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約束のアポストル  作者: 飯綱 阿紫
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13-17-5-12

「ミコトそっちに行くぞ!」

「あぁ、任せろ!」

「ソーヤそこから右45度にエネミー、気をつけろ。」

「うん。」

「リュディガー、集めて後ろに流れないようにするぞ。」

「えぇ、わかりました。」

「アスト!あとどれだけで倒せそうかわかるか?!」

「あと2~3発だな!すぐ撃ち込む!」

「フィー、あっちに範囲攻撃頼めるか?!」

「任せて!」

敵の数が多く、乱戦が繰り広げられる。

その中でもスキルを使い、戦況を常時確認し続けて、周囲に指示を出す。

最初は混乱も多かったが、次第に慣れてきた。

今では全体を指示して、状況を管理できるようにまでなった。

前は苦戦していたエネミーの群れの対処も板についてきたし、指示もよくとおる。

ミコトも久しぶりながらも邪魔にならないようにこちらの様子を伺いつつ、的確に行動してくれる。

リュディガーと一緒に戦っていたこともあったのだろうか、そちらとの連携のとり方もうまくいっている。

フィーは精霊に頼むことによってエネミーの弱点をつく攻撃が可能であり、アストも同じようにすることができる。

けど、今までは初見のエネミーだとその弱点探しから始まることになるため、なかなか難航することもあった。

それに見た目がそっくりでも実は別の種類だった、や亜種で弱点を変えた、などという変わりだねも出てくるようになってくると、それだけで戦況は混乱したりもする。

そこを上手く知識面でカバーしているのがミコトだった。

流石にダンジョンに良く潜り、研究をしているだけあってエネミーの特性や見分け方、弱点についてはサラッと見ただけですぐに説明できる。

その説明が長くなりがちになるのがたまにきずではあるが、それはそれで面白い話が聞けたりするのでアーロン自身はそれでいいと思っている。

まぁ止めようと思ってもそう簡単に止まるわけではないから、気が済むまで話をさせておいてやる、という感覚もなくはないのだが…それはまた別の話だろう。

思ったよりも戦えているし、ミコトというたのもしい味方がついたことにより、いつもより少し深く潜る。

エネミーの構成はさして変わらず、少々厄介な動きや連携が増えたくらい。

このくらいならばまだ対処できる。

余裕ぶっているわけではないのだが、それでもまだ下に行っても問題ないだろう、と思えるようだった。

チーム内の疲労度もそこまで高くなく、むしろ程よくあったまってきている頃合い。

自分たちの小さな積み重ねの努力がそれなりに実を結んだことがうれしく思えて、思わず表情がゆるむ。

「お、なんだ?なんかいいのでもあったか?」

それを目ざといミコトに見つかってしまった。

特に悪いことを考えていたわけではないのだから何でもない、と言って適当にごまかせばいいのだが、そうするのも少し面倒くさい。

そもそも、なんでこういう時に限ってちゃんと人の顔見ているのかと問い詰めたいくらいだった。

「しっかし、ここらの敵でも余裕で対処できるようになってきたな。」

「そう、だね。」

後衛にいたアストやソーヤもそういう思いがあったのか、アーロンと似たようなことを口に出している。

今までの連携と比べると格段にやりやすいのかもしれない。

それはそうかもしれなかった、なにせ今まで前衛にいたのがアーロンのみ、たまに必要に応じてアストが体術と小型ナイフで相手取る程度のことしかやってなかった。

そうするとアストの負担が増えるし、あまりない動きをされると後衛も攻撃に巻き込まないように気を付けようとして攻撃に移る思考にためらいが入ってしまう。

今はリュディガーとアーロンで前の防御、もしくは囲まれたときの守りを固めて、ミコトが先陣を切る形で切りつける。

そして見敵した瞬間ミコトからエネミーの詳細の情報が伝えられる。

その情報を元にフィーやアストは属性攻撃の準備に取り掛かる。

ソーヤは防御網を突破しようとやっきになるエネミーの隙をついて急所を狙い撃つ。

攻撃力が後衛に寄りすぎているような気もするが、こういう戦いは全然ありだろう。

一つ問題点があるとすればアーロンが司令塔、という役割を担っていることであろうか。

アーロンは前衛、それもタンクとして前を守る、防御を固める役割がある。

それをする以上後ろから全体を見渡す、ということはできないのだ。

現状は鷹目でどうにかなっているが、本来ならば、あまりアーロンのような役職についている冒険者はそこまで司令塔をやらないのだ。

まぁ何事にもイレギュラーはあるし、適正という面もあるのかもしれないが。

「どうする?もうすこし下にいくの?」

どこか楽しそうに聞いてくるフィーはまるで行こうよ、と遊びに誘いにいくような感じだった。

「今何時ぐらいだろうな。」

そういいながら懐中時計を取り出す。

ダンジョンに潜っている最中は日の入りや日の出がわからず体内時計が狂い易いので、長時間潜るときはこういうアイテムは必須だ。

時刻はまだ昼を少しだけ過ぎた程度を指し示していた。

「まだ昼ちょいすぎくらいか。」

「じゃあまだまだこれからじゃないか。」

思ったよりも時間がかからずここまでこれたことに再び感嘆のため息をもらす。

流石に、もう少し苦労するかと思ったのだが…。

「全員まだいけるか?」

幾らなんでも独断で決めるわけにはいかないよな、と心の中でつぶやいて全員を見渡しながらそう聞いてみる。

フィーとソーヤ、ミコトはダンジョンの下にまだまだ興味が尽きてないようで下に行くことに賛成している。

アストはもう少しここで様子見でもいいんじゃないか?という少し慎重派な大人な意見。

リュディガーは…少し迷いながらも、下に行く方に賛成の意を示していた。

そういう多数決のもと、下に潜ることになったのだが…。

リュディガーは意外と周囲に流されやすいところがあるのかもしれないな、と考えだす切っ掛けになった。

そういえばこのダンジョンの案内や町の案内だってそもそも最初は乗り気ではなかったようなのに、ミコトに押し切られたような形で引き受けてくれたものだ。

さっきの様子も自分と意見を求めているアーロン以外の4人中3人が下に行きたい、という意見を言っていて、留まりたい、という意見が言えなかった可能性もある。

流石にほんとうにダメな時は言うだろうが…こういう微妙に判断がつかないときだと、流されやすいというか、周囲に合わせてしまおうというところがあるのかもしれない。

協調性があるといえばいいが、自分の意見が言えない、不安要素を相談できないということは致命的な弱点だと思う。

これは、少し気を付けたほうがいいかもれないな。

そう思いながらもアーロンはダンジョンを下へとくだりはじめた。

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