13-17-12-2
シペリセラに滞在しだして数週間が経った。
節約しつつ日々堅実に依頼をこなしていっているのでそれなりにお金もたまってきつつあった。
だが、旅を続けるのであればもう少しためておいたほうが……ということもあってまだしばらくはここに滞在して色々と金銭をためていく必要がある。
とはいってもそう毎日ずっと依頼であっちへこっちへ、とできるわけでもなく、定期的に休みは設けている。
と、いうことで今日はその休みの日だ。
それぞれそれなりの時間に起きて……ソーヤだけは、相変わらずなのでアーロンがほどほどのところでアーロンが起こしたが……日課の鍛錬をこなしたり、町に買い物に出たりしている。
この町の構成に慣れているミコトやアストに最低限必要な備品を後で買ってきておいてほしい、とだけ伝えてあるので、彼らは後でそういったものの買い物にもいくらしい。
アーロンもソーヤを起こして、鍛錬を終えたら今日は自由行動だ。
一人で出歩いてみたりもするのだが、シペリセラの街はちょっと気を抜くと迷子になってしまう予感がしてしまって、あまり遠出ができない。
なので、結局息抜き、というていではあるがギルドのあるあたりをふらふらと歩いて回っている。
ギルドのあるあたりは他の街出身者が多く利用していることもあるのか、あまり風景が大きく変わる、という印象はない。
ただ、よくよく見ると変わっているところがあったりするので油断ならない。
それでもちょっと高頻度だな、と思うほどなのだが他の地区と比べるとまぁまぁローペースなので、シペリセラならしょうがない、とあきらめるべきところだろう。
周辺の店に入って、何があるんだろうかなどと物色をしていく。
お金をためている段階ということもあって、あまり無駄遣いはしないようにしているから得に買う、ということはなかったが、いくつか購入を検討してもよさそうだな、というものを頭の中に入れておいて、今日他のメンバーと遭遇したらこのことを話そう、とでも考える。
本当はこの町の場合、買えるのなら先に買っておいたほうがスムーズだし、間違いもないのだが……自分のものではなくチームで共有するものだとこうして確認をする必要がある。
今日が休みじゃなかったら相談しながら買い物とかでもよかったのだが……。
まぁ休日だからな、と内心でつぶやいて手に取っていた商品を棚に戻した。
ちょうどその瞬間に背中側から軽く、ドンッとぶつかった衝撃がした。
大型の武器を……今は盾だが……を扱っている自分は体幹をしっかりと鍛えてることもあって、そう簡単によろけたりはしないので、自然と踏ん張っていた。
だが相手のほうはそうもいかなかったようで。
「う、わわっ!」
何とかバランスを取ろうと両手をばたつかせたり、片足でどうにか安定を取ろうと体をぐねぐねとさせている。
自分と同じくらい……もしくは少し年上ほどの女性で、何より目を引いたのがかつて自分が使っていたような大きな武器をその背に背負っていた。
このままだと転んでしまうか、と思ったアーロンはその女性の肩をガシッと掴んでバランスが取れるようにしてやる。
「うわっ!」
女性は多少驚いたが、バランスが取れたことに安堵すると一息ついてからこちらに向き直ってお礼を伝えてくれる。
「ありがとう、助かったよ!」
黒く、長い髪の毛を高い位置に結ぶ、いわゆるポニーテールが似合う人だった。
「そりゃよかった、君も冒険者?武器大きいんだね。」
「そうよ、見たところ貴方もそうなのね。武器はさっき買い替えたところで…いつものよりちょっと大きいもの買っちゃったのよ、だからこうやって常日頃から身に着けて筋力をつけな、て師匠に言われて、そうしてるんだけど……まだちょっと慣れないみたい。」
「あー……昔大剣使ってたからよく分かるよ、それ。」
「本当?あまり使う人いないからなんだか嬉しいわ、この辺の人じゃないみたいだけど……良かったら話聞かせてくれないかしら、師匠、腕はいいんだけれど大剣の扱いはちょっとよく分かってないみたいで。」
「俺?いいけれど……あ、俺アーロン。」
「私はディアナよ、よろしく、アーロン。」
軽く握手を交わす。
どうやら話をきくとディアナはこのシペリセラ出身らしく、両親とともにここで暮らしているそうだった。
「なんで冒険者に?」
「私の家兄弟が多いから、食事とかそういうのは親がやってくれるけど自分が欲しいものは自分で稼いで買ったほうがいいから必然的に兄弟は働きだして、私は師匠と仲良かったし、お店とかで働くよりも外でガンガン戦って体を動かすことのほうが得意だったからなった、って感じかな。」
「なるほどなぁ……。」
「ここ、物も人も建物もガンガン入れ替わるでしょ?だから欲しいものはすぐに手に入れたいんだよね。」
「確かにこの町、入れ替わり早いよな……長続きしてるものとかないのか?」
「あるにはあるよ、ほらあそこの喫茶店、結構老舗でしょ?ずーっとあるし、看板メニューも前から変わらないの。」
「へぇ、そんなところもあるんだな。」
「興味あるならあそこ入りましょうよ。」
「そうだな。」
そう言いあいながら二人でそのお店に入っていく。