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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
131/173

13-17-6-18

翌朝、早くにルズベリーをたつ。

かなり朝早く出ているため、まだ心なしか肌寒い。

小鳥の鳴く声が響くさわやかな朝。

都合のつく馬車はなかったため、ルズベリーから歩いてトレヴィオに向かう、ということになった。

わりと、道が整備されているところが多かったので、思ったよりは早くトレヴィオにつくかもしれなかった。

道中でてくるモンスターを倒し、素材も持てるだけ持っておく。

そういったことを繰り返しながら先へと進んでいく。

そうして歩き続けて、ようやく、見慣れた門が見えてきた。

「……あ。」

ソーヤが一番最初に見つけた。

やっぱり遠くのモノを見つける、といった点ではかなわない。

ソーヤにとって、アーロンにとっても重要な意味を持つ町の、門。

大事な人を見送り、帰らぬ人の姿をどれだけも待った。

ここを旅立つときに、まじまじと眺めることのできなかった、所。

そうして、アーロンにも段々とその門の様子が見えた。

パッと見た所、大きく変わったところは、なさそうだ。

しいて言えば、経年劣化によってあちこちボロボロになっていたり、それを修復しようと新しいものが当てられていたり、一部変わっていたりした。

なつかしさに昔の事を思い出しつつ、どんどん近づいて行く。


そうしてトレヴィオにもどってきて、門の傍に立つ。

前に、ここを通ったのはどれくらい前のことだったか、正確なことは覚えてはいないが、前に来た時よりも、すこし狭く…と、いうよりは小さく感じる。

当時、ここを旅立たなくてはいけなかった時は、まだ成長期の途中で、まだ背が伸び切っているわけではなかった。

今、あとどれほど伸びるか、などとはわからないが、それでも前よりは確実に伸びてきた背に、鍛えられた身体。

そういった自分の変化、成長によって、この大きく見えた門が久しぶりに見てみると小さく感じるのだろう。

思わず、感慨深くなってしまって、門のところで足を止めて、門に触れる。

昔は背を伸ばしたり、飛び跳ねたりしないと手の届かなかった所に普通に手が届く。

気付いたらソーヤも同じようにして、門に触れていて、トレヴィオの様子をぼんやりと見つめていた。

まだ、帰ってきた実感がわかないのかもしれない。

「ソーヤ、帰ってきたな。」

そう声を掛ける。

すると、ソーヤは少しだけ肩をはねさせて、アーロンの方をみて、小さく頷く。

「う、ん……懐かしいね。」

「そうだよな、身長もさ、前だったらこんなところまで手が届かなかったのに、今なら届く、なんだか不思議だよな。」

「…うん、成長、できてる、のかな。」

「出来てるよ、俺はいつもソーヤに助けられているし、出来る事だって、日々増えてきている。」

「…よかった。」

ソーヤはそうつぶやくように言って、門から手を放す。

そうやっていると、見覚えのある人がこちらに近づいてきていた。

「アーロンにソーヤか、良く帰ってきたな。」

「「教官!」」

このトレヴィオの村でアーロンとソーヤに冒険者としての基礎を教えてくれた教官だった。

「あぁあぁ、元気そうで良かった、それに背も伸びたようだな。うん、鍛錬も怠っていないようで安心したぞ。」

「お久しぶりです!教官も元気そうですね。」

「あ、えっと…お久しぶり、です。」

「背は伸びたが相変わらずだなソーヤは、まぁそれはお前らしさといえばそうか。」

教官はそういいながら笑い飛ばして、くる。

久しぶりに会って、変わらないな、と思うところがあるが。

自分たちが成長していったぶん、すでに成長しきっていた大人であった教官は、やっぱりどこか皺が増えたように感じるし、自分たちが成長しただけなのかもしれないが、思ったより身長が追い付いてきつつあった。

こんなにも、視線が近かっただろか、と思ってしまったのだ。

「ん?君たちは…あぁそういえばチームを組んだ、と言っていたな、メンバーかな?」

教官はそういって後ろにいたミコトやアスト、フィー、リュディに視線を移す。

「あぁ、リュディは…初めてだけど他は見たことあるよな。」

「そうだな、全員元気そうだな。君がリュディ君かな?私はアーロンとソーヤに冒険者としての基礎を叩き込んだ者だ、よろしく。トレヴィオはとくに何かがあるわけではないがまぁのどかでいいところだ、ゆっくりしていくと良い。」

「ありがとうございます、ゆっくりと堪能させてもらいます。」

そう言って、二人は握手を交わす。

その後、アストとフィーが教官に話しかけて、何か小さい…確かあの包装はルズベリーに行く前の街で寄った町での特産物をつかった日持ちする焼き菓子、だったはずだ。

多分、このアーロンとソーヤがこの村を離れることになったあの事件のことを詫びているのだろう。

教官の様子を見るに、気にしてないようではあったが、お菓子は快く受け取ってもらえたようだ。

「アーロン、ソーヤ、セスさんが家で待っているから早く帰ってあげなさい。きっと今も家で君たちの帰りを今か今かと待っているからな。」

「あ、そうですね。そうします、では教官また!」

「あ、えっと失礼します。」

挨拶もそこそこにアーロンとソーヤ、二人が足早にその場をあとにする。

それについていくようにミコト、アスト、フィー、リュディもそれぞれ教官に別れの挨拶をして二人の後をついて行く。

慣れた道を小走りに走っていく。

この数年で、やっぱり多少のことは変わっているようで、細かい街並みがこうだっただろうか?と疑問に思うようなところがあった。

だが、大部分はそのままで、ほとんどがアーロンの持つ記憶の通りだった。

もちろん幼馴染のイザークがいるカタラクト商店も、アリスの家がやっている食堂も、そのままだった。

内装とかは入って見ないことにはわからないが、それもほとんど変わりはないはずだ。

あとで、顔みせついでに中に入って様子を見たい。

そんなことを思いながら走っていると、次第にソーヤの家が視界に入るようになった。

あと少し、というところでソーヤと足並みを合わせるようにして歩くスピードを一度落とす。

ついでと言ってはなんだが、ろくに声を掛けずに駆け出してしまったので、後ろにチームメンバーがちゃんとついてきているのかも確認する。

全員ついてきていることを確認しつつ、ソーヤと一緒に家の前にたつ。

「「ただいま!」」

二人でそういって、扉をあける。

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