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203.不思議な女の子

この章での重要NPCだよ!


「りんご飴いかがですかー!?」


その日も私はお忍びで『ファストリア農業都市』に赴き、市民達に混じって屋台を切り盛りしていた……お飾りとは言え、この『メッフィー商業立国』の国王の一人娘たる者、このくらいの商売で黒字を出せなくてどうするという話である。

幼い頃から慣れ親しんだいつものルーチンだったんだけど……今日はまた変わったお客さんと出会ってしまったようね?


「……?」


「……一本ですか?」


「……(コクっ」


私の肩を軽く叩き、小首を傾げながら人差し指を立てる目の前の女の子……私とほぼ同年代の彼女はどう見ても平民じゃない。

私の軽いジェスチャーを混じえた返答に軽く頷く仕草も、ただその場に立っているだけの佇まいでさえ洗練されていて……いや、洗練され過ぎていて(・・・・・・・・・)……まるで私達とは数百年も歴史の積み重ねが違うのだと、そう言われているような錯覚を覚える。

……まぁ、どう見てもお忍びの他国のお嬢様だろうなぁって感じだし、私ってば仮にも王族ではあっても所詮は歴史の浅い小国だし、周囲の長年大国として君臨して来た様な国の貴族だったら、ここまで洗練されているものなのかな。


「はい、どうぞ」


「あ、あぅり……と……?」


「あら、ここら辺の言葉は話せないのかしら?」


目の前の女の子をじっと見据えてみる……頭の後ろで一纏めにしている長い黒髪は私が羨ましくなるくらいにサラサラとしていて、天の御使いの輪の様な艶と輝きがあるし、肌も日に焼けた事が一度も無いように白い……それに手だって全く荒れていない。

そんな綺麗な子が不自然に安っぽい格好をしているのは違和感が凄いわね……彼女の美しさと服が全く釣り合っていない。

キャスケット帽を深く被り、不思議な眼鏡を掛けてはいるけれど……その整い過ぎた容姿を隠すどころか、『もっと見たい』『暴きたい』と思わせてしまっている。

着ている服だってそう……ここら辺の平民がよく着るような、ワンピースの上に茶色いベストを身に付けてはいるけれど……サイズが合っていないのか、ベストの紐が胸のところで引きちぎられそうだし、引き絞るための腰の紐はむしろ余ってて大きなリボンになっちゃってるしで……こんな子が一人で歩いてたら即襲われるに決まってるわ……。


『おや、どうかしましたか?』


『……』


……まぁもっとも? この他国のお嬢様は少しズレているのか、これ見よがしに強そうな護衛を連れているから大丈夫だとは思うけれど……お忍びになり切れていなくて、見てるこっちがハラハラしてきちゃうわね。


『……ここら辺には旅行で来たんですか?』


『おや? 私達の言葉が話せるんですか?』


護衛の方にハンカチを貰っていたお嬢様に話し掛けてみる。

今この子が喋ったのは、主に『中央大陸西部』で使われている『アリューシャ諸言語』のはず……かの地は渡り人なる者たちが神々の導きによって降り立ち、短期間の内に激しい動乱が立て続けに起きている今最も注目されている土地だったはず。

……このちょっとズレてて迂闊そうなお嬢様なら、上手く誘導してやれば簡単にあちらの情報を──って、護衛の騎士様が剣の鍔元をカチカチ鳴らしてる?!


『わ、わー! 怪しい者じゃないよ?! ほ、ほら! この国って大きな街が少ないじゃない? だから必然的に旅人は村を迂回するし、他国の商人も集まってくるから……だから外国の人と接する機会が多いから多言語は必須技能なんだよ!』


『……だそうですよ、いの──センシオ』


『……』


『……ほっ』


よ、良かった……お嬢様が取り成してくれたお陰で護衛騎士も引き下がってくれたようね……イノセンシオなんて、変わった名前だけれど……まぁ気にしないでおきましょう。うん。


『にしてもこの時期に来るなんて珍しいわね? 今は大公選挙くらいしかないわよ?』


『大公選挙……ですか?』


あら? 大公選挙を知らない? ……てっきり次の大公は誰になるのか、もしくは選挙に介入するための工作をしに貴族のご令嬢が来たのだと思ったけれど……いや、この子は何も知らされてないわね。


『大公選挙って言うのはですねー、首都を囲む三つの都市を治める大商会の当主かその跡継ぎが合計三名ほど立候補して、その中から次の宰相でもある大公を選ぶんですよ。……特に今の国王には跡継ぎが王女一人しか居ないので、次の大公が婚約者にもなるみたいで……それぞれの商会は張り切ってるみたいですよ』


『へぇ……立憲君主制みたいな物ですかね』


早口で捲し立てるようにして説明しながら、チラッとお嬢様の後ろへと視線を向ける。


『……』


……恐らくだけど、本命はこの護衛騎士……この世間知らずで目立つお嬢様を隠れ蓑にして、動き易くなったこの寡黙な騎士様が何か探ったり、工作をしてきそうね……そうはいかないんだから。


『もしよろしければこの国を案内致しましょうか?』


『あら、良いのですか? 報酬はおいくら程でしょう?』


『そうですね……このくらいでどうでしょう? 安くしておきますよ』


この推測は間違っているかも知れない……でも目の前で祖国に対する陰謀の芽があるなら黙って見ているなんて出来ない。……実権の無いお飾りの王族でも、この国を愛しているのだから。


『あ、私はアビーって言うの! よろしくね?』


『そうですか、私は──玲子です』


『レイコ? 変わった名前ね!』


『……そうですね、少し古い感じではありますね』


とりあえず案内役に滑り込む事は出来た……後はこのお嬢様の相手を適当にこなしつつ、背後の騎士様を監視してやるんだから……くぅ、こういう時に実権が無いと不便ね。

私が他国の陰謀がどうのと言ってもマトモに取り合ってくれないだろうし、自分の自由に動かせる騎士団なんかも居ない……()に頼めば動いてくれるだろうけど、選挙に集中して欲しいし……私が何とかしなきゃいけない。


『じゃあ先ずはこの街から案内しますねー、明日の昼前に広場に集合でお願いします』


『分かりました』


──ディルクの邪魔はさせないんだから!





「丁度いい通訳と人質が手に入りましたね」


『……』


▼▼▼▼▼▼▼

ポニテレーナさん絶対に可愛い……(確信)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 犠牲者になるか被害者になるか、それが問題だ。
[一言] またしても哀れな被害者が産まれてしまう
[良い点] Fateって聖杯戦争でほぼ死ぬよね 死ぬ運命 王女も死ぬ運命 サーバント?((;°Д°;))カタカタ
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