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お気に入りを入れて頂いていた方がいて驚きと嬉しさと。
ありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけると幸いです。
目覚ましってなんでこんな五月蠅いんだろうね。起きれなくなるから五月蠅くないとダメだけども。
ばしっと叩いて3台目の時計を止める。
ばしゃばしゃと顔を洗ってようやくすっきり目が覚めた感じ。
母さんおはよ。あ、今日はご飯なんだ。ばーちゃんが送ってくれたの? それ絶対美味いやつじゃん。いただきます。
美味しい。ばーちゃん毎年ありがとう。
機嫌よく食べてたら妹起床。今日は数字変わってない。27のまま。
おはよ、妹。何? 今日は何も言わないのかって? おはよって言ったじゃん。何変な顔してんの。なんでもない? なんでそんな怒ってるのさ。
思春期って難しい。
学校に着いた。道中? 特に変わりなく数字が浮いてたよ。
いい加減鬱陶しくなってきたけど、どうやったら消えるのかもわからんからどうしようもない。厨二病的に、ふっ……消えろ。とか、やれと? 無理。嫌。誰か助けて。
まあ数字が見えるだけで他には害ないんだけどさ。
ゼロをふよふよと頭の上に乗せてる間中がノーテンキに話しかけてくる。何にやにやしてんの、気持ち悪い。何? 今日の体育? ああ、4時間目だね。違う? 楽しみすぎて寝れなかった? 馬鹿じゃないのか。ああ、もう、うるさいな。三谷、ちょっとコイツあげるわ。……なんでお前もちょっとソワソワしてんのさ。東雲? ああ、涼華がどうかした? 聞いてきてほしい? 何を。4時間目のこと? めんどくさいな。え、購買のミックスサンド奢ってくれる? やだな、三谷、私ら親友だろ。まかせろって。
涼華の席に近づく。
あ、ごめん。邪魔しにきたんじゃないんだよ? 山田も桐谷もどこいくのさ。いいよ、話してたでしょ? たいしたことじゃないから。ってか、一緒に話てもいい? ありがと。
今日暑いね。何の話してたの? 3時間目の英語、昨日の小テスト返ってくるの。マジで。えー、やばい。みんな余裕なの? 涼華はそりゃ余裕だよね。ん、みんなどうしたのさ。なんで急に固まったの。
名前? 名前がどうかした? 涼華? え、うん。友達だから。
うおぉ!? いきおい込んでどうした山田!? ちょ、桐谷も三隈もなんだよ怖ェよ。え、名前で? 別にいいけど。……なんなんだよ、もう。
……涼華、なんで膨れてんのさ。なんでもない? そうか、まあいいけど。ああ、そうだ。4時間目ってさ、うん。体育。どんな感じ? 楽しみ? そっか。暑いもんなー、今日。私? セパレートで下ビキニのやつ。涼華は? 一緒? なんか意外。
チャイムが鳴って席に帰る。
三谷。セパレートビキニだって、涼華。うわあ、ガッツポーズするほどか。見れるかどうかわからんのに。お前らはプールじゃないぞ。だから聞いたんだって? あ、そ。なんか他の聞き耳立ててたヤツらも拳握ってる。涼華大人気。絶対こいつら覗きに来る気がする。
あ、三谷お前ミックスサンド忘れんなよ。
HR開始。いつも通り、なんてなく終了。
ちゃんと覚えてないけど、なんか1つほど数字が増えてるやつがいる気がする。
涼華? ついに400突破してたよ。401だって。だからなんの数字なのか。
あっという間に3時間目まで終了。
小テスト? ヤマあたって44点。あ、50点満点だから。ふふん。間中赤点だったの。どんまい。凹んでるとこ悪いけど次体育だから早くしろよ。うわ、復活早ェ。プールが俺を呼んでるって呼んでねえよ馬鹿。男子はグラウンドでサッカーだろ。
阿呆は放っておいて更衣室へ。
あのテルテル坊主みたいになるやつってなんていうんだろね。まあ誰も使ってないんだけど。小学生くらいまでだよね、ああいうの使うの。
手早く着替える。
この学校、校則緩いから普通にビキニとか許されてる。推奨はスク水か競泳水着かセパレートだけど。派手じゃなきゃいいんだって。派手じゃないビキニってあんのかっていう。まあ、授業っていうかもう遊びみたいなもんだよね。ん? ああ、涼華も着替えたの。なんでちょっと残念そうにしてんの? してない。そう。
水着買ったんだ? へえ、新作。うん、可愛いよ。似合ってる。私? うん、新しいの買ったけど。似合ってる? ありがと。って、うわっ!? 急に後ろから揉むんじゃねえよ茜! いや、お前の方がでかいだろ。あ、くそっ 逃げ足だけは早いな。
……凉華? うつむいてどうした? なんでもない? でも……あ、うん。わかった。気にしないけど、気分悪いなら言ってよ?
