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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
129/173

13-17-6-16

そんなこんなでやることが増えてしまい、頭を悩ませているとギルドを経由してアーロンに宛てた手紙が届いた。

送り主は父親だった。

旅に出てからわりと時間があれば経過報告をしたり、近況を軽く伝えたり、とやり取りがまったくないわけではない。

息抜きとして父からの手紙を読むことにしたアーロンは、手慣れた様子で封筒をビリビリと開封して、なかに入っている手紙を取り出して、開いた。

あちらの近況に、前かいたことに対する返事、当たり障りのないような日常の事柄。

その一文の中に、もう例の問題は解消された、とだけ書いてあった。

アストとフィーの時にしてしまったあの一連の出来事。

とうとう完全に解決された、となるとトレヴィオに戻ることも難しくない、ということになる。

とは言っても当面戻る予定はない。

……と考えたが、少しその考えが変わった。

ソーヤの親戚、確かトレヴィオの隣村に住んでいる叔父が鍛冶屋をやっている、という話を聞いたことがあった。

これを機に一回第二の地元であるトレヴィオに戻って、ついでにその人にどうにかできないか相談をしてみるのもありか、と思いだしたのだ。

そうすれば、多少の言いづらさはあるが、父にも自然と持つ武器を変える、という報告もできるような気がっした。

けれど、そうするには一度チームメンバーの意見も聞いておかないといけない。

アストやフィーに関しては少し気まずいところはあるだろうか、この今までの生活の中で何度かまた会ってちゃんとお礼をしたい、という話を聞いているのできっと一緒に来てくれるだろう。

リュディについては他のメンバー次第なところがある。

冒険者という職らしく、彼は基本的に任された依頼をこなしたり、チーム内の頼みを聞いていることが多い。

今は割と依頼の量をセーブしているようで、それほど忙しい、という印象は受けない。

ソーヤは、ほぼ間違いなくついてくる。

決断力がない、というわけではないのだが、どうにもソーヤはアーロンに依存しすぎている気がある。

なので、自分がしたいこと、よりも味方の誰か、親しい人と居る事を優先しすぎている。

そして、このチームメンバーの中で一番親しいのは、兄弟のように一緒に育ってきたアーロンだった。

このチームを組んで、他メンバーと信頼関係を築くことによって、これからかわってくるかもしれないが…。

それをソーヤに無理に勧めることもできずにはいた。

成り行きでチームを組む方向にトントンと話が進んで、アーロンもその話がまんざらではなかったため、このまま来て、そうして色々な要因が重なったことで、チームメンバーが増えた。

そのことにもしかしたらソーヤに思うところがあった、ということも否定はできないのだから。

ミコトは……正直一番チーム行動ができるかどうかは不明なところがある。

研究者の性なのか、よくちょっと行ってくる、と言ってはそこそこ遠い町までいっていた、ということがわりと多い。

自分たちがトレヴィオに言っている間少し単独行動をして研究を進めたい、と言われてもおかしくはないだろう。

そうなったら手紙で所在を明らかにしつつ自由行動をしてもらうことにするか、などとまだ決まってないことを悶々と考える。

そんなことを気にしつつ、どうやって話を切り出そうかと悩み、その日は過ごした。


翌日、朝食の席で今日のやることや報告をするついでに言うか、と寝起きに決め、すでに日課となっているソーヤの起床準備と、世話をする。

いつも通りの朝、そうやって準備を諸々終えてからこの町ですでに恒例となった場所で一度集まる。

「それで、今日はどうするんだ。」

挨拶もそこそこに、朝食を食べながらアストがそう聞いてくる。

ソーヤも静かに耳を傾けながら、食事をしている。

「あぁ、ちょっとまぁ俺の武器の打ち直しとかで鍛冶屋と色々あるんだけどさ、一回知り合い…まぁ俺の知り合いっていうかソーヤの親戚の叔父さんになるか、その人に相談とかして、俺の父親にも顔を見せてちょっと安心させたい、っていところもあるから、いったんトレヴィオに戻ろうかと思ってるんだ。」

「へぇ、なるほどな…同行しても大丈夫か?」

「うんトレヴィオに一緒に行きたいな、それにセスさんにまた会ってお礼したい。」

思った通り、レーンスヘルの兄弟は同行を申し出てきた。

もちろん、と言って返すと、彼らはすでにお土産は何にしよう、とか何を話して、どうしたらいいだろか、だと作戦会議みたいなことを開始しだした。

ソーヤは当然自分も行こう、と聞いた瞬間決めていたようで、発言こそなかったが視線が合うとこくり、と頷いてきた。

「ミコトはどうするんですか?」

恐らく、ミコトが残る場合リュディがミコトの様子を見たり、ある程度の世話や、研究ということでダンジョンに向かう際の護衛を買って出るためだろう、リュディは先にミコトの様子を伺った。

「俺は最近ここらへんで気になることもないし、トレヴィオいいじゃないか、久しぶりで。一緒に行く。」

ちょっと予想とは違った返答だが、どうやらミコトも一緒にトレヴィオに来るらしい。

「では、私も行ってもよろしいでしょうか…あ、あまり大人数だと難しいですかね?」

「あ、いや大丈夫だ。それなりに宿屋とかもあるし家も…まぁソーヤの持ち家だけど部屋はあるから、同部屋とか気にしないなら泊まってもらうこともできると思う。」

チラリ、とソーヤのほうを見ると、ソーヤはやっぱりまだ眠そうな顔をしていた。

「…うん、大丈夫。」

だが、ちゃんと話は聞いていたようで、あくびを噛み殺しつつ、そのように答えた。

「じゃあ手紙を書いて、今日出す。トレヴィオに到着するのは…。」

これまでの旅の道のりを思い出しつつ、立ち寄った町、1日でどれだけ行けるか…まどをざっくりと計算をして、2週間ほどかかる、と答えが出た。

手紙はそれより早く届くだろうが、到着するまでの時間があったほうが、父も準備する時間や、予定を組みやすいはずなので、ゆっくりと、無理をしないスピードで行く、ということになった。

そうと決めたら、この町を出る準備をして、軽い依頼をこないて日銭を稼ぐ必要がある。

旅には何かと先立つものが必要だ。

また、あの懐かしい故郷に戻ることができる。

その楽しみを胸に、席を立つ。

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