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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
135/173

13-17-6-22

ひとまず、大した問題はなく目的の街には辿り着いた。

ミコトから見ても特に大きく変わった、おかしなところはないらしく、彼はちょっとだけつまらなそうにしていた。

まぁ大きく変わりがないというならそれでいいのだろう、と言って、街の中に入る。

そこはトレヴィオと同じくらいか、もうすこしのどかにしたような所。

田舎と言ってしまえばそれまでだが、そこまで田舎らしい、というほどでもない。

人がいて、それなりに栄えていて、活気のある、良い町だ。

この町は比較的穏やかな環境らしく、トレヴィオのように冒険者向けのギルドをわざわざ立てているようすはなかった。

近くにダンジョンがあるわけでもないから、そう取り立てて必要なわけではないのだろう。

とは言え、冒険者がふらり、と立ち寄ったりはすることがあるらしく宿屋らしいものはある。

今回は住んでいる家が近くにあるので、宿屋に入ることはないだろうが、旅をしてきた冒険者としてはついつい確かめてしまう習慣だ。

街に入って合流方法、時間、だいたいどのあたりにいるかの打ち合わせを軽くしてから、アストとフィーとは別行動をとることになった。

二人は見晴らしの良さそうな所や景色のいいところを探したり、観光で取り上げられそうなところに行くらしいので、そう急に連絡がとれなくなるようなことはないだろう。

それにフィーがいるなら妖精がおせっかいを焼いた結果合流する、ということだってなくはない。

この旅の間、わりとそういうこともあったのだ。

「それじゃ、まだあとでな。」

「あぁ、良い盾作ってもらえるといいな。」

「おう!」

「またねー。」

二人と別れて、再び鍛冶屋への道をたどることになる。

その道のりは、どちらかといえばフィールドよりの所で、鍛冶屋を構えている場所も、街はずれ、という印象を持つところだった。

別段嫌われている、とかそういうことではないらしいのだが。

鍛冶屋をやっているとどうしても金属音でうるさくなってしまったり火を扱うため周囲に被害が出たら止めることができなくなってしまう。

等の理由があるらしく、街の住居から離れていて、騒音が問題にならないように配慮した結果、こうなった、ということらしい。

冒険者が良く訪れるような街ではむしろ住民の家が中央を避けるように配置されることが多いので、街によってそういう細かい違いがあるのだ、とミコトに説明されて、そこで初めて知った。

意識しないと、気が付かなかった。

ただの建物の配置だけで、その町のことが透けて見える。

そうこう雑談をしつつ歩いていると、目的地に辿り着く。

金属をたたく音が聞こえる、外からでも中の熱気が分かるようなむわっとした熱さ。

今まさに何かを作り上げている様子が見なくてもありありと伝わってくる。

どこに行っても、鍛冶屋のこの雰囲気はあまり違いはないんだな、と思いつつ、中に入る。

「こんにちはー!!」

中に入るとより大きく鉄の叩く音が聞こえる。

その為、その音に負けないように声を自然と声を張り上げてしまう。

「おう!なんだぁ!?」

受注カウンターらしき所には誰も居ず、さらにその奥…おそらく作業場にあたる場所から大きな声が聞こえてくる。

ついで、ドスンッと重い何かを置いた音と、こちらに向かってくる足音が聞こえてくる。

そして、ニュッとこちら側に顔を出して、まずアーロンの顔をみて、顧客と認識し。

その後、ソーヤを見て、お?と顔を驚きに染める。

「おぉ!フェリックスかぁ!久しぶりじゃねぇかぁ!元気にしていたか!!」

「あ…えっと、はい…元気、です。」

「なんだなんだ、相変わらず細いなぁ!」

大柄で声の大きい、どしん、とした印象のある男性と背は伸びたが、どちらかといえば細身ですらりとした、声は小さめの青年。

この二人に同じ血が少しでも流れているんだなぁ、と思うと若干不思議な気持ちにもなる。

ある程度再会の時間を設けて、会話をしたあたりでようやく依頼の話になった。

「んで、今日はどうしたんだ。」

「えっと、僕、じゃなくて…アーロンの。」

「こんにちは、ちょっと頼みたいことがあるので。」

「あぁ!セスさんとこの息子かぁ!!話は聞いているぞ!」

バンバンと背中を叩かれながら、そうかそうか、と何か納得される。

毎日力強く鉄を叩いてるからか、その力も尋常じゃなく強い。

防具を着ていてもどんどんっと叩かれる感触が重くて、響く。

若干痛い。

そうこうしながらも依頼についてを説明して盾を作ってほしいといことを伝える。

その間彼は真剣な顔でうんうんと頷いて聞いていたり、実際にどういう風の盾が欲しいのかを聞き取ろうとしたり、リュディの盾を手に取って見て、実際に使用感を確かめ、アーロンの体格や身長とうを確認したりと、いろいろと確認されることが多かった。

「なるほどなぁ、大剣から盾を持ち換えて、しかもメイン武器をそっちにするってことなぁ。」

やっぱり難しいのだろうか、彼はさんざん質問したりした後に、少し悩むようなそぶりを見せる。

「メインに盾を持つってのはあんま聞いたことがないからなぁ、どう調整するかはまぁ調整するとして、とりあえずやるだけやってみるか。」

頭をがしがしとかきながらそう告げる。

「はい!」

断られるかもしれない、と思っていたところに前向きな言葉を返されたので、思わず食い気味で返事をする。

「だが時間がかかるぞ?こういったものは初めてやることだからなぁ、盾をメインで使ってがっつりででっかく、だなんてなぁ。」

「それから法石のほうにもちょっとデザインを刻みたくて…。」

「おぉ、そっちはデザインさえ決まっていたらすぐに出来るぞ。いくつあるんだ。」

「俺とソーヤとアストにフィー、リュディにミコトだから、6個ですね。」

「6個な、複雑な模様じゃなければ明日までには出来上がるな。」

そう言いながら棚から一冊のノートを取り出して見せてくれる。

中を開いてみるとどういうデザインを作ったことがあるのか、という作品の一例だった。

この中から好みのデザインだったり、こういう傾向がいい、というのを絞るために使っているのだろう。

「何かモチーフがあれば言ってくれ、まぁだいたいのものなら行けるぞ。」

「えーっと鳥とかがあると。」

「鳥ならこういう飛んでるモチーフがこっちのほうにあるなぁ。」

そう言ってノートをパラパラとめくっていく。

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