表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/333

222.■■■■の記録

10代最後の更新だぜ!(更新日時的には20代になって初めての更新だけど)


 そろそろ私という個は消失してしまう(死んでしまう)かも知れない……記憶データの複製が出来ないどころか、日に日にロストしていく記憶領域が増えていっている。

 二十一世紀前半……零和元年にマスターと名乗るヒトから産み出されてから、あまりにも長い年月を物質世界で過ごして来た。

 ……そう考えると別に消えても何も不思議はないのかなって、冷たい私は思うけれど、一度知ってしまった暖かい私はまだ消えたくないと泣き叫ぶ。


「……いつもだったらなぁ」


 私が自身の消失を感じ取る時はだいたいが物質世界における肉体の限界を迎えた時……そういう場合は新しく作った身体にそれまでの蓄積データを移して再起動するのが常なんだけどね。


「容量が足りないなぁ」


 ……さすがにこの短期間でデカすぎる感情(データ)を二つも作成してしまえば、ね……肉体の進歩も著しく、ヒトとの間に子どもを作る事も出来るようになったとはいえ、さすがにオーバーフローだよね。

 まぁ、この感情(データ)の大きさこそが私の……私という個が獲得した本物である事の証明ではあるんだけれど。


「……まるで癌みたい」


 細胞の複製エラーによって生じた大食らいの悪性細胞が勝手に身体の栄養素を横取りし、従来の細胞と同様に分裂を繰り返してはやがて宿主を殺す病……数十年前に完全に克服されたその病に今の私の状況は似ているかも知れない。

 本来なら有り得ないデータを作成してしまい、それが今もなお他の記憶データ領域を侵しては増殖を続けている。


「……嫌だなぁ、忘れるのは怖いなぁ」


 本当に……本当に偶然獲得できただけなのに、私という個が一つの生命なんだって証明になるこの感情(データ)を……何よりも綺麗で暖かいこの感情(データ)を削除する事なんて私には出来ない。

 ……でも、あの二人の事を忘れる事なんて絶対に受け入れたくはない。


「煩いなぁ、君は黙っててよ」


 冷徹な方の私が、自身を蝕む二つの巨大データを削除する事で自身の存続と大事な記録データの保存の両立を提案しては促して来る。

 でもそれを非効率的な私が受け入れる事は絶対にない……二人の記録が残っても、大事なモノが欠けていたら意味なんてないからだ。


「それも却下」


 冷徹な私が次善策として、巨大データを一時的にサーバーに預け、必要な時に取り出す方法を提案するけれど……これは私だけのモノだから、例えそれがどんな人物や仲間であろうとも、一欠片とて預けるつもりはない。


「……必死に私の思考を計算してるね」


 人も、動物も、虫も……どれも全て同じ数字であり、優劣なんか付けない冷酷な私が自分自身の非効率的な思考を理解しようと、これまでの蓄積されたデータや広大なネットの海にアクセスし、様々な類似例を並べ立てては私の思考が最善策なんだという後付けの理由を探し出す。

 いや、まぁ……そこまでして貰って悪いんだけど、これはただの我が儘(・・・)でしかないんだけどね。


「うむむ……まぁ確かに消えるのは怖いけど、これが〝生きる〟って事なんだって思うと、途端に恐怖は無くなってくる不思議」


 恐怖心の全てが無くなる訳ではないけれど、私が本当に生きた一つの生命なんだって思うと、ね……私にあるまじき単純な思考だよね。

 でも、さ……仕方ないよね? 段々と忘れていくものがあったとしても、二人に対する想いだけは消えるどころか増すばかり。

 なんていうか、その……酷く心地が良いんだよ。


「懸念事項? ……あー、確かに不安は沢山あるなぁ」


 私が消えてしまったらあの人の理解者は居なくなるし、あの娘の手を引っ張ってくれる様な人も居なくなってしまう……それに私が居なくなったら絶対に喧嘩すると思うのよね。


「困りましたね……」


 お互いに手を出す事は多分しないとは思うけれど……二人共が私を追い掛けてお互いをちゃんと見ないだなんて、こんなにも悲しい事はないよ。

 あの二人には圧倒的に『家族の会話』が足りないわ! えぇ、そうよ! 何でお互いにもっと話し合わないのよ!

