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11話 構想~二章~

「えー、このろうそくの火に小麦粉をふるい落とすと……」


 本日の四時間目の授業は化学だった。

 いつもの教室から移動して化学室なのは、前で教師が実験をして見せるためだ。

 説明通りに粉が落ちるとろうそくの火が急激に膨れ上がる。


「えーこの現象は空気中に充満した粉状の物体により、酸素が過剰に火と反応した結果で……」

「ようするに粉塵爆発か」


 オタクの基礎知識だ。


「これが噂に聞く粉塵爆発でござるか」


 隣の席の田中も似たような感想で興味深そうに見ている。


 化学室は生徒が実験をすることもある関係で四人掛けの長机となっている。また教室と違って席順も決まっていないため、友達と隣り合って座る生徒がほとんどだ。

 だから俺の隣に田中がいて……何と反対側の隣には女子がいた。


「…………」

 横目でその姿を盗み見る。

 粉塵爆発に興奮している田中や、こうやって授業に関係ない思索をしている俺とは違って真面目な少女。

 愛葉あいばさんはノートに今の実験を観察して気づいたことを書き込んでいるようだ。


 俺と田中の二人が座ってたところに、一言断って友達と二人で隣に座ってきた。授業開始直前だったので、他の席がもう全て埋まっていたのだ。それだけの理由であって、関係性としてはただのクラスメイト以上でも以下でもない。


 今日の授業は教師がする実験を見てノートを取るだけだ。これが生徒も実験をする場合だったら、同じ机の四人一組で協力しないといけないことで意志疎通をする必要があっただろう。

 だが違うということで、ほとんんどいつもの授業と変わらない。ならばすることはいつも通りだ。


 小説の構想を練らないとな。そろそろ一章が終わるし、せめて二章のあらすじは今日の内に決めておきたい。

 この世界初めての『俺TUEEE』小説は順調に人気が出ていた。投稿開始からもう数日経ったが日間ランキングに載っており、現在178位だ。ユーザーページを開く度に感想が書かれましたと通知が来るし、初めてレビューを1件もらった。

 この勢いを途切れさせないようにしないといけない。毎日投稿はしばらく続けるべきだ。帰宅後執筆に集中するためにも、学校にいる間に全体の流れは決めておきたい。


 俺は化学のノートの上に別のノートを広げる。創作用ノートだ。最初は授業用ノートの隅に書いていたが、最近この一冊にまとめるようにした。

 俺の作品『トラックに轢かれて死んだと思ったら、神にチートなスキルを与えられて、異世界に転生した』のあらすじも書いてある。




 一章『始まりの町』編。

 主人公は昔ながらのトラック異世界転生後、魔物に襲われていたところを助けたヒロインから、世界観の説明を受け冒険者ギルドに向かう。

 冒険者登録をしている際に、A級冒険者のパーティーで少女がこき使われていることを注意すると逆ギレされる。

 襲ってきたA級冒険者三人をチートスキルで瞬殺すると、見ていたギルド長からS級認定を受け、S級の特権によりいじめられていた少女を自分のパーティーに迎え入れる。セカンドヒロインだ。

 三人でおつかいやら採取やらのクエストをこなしていると、近くで突然変異により凶暴な魔物が発生。S級の主人公に討伐指令が下る。

 チートスキルによって強化されたヒロインたちと主人公は変異種の魔物と激突。少々苦戦するも、新たな力をお披露目台にして討伐。

 ギルドに帰ると今回の件は魔王の復活が近いことによる魔力の暴走だとギルド長から説明を受ける。いにしえに封印された魔王を復活させようとする一団がこの近くで先日見られたそうだ。

 主人公はS級としてその一団を討つように指令が下り、一団が次に向かったと見られる町へと旅に出た。




「で、二章は…………今のところ、こうか……」




 二章『鉱山町』編。

 魔王復活をもくろむ一団を追って主人公がやってきたのは鉱山町。

 現地のギルドで説明を受けた後、町の武器・防具屋を訪れる。

 ヒロインたちの装備をデートっぽい雰囲気で買っていくが、主人公自身が使う武器が決まらない。

 最後に訪れた寂れた武器屋、頑固な職人が作る業物にピンと来る。

 主人公は自分専用の武器を作るように頼むと、職人は超レアな鉱石が必要なため、持ってくるなら作ってもいいと言う。

 魔物の巣となっている鉱山の奥地にあるその超レアな鉱石を手に入れるため、職人の実の娘とは思えない活発な少女、新たなヒロインを案内役としてパーティーに入れ鉱山の攻略を開始する…………。




「うーん……ちょっと待て」

 そこで手を止める。


 ここ新たなヒロインは職人の娘でいいんだろうか……? 職人の弟子の方がいいか? ヒロインの父親が出てくるのってなんか面倒だしな……絆イベントは親子じゃなくて師弟でも出来るし……よし師弟で良いか。


 つうかそもそも活発な少女も違うか? 他二人のヒロインとキャラが被るしな……でも職人と弟子でキャラの対比はさせたい……あ、なら陽気な職人と冷静な弟子にすればいいのか。鼻歌まじりに業物作るってのもかっこいいしな。そして弟子ヒロインはクーデレにして他と差別化……うん、これでいこう。


 消しゴムを使って修正していくが、スペースが足りなくてきつい。こんなときデリートボタン一発で消せたり、長文を後から挿入するのも楽なパソコンの便利さを実感する。


「っと実験も終わったか」

 集中するとついつい授業中ということを忘れてしまう。今は黒板にさっきまでやっていた実験についてまとめているようだ。

 創作用ノートと化学のノートの上下を入れ替えて、しばらく板書に集中する。あらかた終わったところでまた入れ替えた。




 鉱山を進んでいく四人パーティー。道中の魔物は楽に屠っていくが、地盤が弛んでいたところがあり、弟子ヒロインと助けようとした主人公が落ちてしまう。

 幸いにも命に別状はなく、二手に分かれて奥に向かう。

 弟子ヒロインと二人きりで身の上話を聞いて仲を深めたりしてると奥地に到着。変異種の魔物がいることを確認。

 はぐれたファースト・セカンドヒロインとも合流して四人で討伐。




「あ、ここは弟子ヒロインのおかげで倒せたみたいな感じにしたいな…………よし、粉塵爆発使うか。閉鎖空間で使うとヤバいところは、主人公のチートスキルでフォローで」




 魔物を倒した後、超レアな鉱石を採掘して脱出。主人公専用武器を作ってもらう。

 そして弟子ヒロインが師匠に主人公たちに付いて行きたいと言うと「いいよー」と軽い返事が。

 師匠から「あの子は助けられたことに負い目を感じていてね。自分から何かしたいなんて言ったのは初めてなんだ。頼むよ、主人公」と送られて。

 弟子も「ありがとうございます!」といつになく感傷的で。




「あ、やべ。めっちゃいい感じのドラマじゃん……涙出そう」

 使い古された展開だが、使われるだけの価値はあるということだ。ここは奇をてらう必要もないし、ベタでいいだろう。




 旅立つ主人公たち。

 そして場面は暗転して――舞台は王都。

 魔王復活をもくろむ一団が悪巧みをしている場面で引いて三章に続く……。




「おお……いい感じだ、これ」

 二章のあらすじはこれでいいだろう。後は細かいところを詰めないと。

 創作用ノートにごちゃごちゃと書き込みを追加していく。

 授業中ということも忘れて夢中だった。


 だから気づけなかったのだ。




「………………」

 隣の席の愛葉さんが横目で俺の創作用ノートを覗き込んでいることに。

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