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4話 あろう作家の生命線は感想、ブクマ、ポイント


 朝のホームルームでいつも通りな連絡事項がなされた後、授業が始まった。

 退屈な時間にあくびを噛み殺しながら、早く終わらないかなと思うのが普通の男子高校生の姿であろう。

 しかし俺は違う。


(構想を練るのにちょうどいい時間だな)


 ノートの端っこに昨夜投稿した『俺TUEEE』作品の先の展開を考えて書き込む。執筆はパソコンでする派であるため本文自体は考えない。

 ああでもない、こうでもないと考えながら煮詰めていく。

 ピッタリハマった展開が決まったときは、脳汁が溢れ出るほどの喜びであった。

 これなら面白いって感想が来るかもしれない……。


(ああでも、実際どれくらいの評価受けてるんだろうな)


 読者の反応を想像したところで、スマホを忘れたため確認できない作品への評価が気になった。

 『俺TUEEE』が存在しないこの世界で初めての『俺TUEEE』作品だ。ウケるはずだとは思っているが……創作で絶対にヒットするという方程式は存在しない。そうでもなければあれだけヒット作を生むノウハウがあるはずの週刊少年誌が打ち切り作品を量産するわけがないのだから。

 売れると満を持して出された作品がつまらないという評価を受けたり、微妙だなと思った作品が大ヒットすることだってある。


(そう考えると不安になってきた……)


 昼休みに友人の田中からスマホを借りるでもして評価を見よう。この調子じゃ放課後までは待てない。


「そろそろ消すぞー。いいかー?」

「あ、やべ」


 教師の声に今が授業中であることを思い出した俺は慌ててノートに板書を写し始めた。




 そうして授業時間を乗り切り昼休みがやってきた。


 まずは弁当をかきこむ。男子高校生の胃袋はいつだって食べ物を求めている。

 五分で食べ終わると田中のところに向かった。


「どうしたか、翔太氏。我は昼餐ひるさん中なのだが」

「そんな言葉存在するのか?」


 晩餐の昼バージョンなのだろうか、造語を繰り出す田中にツッコむ。

 田中は箸を片手に、スマホを片手に持って弁当を広げていた。どうやらソシャゲをしながらゆっくり食べているらしい。


 ちなみに昼休み中のスマホの使用を学校は黙認している。歳を取った教師などは見ると顔をしかめるのだが、没収まですることはない。


「それで盟友よ、何用だ?」

「あースマホを家に忘れたんで、ちょっと借りたかったんだが……」

「見ての通り取り込み中だ。昼休み中にスタミナを消化しないといけないのでな」

「みたいだな」


 目を離せない局面なのか、スマホから顔を上げずに答える田中。別に失礼だとは思わない、俺もそういうときはあるし。

 ついには箸を置いて両手でスマホを持ち始めた。どうやらしばらくその状況が続きそうなので、俺は何も言わずに離れた。おそらく俺がいなくなったことを田中は気づいてないだろう。


 そして自分の席に戻って……よくよく考えてこの方法が駄目だったことに気づく。

「スマホを借りても、絶対画面は見てくるよな」

 親しき仲にも礼儀あり。個人情報満載のスマホで何をされるか気にならないはずがなく、借りたとしても田中の隣でスマホを操作することになっただろう。

 そんな中ユーザーページを開けば一発で俺が創作をしているとバレるに決まっている。創作をしていることを現実の知り合いにバレたくない俺にとっては避けたい事態だ。


 一応他の方法はある。「この作品が気になっててなー」とか言いながらあくまで読者の体で作品のページを開き、どれくらいのブックマーク・評価が付いているかを見ればいいだけだ。

 だが、それすらも俺の反応という危険が残る。

 評価や感想が付いていて我が事のようにガッツポーズなど取ったら流石に怪しい。そこまで大きな反応をするつもりはないが、顔がにやけない自信は無かった。

 また逆にポイントが全然付いてなければ肩を落とすまではなくとも、言葉が詰まるくらいにはなるだろう。


 1%でもバレる可能性があるなら慎重になるべきだ。

 やっぱり創作をしていることが現実の知り合いにバレたくない。

 特に昨夜投稿した作品のヒロインとかもろに俺の好みの年下巨乳ツインテ従順なんて属性だしな。それがバレてみろ。「おまえこんなの好きだろ」と事あるごとにからかわれること間違いなしだ。


 評価を見るのは放課後になって家に帰るまで待つしかないか。




 というわけで午後の授業も耐えて放課後を迎えた。

 いつもなら慌てて部活に向かう生徒の中、帰宅部の俺は田中とだべってから帰ることが常だった。

 しかし、今日は部活に向かう生徒よりも早く教室を飛び出す。


 一路向かうのは自宅だ。

 少しでも早く知りたかった。

 期待七割、不安三割。

 この世界にない『俺TUEEE』作品、ウケているはずだ……いやでも俺なんかの作品本当に読まれるのか……?

 道中はずっと思考がループしていた。


 帰り着いた玄関で、もどかしくなった俺は靴を蹴飛ばすように脱いで自分の部屋に向かう。


 親から譲り受けたノートパソコンの電源を付けるが立ち上がりは遅く、俺は一日自宅で待機していたスマホに飛びついた。


 そして自分のユーザーページを開いて。


「良かった……」


 最初に飛び込んでくる感想が書かれましたの赤い文字。

 誰かが感想を書きたくなるくらいには面白いと思ってもらえたのだと嬉しくなって。

 どんな内容が書かれているのかと開いた感想ページで、初めての光景を目にした。


「感想ページが……2まである?」


 それはつまり……1ページで収まらないほどの感想が来ているということだ。


『ヒロインを助けるところとか爽快感すごいですね!』

『主人公が最初から最強ってあり得ねーって思ってたけど、見誤ってたわ。面白い!』

『サクサク読めてすぐに最新話までたどり着きました。続きが楽しみです!』


「良かった……『俺TUEEE』はこの世界でも受け入れられてるな」


 他に来ている感想をざっと読んでいく。

 そしてこれだけ感想が来ているなら、と俺は続いて小説情報のページを開く。

 すると。




ブックマーク登録 19件


総合評価 106pt


ポイント評価34pt : 34pt




 この数がどれくらいかというと。


 ポイントが10000超えると書籍化が見えてくるという。


 累計だと一位は40万以上稼いでいる小説ようだ。


 と、考えると106ptとは比べるのもおこがましいほどだろう。


 それでも。




「こんな数字……初めて見た………」


 世界が変わる前、底辺作家だった俺は一年かけた連載で84ptがやっとだった俺からすると。


 それを超えるブクマ、評価ポイントが一日で来ているなんて考えたことも無い事態で。






「しゃああああっ!!!」


 気付くと俺は思わずガッツポーズを天に掲げていた。



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