更衣室から出る。
うっわ、コンクリあっつい! 早くプールサイド行かなきゃ火傷するわマジで。
ささっとプールサイドへ。仁王立ちで頭の上にゼロを浮かべた橘センセイが待ってた。似合うね、センセイ。ああ、うん、褒めてる褒めてる。美人美人。テキトーじゃないって。気のせい。
ぐるっと見渡してみる。
結構ビキニの子いるなあ。派手系の子はビキニが多い。スク水はさすがにいない。そりゃそうだわな。競泳水着は水泳部の子たちくらい。まあわざわざ競泳水着買わないよなぁ。
フェンスの向こう側にちらっと数字が見えた。……サッカーやれよ、お前ら。私以外は気づいてない感じ。数字見えなかったら私も気づかなかったな。とりあえず橘センセイに告げ口。センセー、フェンス下に男子いるよー。マジマジ。バケツに水入れてもってこい? アイサー。
ずぶ濡れになって鬼ゴリ……橋本センセに連行されていった。阿呆だな。
授業開始。
今日は基本的には自由だそうな。ありがたいけど。準備運動終わったら率先して7コースと8コースは橘センセイと水泳部の子のコースになった。本気で泳いでらっしゃる。センセイは監督しようよ。
呆れてみてたら涼華がこっちに来た。ん、一緒に? いいよ、勿論。茜と優子も一緒? オッケー。茜、お前さっきはよくもやってくれたな。減るもんじゃないって、そりゃ減らないけど。やられたらやり返す! でっか。手からはみ出るけど! うわ、自慢げ。え、何? Gカップ!? そりゃでかいわ。
優子はなんで無言で睨んできてるのか。目が怖い目が怖い。何食べたらって、茜に聞きなよ。参考にならない? 私なら手が届くかも? やかましいわ。
で、涼華はじっと自分の胸みて何考えてるの。大きい方が好き? いや、普通が一番じゃない? 大きすぎると服買うの大変だしさ。ブラも可愛いのなくなる……そうじゃなくて? え、あ! ……えーっと……それこそこだわりはない、かな。うん。
変な汗かいた。
あ、ビーチ板で阿呆なことやってる子たちがいる。平和だねえ。忍者忍者って聞こえる。小学生男子か。女子だけになるとわりと開けっぴろげ。そんなもんか。女子高だった隣の姉ちゃんも言ってたな。女子だけだと羞恥心とかなくなるって。
誰だよ水鉄砲とか持ってきたヤツ。しかもそれ本気のヤツじゃん。茜だったよ。撃つな撃つな! てめ、このやろ、そこに直れ!
