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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
11/173

11-15-5-1

小鳥が窓の外で鳴いているのが聞こえてきた。

あぁ、もう朝になったのか、とぼんやりとする起きたばかりの頭が認識する。

起きて、朝食の準備と日課の鍛練をしなければ、とゆっくりといつものようにベッドから出る。

手早く着替えて、部屋から出る。

リビングやキッチンは昨日のままで、人の気配などせずにとても静かだった。

「あ、あー…父さんは昨日から潜入してていないんだった、二人ぶんかぁー。」

小さくそう、呟いてキッチンに向かう。

昨日のうちに買っておいたパンと多めに作ったため二人ぶんなら賄える量は残っているスープ、あとは卵か小さな肉でも焼けば十分立派な朝食になるだろう。

と、一通り確認して鍋を火にかける。

何年か前に父が奮発して買ったこのコンロは実に使い勝手がよく、アーロンは密かに気に入っている。

炎を操る才がなくても、火打ち石をうまく扱えなくてもすぐに火を起こすことができて火力の調整も容易い。

定期的にオド…スキルを使う際に消費される、力を補充しなくてはいけないが、それだって難しいことではない。

朝食の準備も済み、テーブルに二人ぶんの朝食を並べる。

あとは、ねぼすけを起こすのみとなる。

「おーい、あーさーだーぞー?」

一階から声をかける、だが返事もなければ人の動く気配すら感じることができない。

やっぱりだめか、と内心思いながらアーロンは廊下に出て、二階へと向かう。

二階の一番奥の部屋、そこのドアが半開きになっており、アーロンはまたか…と呟く。

扉を一応ノックして、それから声をかけながら中にはいる。

そこには予想通り、ベッドの上で布団に丸まりながらすやすやと眠る金髪の少年がいた。

「起きろっての、おいこら、またお前扉ちゃんと閉めなかっただろ、閉めとかないとまだ夜寒いだろうが。」

などと小言をいいながら少年を揺すり、起こそうとする。

だがよっぽど眠りが深いのか反応が少ない。

それどころか顔すらも布団の中に入り込んで眠り続けようといている。

「起きろよ、ソーヤ!もう飯の準備できてんだから、冷めちゃうだろ!」

さっきよりも大きな声で呼び掛け、ついでに布団は没収する。

突然布団の温もりが消えて、手がパタパタと布団を探すように動いた、と思うとソーヤはゆっくりと体を起こす。

「起きたか?」

顔を見合わせる位置に来ても視線が合わないし、どこかまだぼんやりとしている。

「ソーヤ、おはよう。」

再び肩を持ち、軽く揺する。

それでようやく、ソーヤと目線が合った。

まだ大分眠そうな目をしているが、そのうち覚めるだろう。

「…アーロン…?おはよう。」

「あぁ、おはようもう朝食の準備はできているから着替えて降りてこいよ。」

「…うん、わかった。」

眠い目を軽く擦りながらのそりのそり、と緩慢な動きで立ち上がって、着替えをはじめる。

アーロンは先に下に降りて自分の席に座ってソーヤの準備が終わるのをまつことにした。

数分後、まだ多少眠気の残る目で降りてきたソーヤも定位置に座る。

「ほい、じゃあいただきます。」

「…いただきます。」

ほどよい温さになったスープを飲み、ソーヤと今日の予定確認する。

「今日の鍛練終わったらどうする?ギルド寄ってみて手頃な依頼があったら受けるか?」

「いいよ、セスさんは…。」

「父さんは昨日からダンジョン潜入してるから…まぁ今日は帰って来ないんじゃないか?」

目玉焼きをパンの上に乗せ、大口を開けてそれを頬張り、じゃああとでギルドの掲示板確認しなきゃなー、と言う。

ほとんど正しく発音できなかったはずだがソーヤはそうだね、と返事を返す。


食事を終えて、後片付けを済ませてからアーロンとソーヤは武器を持ち、家からでた。

アーロンは身の丈ほどある長さとアーロンがすっぽり隠れるほどのふとさのある大剣。

ソーヤは木製の素朴な色合いをした少し長い弓。

それらをもって、二人は町の端の方にある訓練場まで行く。

そこには大人から、アーロンとそう年の変わらない子供までいて、それぞれがそれぞれのやりたいように体を動かしていた。

アーロンとソーヤもさっそく訓練にとりかかる。

アーロンは大きな剣を自在に操るために素振りと、得意のスキルである防御の上達のための補助の練習。

ソーヤは弓矢を用いての的当てをメインとして、その他にも周囲の気配を感じとることを行っていた。


一通り、日常の鍛練を終えると太陽が真上に来ようとしている頃で、昼食をどうするかな、と考えながら別行動をしていたソーヤを探すことにした。

的当ての場所には姿がなく、かといって休憩所や水場にも見当たらない。

体力強化のために走りでもしてるのかと思ったが、そのような事をしている人は少なくとも今日は、見ていない。

と、なると考えられるのは少ない。

「ま、これも訓練の一貫ってやつかな。」

アーロンは一人そう呟いて、水場の近くにある木陰に荷物をおいて、目をとじる。

右手を木に触れさせて、体がぶれないように支える。

そうして意識を足に集中させ、スキルを発動させる。

「察知」

まだ、習ったばかりだからうまく発動できるか、わからなかったが、思いの外、スムーズに発動することが出来た。

足を通じて、意識が、感覚が地面に落ちる。

気の横に立っているはずなのに、地面のなかを自由に泳ぐなにか、いや地面になったような不思議な感覚。

地面を通じて様々なことがわかった。

自分からどれ程離れた位置に何人がいるか、体格はどうなのか、どこに障害物があって、道はどう繋がっているのか。

そして、ようやくソーヤを見つけた。

地面の上には居なかった。

休憩所の近くにある木の上、そこからソーヤと一致する体格と寝息が感じ取れる。

スキルを解除して、まだ違和感のある感覚を何とか戻すように軽めのストレッチをする。

「また寝てんのかよ…」

思わずため息が漏れてしまう。

まぁいつものことか、と思い直して、起こしに向かう。


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