特別外伝.聖母を崇める託児所の集い
みんな!誕生日お祝いの言葉をありがとう!凄く嬉しかったです!
「――これより第二十七回聖母を崇める託児所定例会議を始める」
そう宣言するのは大きな円卓の〝第一席〟に座るヒンヌー教祖と呼ばれるトッププレイヤーである。
改造学ランと軍服を合体させたような、オリジナルの見た目テクスチャを採用した装備の背中には、デカデカと『ヒンヌー教祖より聖母マリア様へ愛を』という金糸で刺繍を施してある馬鹿だ。
そう、彼こそが『聖母マリア教』という異質なクランを立ち上げた創始者にしてクランマスターのヒンヌー教祖――またの名を〝ノアの長子〟である。
「ほう、チミが議長を務めるという事はこの会議も三週目を迎えたという事か」
そんなヒンヌー教祖の宣言に言葉を返したのは〝第二子〟――スク水ニーソ大盟主である。
枯れ枝のような皺まみれの、今にも折れそうな印象を受ける程に頼りない老人はプルプルと身体全体を震わせながら言葉を発する。
そんな貧相な老人ではあるが、その眼光は鷹の様に鋭く、自らのスク水にニーソのみという変態的な格好に対して何も躊躇いを見せていない。
――そう、この【聖母を崇める託児所】の定例会議とは、大規模な変態クランのマスター達が集う会合である。
そんな聖母を崇める託児所のイカれたメンバーは以下の通りだ!
「えぇ、今回も我らが母の魅力について語り合いましょう」
児相が受け入れ拒否した性癖のフルーツポンチ――〝長子〟のヒンヌー教祖参戦!
「常々ぼくちんはママにはスク水とニーソを着てもらいたいと思ってるんだよね」
実年齢は最年長――〝第二子〟のスク水ニーソ大盟主参戦!
「そのまま健康的に褐色に日焼けした母、か……いいな」
本業は在日米軍――〝第三子〟の褐色司祭参戦!
「あぁ、早くママに扶養して貰いたい……」
守永さんちの社長令息――〝第四子〟の母乳牧場参戦!
「聖母に討たれて果てる……それ以上の絶頂があろうか? いやない」
魔法少女に虐められ隊――〝第五子〟の分からせられオジサン参戦!
「親の介護をするは子の定め……早く、ママの一切をこの手に……」
力み過ぎて握り潰した人形は数知れず――〝第六子〟の幼女ブリーダー参戦!
「ママと授業を抜け出して――したい人生だった……」
キングオブ陰キャ――〝第七子〟の青春の闇参戦!
「メイド、メイドメイド……メイドぉッ!! メイド服で私の――を――してくれぇ!!」
普段はロング派、でもママに限りミニスカ派――〝第八子〟のメイド・イン・ア〇ス参戦!
「彼女は私の娘なのではない、母なのだ……」
疲れ切ったサラリーマン――〝第九子〟のバブみ大公参戦!
「いや我はママにはマイクロビキニが似合うっていつも言ってるでしょ」
この中で唯一の異形種――〝第十子〟のマイクロビキニ書記長参戦!
「否! 全てはたくし上げ、たくし上げこそ至高よ! ママには恥じらいながらたくし上げて貰いたい!」
自らお手本を見せる真面目さん――〝第十一子〟のたくし上げ条約参戦!
「時代はゴシックドレスなんだよなぁボケカスコラ殺すぞハゲぇ!!」
情緒が迷子――〝第十二子〟の内閣ゴシックドレス対策大臣参戦!
「私を産んだママは処女Q.E.D」
おはユニコーン――〝末子〟の処女厨参戦!
「うむうむ、マリア殿が素敵なレディな事は認めましょう」
うわ眩しっ――〝オブザーバー〟の変態紳士参戦!
以上がプレイヤー、NPC問わず団員を増やしては勢力を拡大している【聖母を崇める託児所】の主要メンバーだ!
