の高さに関心をしてしまい、思わず口を開けて、気の抜けた声が出てしまった。

「それに…。」

すごいじゃないか、と口にしようとした、それよりも前にミコトがさらに言葉を続ける。

「人食いダンジョンについて調べないといけないんだ。」

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