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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
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13-17-9-10

神父さんに事情を説明して何か見れるものがあったら是非拝見したいと言うと、その人は笑顔で頷きながら話を聞いたあとに、少しお待ちください、と言って席を外した。

恐らく、ここの管轄を任されている人に話を聞きに行ったのだろう。

一人の意見で見せれないものもあるだろうし、多少待つくらいで丁度いいはずだ。

ともかく神父さんが帰ってくるまでの間はやることがない。

手持ち無沙汰に周りにあるものを見たりすることにした。

ミコトほど熱心に細かいところを見たりするわけではないのだが、やっぱり小さいころから無意識に見ていたものを改めてまじまじと見てみると新しい発見があったりする。

そういうのが、中々に楽しい。

そうやって時間をつぶしていると、先ほどの神父さんが戻ってきた。

どうやら確認が取れたようで、アーロンのほうを見て、にこり、と微笑んで話しかけてきた。

「資料のほうなのですが、閲覧は大丈夫ですよ、ただ色々と準備が必要なのでまた後日でもよろしいでしょうか。」

しばらくこのアードカークには滞在するつもりだったので、アーロンとしては大丈夫だった。

一応一番熱意があるミコトのほうをチラ見をすると、話をこっそり聞いていたのだろう。

視界の端で親指をビッと立てている様子が見て取れた。

……多分、もちろんOKそれでよろしく頼む。

と、言いたいのだろう。

「わかりました、いつ頃だと大丈夫そうですか?」

「そうですね…。明日はまだ準備がありますので…明後日はいかがでしょう。」

「大丈夫です、それじゃあよろしくお願いします。」

「はい、それでは失礼いたします。」

そういうと神父さんは会話を終えて、またどこかへと戻っていった。

気付いたらそれなりに長い間この教会にいる。

窓の外を見てみるとすでに日は落ちかけていた。

雪山の町だから陽が落ちるのが速いとはいっても、さすがにゆっくりとしすぎた気がする。

帰り道の街灯だけでは、ちょっと暗くて危ないかもしれない。

「やっべ、時間だいぶ経ってるな…ミコト、一旦帰るぞ!」

「ここのレリーフの模様がさ旧コズミスタルケルティングの様式と似ててさ、でもここの合わさっている模様は明かにオウカ・チワンの様式でさ、これってつまり何が言いたいかっていうとこの建物を建てた人がその両方の知識を有していて、それでー……。」

「あ~~その話長くなるだろ、ほら母さんが夕飯作ってるんだよ、どうせまた明後日ここにきて色々見せてもらえるんだからその時またいっぱい見て話せばいいだろ。」

「いやいや、いいかここで情報の整理をして次来た時にまた新たな発見があるとまた別の考察が出てきてー……。」

「ミコトー、帰らないとここの教会も閉めれないだろー。神父さんにあんま迷惑かかるようなことすんなよー。」

「グェエ…わぁかったわかった、帰るって。」

アストにそのように指摘されてようやくミコトは観念したようにその場を離れる。

その様子にフィーとデュディは苦笑いをして、先に出入口の方へと向かっている。

ソーヤもまた、色々と見て回っていたようだったが、ミコトほど熱心に見ているわけではなかったからか、アーロンが声を掛けるとすぐにこちらに戻ってきた。

「何か面白いものでもあったか?」

「えっと……、あまり見たことがないものがたくさん、あったから…綺麗なものがおおいね。」

「まぁ、トレヴィオとアードカークは物理的にも距離が相当離れてるからな…文化も変わってくるし……あとは環境も全然ちがうしな、トレヴィオで雪なんて珍しいほうだけどアードカークはほぼ年中だから。」

「たしかに、そうかも…なんだか色々知らないことがあって、旅って、楽しいね。」

「そうだな、本で読んで知識を得れるかもしれないけど、こうやって実際に見て回ったり経験するのも楽しいよな。」

「うん。」

和やかに会話をしながら、出入口に戻る。

扉は入ったときと同じように少し硬くなっていて、開けるのにはそれなりに力が必要だったが、それでも開けることはできた。

「これ寒くて開けにくくなってんのか?」

「ん~まぁあとは老朽化とか、色々あるんじゃないかな。」

「雪が外に固まって重くなって…みたいなこともあるだろうけどな。」

「お湯とかで溶かせば少しは開けやすくなるんじゃないか?」

「それしたらすぐに氷になって余計に開けにくくなるしなんなら開かずの扉になるからやめろよな?」

「すぐ凍るのかよ……。」

「雪国だからなぁ…、まぁ力入れれば開く程度なら問題ない、ってことか。」

「そういうもんだな、子供とかだと力が足りないことが多いから変に外に出たりしなくなっていい面もあるんだけどな。」

「あー……外に飛び出せないってのはいいのかもな。モンスターに知らずに襲われる可能性も減るし……。」

「だなー、その分早朝から雪かきとかしないといけないんだけどな、大人は。」

「雪かきかー……俺たちも手伝うべきだよな。」

「そのほうがいいな、なにせこの時期永遠と降ってきて人手はあるに越したことない。」

「後で雪かきについては教えてくれよ……。」

「まかせろ。」

そのように何でもないような会話をしながら帰路を歩く。

思った通り外はもう真っ暗で、街灯だけでは少し心もとないほどだった。

それでもそれほどに暗いから、空を見上げれば美しい星空を見ることが出来る。

「やっぱりここの町は星が綺麗に見えるよ。」

「寒いと空気が澄むっていうからな、景色がより綺麗に見えたりするよな。」

「そういうものなのか……なるほどな~。」

アストはそういいつつ、星座を見つめていた。

時折あれとあれを繋げると星座になるけれど星空で見ただけじゃどうにもそうは見えない、などと愚痴のようなものをこぼしていた。

まぁ言いたいことは分かるが、星座に関してはそれはそういうもので済ませてしまっているため、どういう風に見えるか、というのは気にしたことがなかった。

フィーはというとその話をある程度聞き流しつつ、星空を堪能していた。

アストもミコトほどではないが知識魔であるがために、たまにこうして色々と長々話すようなことがあるから、フィーも扱いは慣れているのだと思う。

何はともあれ、行きの時よりを時間をかけてゆっくりと帰宅する。

着いたころには温かくおいしそうな匂いが玄関にまで漂って来ていた。

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