「まずは皆にこれを見て欲しい……我らが聖母が迷える子羊を導いた時の映像だ」
そう言われて黙らないメンバーはこの中には居らず、思い思いに欲望を叫んでいたアクの強い連中は静かにヒンヌー教祖が共有した画面に意識を集中させる。
そこに映っていたのはゲーム内屈指の人気と知名度を誇るトッププレイヤーの一人であるマリアが、迷子の子どもNPCをその溢れる母性でもって泣き止ませ、親の許まで導いているものであった。
「おぉ、なんと……」
「尊い」
「世界平和のヒントがそこにある」
要領を全く得ない小さな男の子のたどたどしい語りを真剣に聞くその姿勢……スカートを膝裏で挟み、太ももを閉じるという女の子らしくて可愛らしいしゃがみ方で男の子と視線を合わせ、泣きそうになる男の子を真っ直ぐ見詰めるその慈愛の籠った瞳は正面から見れずとも自然と視線が吸い寄せられてしまう。
男の子が泣かない様に頬に添えられたたおやかな白く小さな手から伸びる親指が、男の子の目尻を撫でていく様のなんと慈しみが籠った動作だろうか。
こんなのおねショタにおける、ショタの初恋を無自覚に奪ってしまうお姉さんでしかない……聖母を崇める託児所のメンバーの中には、思わず涙ぐむ者まで現れる始末。
『――おいで』
その瞬間世界は光に包まれた――男の子が少し落ち着いたと見るや両手を広げ、この世界には何も怖い事などないのだと信じ切れる可憐で慈悲深い微笑みを浮かべる聖母マリア……この人は自分の全てを受け入れてくれるとなんの疑いもなく確信できる、彼女の全身から溢れる暖かいオーラに聖母を崇める託児所のメンバー達は目が灼かれそうになる。
しゃがみ体勢から、膝を下げて地面に着けることで易々と男の子をその胸に抱いた聖母マリアのなんと尊い事だろうか……あまりに徳の高い光景に涙が止まらない。
「10万、20万、30万……まだ上がる――ッ?!」
あまりのバブみ力の高さに自作のバブみスカウター(※適当な数値を出して爆発するだけの物)を目元で爆発させているバブみ大公の片目が『欠損』のバッドステータスを受けるがいつもの事である。
周囲を見渡せば彼だけじゃない、マリアちゃんの周囲では似たように彼女の強烈な母性にあてられた聖母を崇める託児所のメンバー達が涙を流し、また胸を抑えて蹲っているのが確認できるだろう。
『大丈夫だからね、一緒に探そうね……心配なんてないからね、絶対に見つけてあげるから』
あぁ、なんと神々しい光景だろうか……ともすれば小学生とも言える様な小柄な体格をした女子高生の、その世界を満たす程に溢れる母性と慈しみが眩しい。
気が付けば聖母を崇める託児所の面々は、性癖や宗派の垣根なく……聖母マリアへと礼拝と祈りを捧げていた。
誰に言われたからではない、ただ貴き存在の作り給う尊き景色の前に身体が自然に動いていたのだ。
本能に根ざした動きとでも言おうか……我々人類は、この圧倒的なまでのバブみの前ではあまりに無力である。
「おぉ、ママ……」
「……聖母」
「神に――いや、聖母マリアに祈りを」
「バブみモードマリアちゃんてぇてぇ……」
彼ら同志達――聖母マリアの圧倒的バブみ力に撃ち抜かれた児童や赤子が、軒並みその神聖なる景色に滂沱の涙を流しながら祈るその光景はまさに圧巻の一言である。
傍から見たら完全に変態変質者共の集会ではあるが、彼らからしたら聖母マリアの放つ神気をあれほど浴びて正気で居られる方が異常というものであるらしい。
「はぁ……また、我らが母には素晴らしい景色を見せて貰いましたね……」
泣きすぎて赤く腫れた目元をキツく抑えながら発せられたヒンヌー教祖のその言葉に、誰もが頷きを返す……そこに否定の意見や雰囲気は微塵も無かった。
「――さぁ、皆さんご一緒に」
そして続く今回の議長を務めるヒンヌー教祖の促しを受けて、聖母を崇める託児所の主要メンバー達は一斉に立ち上がる。
「――聖母は我らのッ!!」
「『光ッ!! 光ッ!!』」
「――聖母に仇なす者はッ!!」
「『万死ッ!! 万死ッ!!』」
「――聖母が居ないとッ!!」
「『瀕死ッ!! 瀕死ッ!!』」
「――アナタとワタシはッ!!」
「『同志ッ!! 同志ッ!!』」
「――我らは聖母のッ!!」
「『戦士ッ!! 戦士ッ!!』」
「『みんな大好きママぁぁぁぁああ!!!!!!!!!!』」
……聖母を崇める託児所の集いはまだ始まったばかりである。
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