怒られた。
見てないようで見てるのな、橘センセ。だから競泳水着で仁王立ちやめてって。あ、はい、ごめんなさい。反省してます。だから遊ばせてください、暑いし。私も暑い? ですよね。茜も謝れって。プールサイドで説教マジつらい。
許してもらってプールへ帰還。
暑かった。プールの水もそんなに冷たくないんだろうけど、炎天下にさらされてたプールサイドからだとホント冷たく感じる。怒られない程度にはしゃぎましょう。
ばしゃばしゃと潜ったり7コースの自由形競争に乗り込んだりなぜかビーチボールは許されたからみんなで遊んだり。やー、いいね、プール。学校のプールとか正直あんま気乗りしてなかったけど楽しい。
ちょっと疲れたので休憩。端っこで見渡す。あ、涼華も休憩? うん、疲れたねー。5時間目寝そう? 涼華で寝そうなら私は確実に寝るな。5時間目なんだっけ? 化学? うわ、ダメなやつだわ。
なんでもない会話しながら笑い合う。相変わらず涼華は美人。水も滴るいい女を地で行ってる。残念だったな、クラスの男子ども。サッカーで清らかな汗を流して頑張るといいよ。だからまたチラっと目に入ったフェンスの向こうに浮いてる数字の主たちは排除しよう。橋本の目を逃れたのだけは評価してやるが。
ちょっと待っててね、涼華。うん、ちょっとね、バケツに水汲むことになるから。手伝う? うーん……涼華が見つかったらあいつら本懐を成し遂げちゃうことになるからな……。あいつらって誰かって? ああ、男子ども。誰かはわからんけど。えっと、ちらっと見えたのよ。橘センセに言ってくるから、うん。大丈夫大丈夫。私? 私なんかの見たいやついないって。平気平気…………え、ちょっ! 涼華! 近い近い近い!
「奏ちゃんは自分の魅力わかってない! 奏ちゃんの水着姿見たくない人なんていないから!」
「わ、わかったから落ち着け涼華。肩紐掴むな」
「あたしなんて今日学校にすら奏ちゃんを見るためだけに来たようなも」
「落ち着け!?」
危ねえ! 涼華は興奮するとわりと暴走しがちなことが判明。昨日すでに判明してた気はするけど。
すごい勢いで失言しそうになった涼華の口を右手で塞ぐ。もごもご言ってるけど、落ち着いてから喋って。でないとたぶん我に返って凹むから。涼華が。
きょろきょろと辺りを見渡す。端に離れて休憩してたし、みんな遊びまくりで騒がしいから誰にも聞かれてなかった様子。セーフ。あのまま放っておいたらたぶん昨日レベルの暴走する気がしたんだよね……。ふっとため息を吐く。ぺしぺしとすごい勢いで両腕をタップされた。そんな叩かなくても落ち着いたら離す………………涼華、顔真っ赤なんだけど。え、もしかして息出来なかった? ふるふると首振る素振り。胸元を指差される。……oh。だから肩紐掴むなとあれほど。
さすがにちょっと恥ずかしかったので、手早く解けた紐を結びなおす。確かに首の後ろで結んでるだけだから解けやすかったけど。肩から手を放したときに引っかかったんだろうね。まあ、幸い見られたのは目の前にいた涼華だけだし…………あ、だめだ。真っ赤だわ、涼華。
「あの、涼華……」
「ご、ごめんなさい! わざ、わざとじゃないの! そりゃ見たいか見たくないかで言えばすっごく見たかったしむしろありがとうございますっていう感じだし着替え見れなかったからポロリとかないかなーとかチラっとは考えたけどってそうじゃなくて、あの! 本当にわざとじゃないの! おっぱい柔らかそうとか乳首ピンクで可愛いとかそんなこと思ってな――――――」
「頼むから落ち着いて!?」
ここまで墓穴掘ると逆に面白いよ!?
とりあえずもう一回口を塞がせてもらった。落ち着こう、お願い、お互いのためにも。
覗き排除するつもりなだけだったんだけどな……まあ、もういいか。裸見られるわけじゃないし、水着姿見られるくらい許容範囲としよう。涼華はプールん中だから見えないだろうし。とりあえず橘センセーに合図だけ送っとこう。橘センセーに呼びかけ。左手でひらひらとフェンスを指差す。こんなんで通じるかな。フェンス、下、確認願う。……通じると思わんかった。バケツ持ってきたわ橘ちゃん。炎天下にさらされてお湯になってるから熱いだろうな。かけられる側。どんまい。
バシャッという勢いのいい音と、あっづい! と叫ぶ声と、橘ちゃんと橋本センセの怒声が響き渡ったところで予鈴が鳴った。
あー……なんか疲れた。色んな意味で。
ヒロインむっつり。