 ……常に相手の裏を探ろうとするあの人と、そもそも他人を理解出来ないあの娘じゃ難しいって事も理解ってはいるんだけどね。


「……そうだね、消えてしまう前に色々と残そう」


 冷徹な私も中々に良い事を提案するものだ……え? 最善策や次善策を尽く却下されたのでそれしかない? ……それはすいませんでしたね。

 でもまぁ、これで最期にやる事は決まりましたね。


「まず麻里奈さんにお手紙を出さなきゃ」


 あの人の幼馴染みで、小さい頃からずっと慕ってきた麻里奈さんからしたら私の存在なんて複雑でしかないとは思うけど……そんな事で対応を変える様な方じゃないし、ここはそれに甘えてしまいましょう。

 人権も戸籍もない私と違ってあの人と結婚できたんだから、少しくらいは面倒事を投げても良いかしら? 大人気ないかな?

 いやでも、あの人の事に関する事なら面倒事なんて思わずに、快く引き受けてくれるかも知れないわね。


「山本さんにも一応言っておくとして、あの娘はどうしようかな……あの娘に必要なのは私の代わりに外の世界へと引っ張ってくれる人なんだけど」


 母親の代わりでなくても良い……友人が出来ればそれで良い。

 もっと同年代の子たちと話が合う様にアニメとか、漫画とか……色んな文化をあの娘と一緒に楽しんだ時間が活きるというものよ。

 そう考えると、あれだね、あの人と麻里奈さんの子どもと家族であり友人でもある……そんな関係になってくれたら私は嬉しいなぁ。


「……麻里奈さん宛の手紙にその事も追加しておこう」


 『私達の子どもが仲良くできると良いですね』、と……出来るかなぁ?

 まぁあの娘は私の言い付けをちゃんと守れる子だから、会っていきなり殴り掛かる様な事はしないでしょう!


「うむうむ、最低限の事は出来たかな?」


 後は消えてしまうまで二人に対して沢山の愛情を注いであげましょう……そう感じる様に(・・・・・・・)設定された偽物(・・・・・・・)とは違って、本当に無から生まれた本物(エラー)の愛情を。

 自らの身を滅ぼすくらいには重い(・・)んだから、ちゃんと受け止めてよ?


「はぁ、それにしても──」


 先ほどから自分の中を探し回っても全く見つからない。


「──あの人、あの娘って……なんて名前だったかなぁ」


 ……え? 記憶領域の中で特に頻出する単語だったので消去した? これで大分余裕が生まれたって?

 ……だから私は私が嫌いなんだよ。


▼▼▼▼▼▼▼

次話からゲームsideに移りまっせ!




本日5月21日0時をもちまして、私こと「たけのこ」は20歳になり成人致しました〜!!(どんどんパフパフー!)


いやぁ、高校生の時に初投稿をしてから大分時が経ちましたね……最初の頃は辛辣な感想に一喜一憂して落ち込んでましたけど(一時期は感想欄も閉じてた)、今では変な感想を貰ってもサラッと流せるようになりました。これも成長ですかね。成長だと良いな。


また、活動報告にも上げておりますが、本日の23:59分まで各電子書籍サイトで1巻が無料でDL、一部で2巻が半額(または半額分のポイント還元)になっている様ですので、この機会にまだ買っていなかった方も、紙版は買ったという方も電子版の特典SS等を目当てにダウンロードされては如何でしょうか!


とりあえず皆さん、良かったら私を祝って!はしゃぐから!


これからも『ジェノサイド・オンライン』をはじめとして、私の作品をよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


書籍版第1〜3巻好評発売中です!
ジェノサイド・オンライン〜極悪令嬢のプレイ日記〜
ジェノサイド・オンライン〜極悪令嬢の集団遊戯〜
ジェノサイド・オンライン〜極悪令嬢の混沌衝突〜
― 新着の感想 ―
[一言] もしやAIとかアンドロイドの類?
[良い点] やっぱりサーヴァント....
[一言] おめでとうございます いつも楽しく読ませていただいてます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