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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
148/173

13-17-9-5

魔石が無事、望んだ大きさに割れることが分かってから、すぐに保温できる水筒を買いに行った。

さすが需要はあるからか、一言に水筒といってもデザイン性を含めるとそれなりの数があった。

その中で出来るだけ平らっぽくて、それなりに熱が外に漏れ出てきそうなものを探す。

それからその水筒を包むための厚めの布も。

わりとやりがちになってしまうのだが、こうして暖かいものをずっと一か所で保持していると低温やけどになって酷いと皮膚が捲れたり、水膨れが出来たり、変色してしまったりしてしまう。

軽度の時は見た目に変化がなく、触るとすこしピリピリするくらいなのだが、あまりそれでも動きに支障がでることは良くない。

できるだけ一か所に熱を保持し続けないほうがいいのだが、そうも言ってられないこともある。

何せきっちり着込んだ防寒具の中にあるものの場所を動かすのは、結構手間なのだ。

手直ししている間に冷たい空気が入り込んで体温が下がる、なんてことも避けたい。

そう考えると、布で包んでできるだけ高温な状態のものが直で皮膚に当たらないようにするくらいが出来る対策だろう。

雑貨屋等を見て回って、もこもことした肌触りのいいハンカチを2枚買って、これを袋状に縫って紐を通す穴を開ければいいだろう、とそう思いつつ準備を整えて宿屋に戻る。

そこで再び問題が起きてしまった。

魔石は確かに手ごろな大きさに砕ける。

だがそうすると持続時間があまりないのか気休め程度の保温器具にしかならなかった。

かといって大きい魔石では入れることができない。

水筒に入れずにそのまま直で持ったら、とも思ったのだが、そうすると熱い。

出来たての鉄板料理の鉄板を触れているような気分だった。

「そういえばフィーはなんで魔石にそんな風に触れるんだ?」

アーロンやアストが魔石を熱がってなかなか持てない中、フィーだけはわりと簡単にひょい、と持ち上げて水筒に入れてたり、どんどんと実験を進めていく。

「えっと、妖精さんが多分…いい感じに熱が伝わらないように守ってくれてるんじゃないかなーって…思うな。」

少しはみかみながらそう答えるフィー。

おそらくその視線の先には自分たちには見えない妖精の存在があるのだろう。

案外妖精というのは愛し子に対して過保護なのかもしれない。

愛し子の意図しないところで色々と裏であれやこれやと手を焼いている。

そう思うとすこしほほえましいような気持にもなるが、それ故に、苦労も多くなる。

妖精の機嫌を損ねた時の事を考えると、恐ろしい。

今まで上手に付き合得てきたフィーなら、大丈夫だとは思うが…それでも妖精は気まぐれな存在だ。

いつ、どこで機嫌を損ねるかなんてわかったものじゃない。

変に、刺激してもいけないのに、構わなすぎるとそれはそれで不貞腐れてしまうだろう存在。

アーロンが感じるよりもずっと、もっと、難しい関係なのだろう、妖精と、その愛し子というのは。

何にしても妖精の愛し子だから熱源を持ってても熱く感じない、というのはもちろんソーヤには通用しないので別の方法を考えないといけない。

暫く、あぁでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返してみるも、中々成果が出ない。

アストはこれは魔石の数がかなり必要になりそうだな、と判断したのか、今度一人で近場のダンジョンにでも行って魔石の回収をしにいってくるらしい。

確かにあまり浪費してもいけないだろう、アストの武器の弾でもあるので多く使いすぎるのも良くない。

そうして町の滞在時間を過ごしている。

少しの間別行動をとっていたミコトが帰ってきて、もうそろそろアードカークに向かう準備を整えて、またこの山を登って行かないといけない。

と、いうのにまだ保温水筒の真価を発揮出るようなものは出来上がっていなかった。

「何やってんだ?」

その作業風景をミコトにも目撃されて、旅支度をしつつも事情説明をして何かいい知恵がないかを期待する。

「ふぅん、何か面白いことしてたんだな。」

「行き詰っててもはや降参したいところだ。」

「魔石を直接水筒に入れると熱くなりすぎて…、間に布とかを挟んでもまだ熱いし…水に入れるとあっという間に蒸発しちゃって…なんだか思ったようにいかないんだ。」

「なるほどなー、ちょっとかしてみ。」

そういってミコトは色々試した魔石やら水筒の様子やら、結果を書きとめた紙を見てしばらく考え込む。

「魔石ってまだあるのか?」

そうして少し考えた後にすぐ、残った魔石を手に取って見つめる。

「アストが色々気を利かせてくれて魔石は大目に準備したんだけど…まぁ見ての通り結構無駄にしちゃってさ。」

周囲には使用済みの魔石が粉のようになっている。

山のように積もっているのでもはやどれだけの数使ったのかがわからない。

「…うーん、ちょっと試してみてもいいか?」

「いいけど、なんか思いついたのか?」

「まぁ、試しだ試し。」

そういってミコトは水筒を片手にキッチンへと向かう。

そこで湯を沸かして、お風呂だと熱めくらいの温度にまで冷ます。

「フィー、これを保つ程度の温度を持続させるような効果を付与できるか?」

「え?う、うん。」

フィーにそう指示を出す。

フィーはすぐに魔石を取り出して精霊にお願いをして言われた通りのものを作り上げる。

「出来たよ。」

「ん、じゃあこの中に入れてみてくれ。」

温度を上げるように設定した魔石は水の中に入れたら水が蒸発してしまったのだが、大丈夫だろうか。

そう思いながら様子を見つめているが、入れても特に何もおきない。

それに火を消してそれなりに時間が経っているが、湯気が消える様子もない。

「お、おぉ?」

「あったかいよ、すごいねミコト!」

「見た所温度を上げる、ってことに特化したものばかりだったからな。温度がそこそこあるものを適度に保温する、ってのならエネルギー消費を押さえれるんじゃ、って思ったんだがうまく行ったみたいだ。」

「これなら使えそうだな、さすがだ!」

「もうちょっと工夫してやればいいもの出来そうだな…。」

何か、ミコトの趣味に嵌ったのか、ミコトが加わってからサクサクと保温機能の向上ができた。

こんなことならもっと早くから聞いておけばよかった、と思ったが、そもそもいなかった人には聞けなかった。

何はともあれ、出発の日までにそれは無事、出来上がった。

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