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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
15/173

11-15-5-5

なぜ、扉が開く音が。

そう頭の中に思考がよぎったときには、足音は迷いなくこちらに向かってきており、その人影が姿を現した。

「ただいまーっと、アーロン、ソーヤ君無事かー?」

意外なことに、今日は帰ってこないと予想していたはずの父だった。

「あれ、父さん?」

「そーだぞ、ん?なんだ友達連れてきてたのか?見ない顔だな、こんにちは。」

父はまるで今日帰宅予定だったかのようなふるまいをしていて、こっちの動揺は構わず、いつものマイペースさでミコトを一目みて挨拶をする。

ミコトはそれに普通に答えて、挨拶を返す。

「え、いやいや、今日は帰ってこない予定じゃなかったのかよ!」

あまりの当然のような動きに一瞬、帰宅予定は今日だったかもしれない、などと考えたが、何度思い出しても今日ではない、という事実にようやく正気を取り戻したアーロンはつい語彙を荒くして父に聞く。

「あー…そうなんだよなー、いや本当は今日帰ってくる予定じゃなかったんだが…まぁ一緒に依頼を受けてた奴が足を負傷してな、このまま潜り続けるのは命に係わると判断して早々に戻ったんだよ。」

「それは…災難だったな、その人、父さんは怪我とかないわけ?」

「俺は平気だ、ありがとな。」

ぐしゃり、と頭をなでられて微笑まれる。

そして、そのまま視線がミコトの方に移動したかと思うと、もう一度アーロンの方へと戻って来る。

説明を要求されているのだろう。

ミコトも親子の会話を邪魔するわけにはいかないと考えているためか、いつ話を切り出したものか、と思案顔をしている。

「この人はミコト、俺らフォレストウルフの群れにかち合っちゃってピンチだったんだけどそれを助けてくれた人だよ、父さんに会いに来たって言ってたからそのまま家に連れてきたんだよ。」

そう説明しおわると、父は再びミコトを見つめる。

まじまじと何か確認するかのように見ていた、かと思うと何か思い出したのか、手をたたく。

「お前もしかしてミゲルの子か?」

「はい、ミゲル・イストワールの息子のミコトです、母からトレヴィオの近くを通るなら次いでに挨拶に行っておけ、と言われたので。」

「あー!そういえばあいつに今トレヴィオにいるって手紙出したよ、それで来てくれたのか、いやありがとう、これはうれしい客人だな。」

どうも、二人の言葉からするにミゲルとセスは旧友で、ミコトの母とも親交があるというところだろう。

「しかしうちの坊主らが世話になったみたいだな、ありがとうな、よかったら今日はここに泊っていくといい。」

「え、あぁ…いやそこまでお世話には…。」

父の提案にミコトは少し申し訳なさそうな、困ったような顔をした。

「今から宿をとるのも手間だろうし、恩人の宿泊くらい迷惑でもなんでもないからよかったら泊まりなよ。」

アーロンからも声をかけると、少し悩んだ末に、じゃあ、お願いします。と少しだけ照れたような笑顔を浮かべながらそう答えた。

「よし、じゃあ夕飯の準備を…二人分増やさないとなー。」

「アーロン、夕飯は俺が作るからミコトの部屋の準備とかしてやりなさい。」

その言葉にアーロンははーい、と返事をして外した武器防具類を腕に抱えて、ミコトに案内するからついてきてくれ、と声をかける。

ミコトはアーロンに頷きを返して、セスにお世話になります、と声をかけてからアーロンのあとを追ってきた。

どこの客間を使ってもらおうか、などと考えているとソーヤが階段から降りてきてこちらをちらり、とみる。

「ソーヤ、ミコトだけど今日はうちに泊まってもらうことになったから。」

「…そう、なんだ。」

「あぁ、どこ使おうかな?」

「…セスさんの部屋の隣とかは?」

「あそこかー、ちょっと片付ける必要があるかもな、あとで新しいシーツとか持ってきてくれよ。」

「わかった…。」

もうだいぶ眠いのか、動きが平時に比べてだいぶゆっくりで、こころ無しか頭が左右に揺れているようにも感じる。

そのまま階段を降りたソーヤは洗濯物置き場の方へと歩いていく。

アーロンもミコトを連れて、ソーヤの言っていたセスの部屋の隣へと向かう

…といってもその前に一度だけセスの部屋の扉を開けて自分の防具類を放り投げた後だが。

そこは裏口の一番近くの部屋で本来なら倉庫として使う予定だった場所だ。

だがそこにあまり使われなくなってしまったベッドをを置いたことを切っ掛けに時折、昼寝の場所として使われはじめ、快適な場所として手入れをされ始めたのでちょっとした個室のようになっている。

なかなかに日当たりもよく、程よく涼しいので季節を問わずに快適な昼寝どころである。

「ここを使ってくれ、シーツとかは今新しいのに変えるし、普段からちょいちょい使ってる部屋だから掃除もしてある、多分問題ないと思うぜ。」

「いやー雨風が防げるだけで十分だって、しかも夕飯も用意してくれるんだろ?感激だよ。」

少し大げさに喜ぶミコトを後目にアーロンはベッドからシーツをはがす。

ミコトのほうも、ようやく荷物を降ろし、身に着けていた防具類も外して衣服を緩めて、完全にリラックスモードだ。

念のために埃やらゴミがそのあたりに散らばってないかを確認していると、扉から控えめなノックが響く。

「どーぞ。」

アーロンが返事をすると、肩で扉を押しながらソーヤが入ってくる。

両手にはキレイに洗濯されたシーツと毛布が抱えられている。

「お、ナイスタイミング、ちょっとそこで毛布持ってろよ?」

扉の前でぼんやりと立っているソーヤにそう言う、ソーヤはそれに小さく頷いて答えた。

ソーヤの抱えているものからまずはシーツだけを引っ張ってまずはシーツをピンと張る。

しっかりと四隅の角もしわができないようにキレイに折り込んでベッドメイクをしていく。

シーツを張り終えてから、その上に毛布を掛けて、枕を置こうとして…枕がないことに気が付いた。

「あ、しまった枕ねぇじゃん。」

「…忘れてた。」

「俺も。」

あっちゃ~とつぶやきながら前敷いていたシーツを回収して洗濯場に持っていくついでに探すか、と考える。

「枕今から持ってくるな。」

「おー…ところでトイレってどこ使えばいい?」

「あー、案内する、ついてきてくれ。」

そうして身軽になったミコトを連れて、また部屋の外へと出る。

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