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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
162/173

13-17-9-19

それから一週間ほどはミコトは教会に入り浸り、アーロン達は日々の依頼をこなしていく。

一週間も過ぎればある程度用意された本も大体読み終わっていってるのか、ミコトは読んだり読み比べたりするよりも圧倒的に考え事をしたり、思考をまとめようとする動きのほうが多くなっていった。

それは教会で本を読んでいたりしている時間だけでなく、アーロン達が実家に戻っていてミコトもその日の世話係に連れられて戻ってきた後にあぁだこうだ、この仮説は~だと話に付き合わされることが多くなっている。

アーロンとしてはその話は面白く聞けているためそう迷惑ではないから構わないし、ミコトも話を聞いてもらう、ということではなく話すことによって頭の中を整理しているだけなのだろうから、そこまでしっかりと聞いて覚える必要がないのは気が楽でいい。

一方でアストとミコトが話しているときは割と議論になっていることが多い気がする。

おそらく二人とも頭脳派で、アストも様々な知識をかじっているから多方面な見方をしたときの考察をしていたりするのだろう。

そのようにして話し合っているときのミコトはまるでフィールドやダンジョンで未知の敵と出会った時のように険しい顔をしているが、どことなく、それを楽しんでいるように見える。

まぁそのあとはは決まって二人とも頭を押さえて頭痛を訴えてきたり、甘いものを欲しがったりしてくるので相当エネルギーを使うことには違いない。

そのためそう高頻度で行われることはまぁ、まずない。

……と、はいってもこのアードカークに滞在してしばらくそう忙しい、ということもないと決まっているからか、アストもミコトの世話がある、という大義名分を得つつ資料を読んだりして暇をつぶしているからか、この一週間ですでに二度ほどその光景を見ていたりもする。

戦闘だったり鍛錬で使われなかった体力の発散だったりするのかもしれない。

冬のための保存食として作られていた砂糖漬けのフルーツだったり、シロップだったり、ジャムだったり……。

そういったものの消費が激しくなった、と母親から告げられた時には謝るほかなかった。

最近ではわりと冬場もそれなりに人が来たりしてそれなりに物資が届くからそれほど保存食がなくなっても困らない、とのことだし、なんなら店で売ってたりもするから大丈夫だ、という話ではあるのだが。

まさかそこまで甘いものを食べまくっているとは気が付かなかった。

そんな風に過ごして、ミコトが言うにはあと数日で全部読み終わる、ということを聞いた。

ミコトの用事がすべて終わって、なおかつその付近で一番下山に適した気候、天気等を調べ、何が必要か、と色々と準備をしていく。

思ったよりは長く滞在してしまったが、こう、いざそろそろ帰り支度を、次の目的地へ、となると物寂しさができてしまう。

かといっていつまでも実家の世話になって居座るわけにもいかない。

と、いうことでそろそろ下山するために装備だったり備品を整えるついでに母親の日々の生活に必要なものを買って回る。

荷物持ちとしての任を任されたのだが、なんというか、買い物に乗じて出会った知り合いと話し込んだりするのでそれなりに時間がかかる。

男所帯のチームだからか、こういった時間のかかり方はあまりないので思わずぼんやりとする時間が増える。

それほど広くないコミュニティで生きているからほとんどこの町にいる人は全員知り合い、みたいな感じではあるのだが。

長くなる会話のなか、いい具合に話題が途切れたので母と一緒にその場から離れようとする。

ぼんやりとしていた意識を戻すと、そこにはなぜか知り合いの人がつれていたペットの犬に引き留められているような母の姿があった。

毛の長いもこもことしていて触り心地のよさそうな大きな犬で、こんな雪山でも元気に走り回れるような、環境に適した姿をしている子だ。

熱い環境にいる種類よりも小さく丸っとした耳を横に倒して、悲しそうに鳴く姿を見ていると少し引き離すのは心に来る。

どうも話を聞くに、その犬はいつもアーロンの母親と出会って触れ合った後は別れ際こうなってしまうのだとか。

そういえば母親はスキルで動物に好かれやすい、みたいなものを持っていたはず。

そういうところが影響してよその犬にこれほどまで好かれていたりもするのだろう。

一方同じようなスキルを持っている、と一応言われているはずのアーロンのほうには犬は見向きもしない。

ビーストテイマーになれるかもしれない、とか言っていたあの日の人の発言はもはやウソだったのでは?と疑いたくなるような結果だ。

母にそれとなしにそのことを言っても、困ったようにアラアラ、と言われるくらいだから言ってもいない。

余計な心配……というほどのことでもないのだろうが、あまりマイナスな報告はしたくないところがある。

特別好かれているわけでもなければ、嫌われているわけでもない。

今のところはその程度の関係性で、もしかしたらもっと別のところで活躍するのかもしれない。

などと期待して準備を進めていく。

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