14 ―― side涼華
FGOフェスチケットが当たりました。真剣に嬉しすぎました。
あとはイベントに本気出す!去年も本気でしたけど。
水着頼光さんはいつですかね?
部活が終わって家に帰って、お風呂からあがると携帯がチカチカと光ってLIMEの通知を知らせていた。
慌てて開くとやっぱり奏ちゃんからで、夜電話しようって言ってたけど時間大丈夫? っていう内容だった。
勿論一も二もなく了承して、ドキドキしながら通話ボタンを押す。
すぐに繋がって、大好きな人の声が耳元から聞こえてきた。
なんでもないことなんだけど、こんなやりとりが凄く嬉しくて幸せ。
勇気出して告白してよかったなって、今だからこそ強く思う。
しばらくテレビのこととか部活のこととか話してて、今日の放課後の話題に話が移った時に奏ちゃんが、そうだ。と言ってあたしが部活中にあったことを話してくれた。
『そんなわけでごめん。間中にバレてた』
「え、あの……間中君凄いね……」
本当に、その、色んな意味で。
奏ちゃんの様子からアタリを付けたにしても、あたしと奏ちゃんが付き合い始めたのは最近っていうかむしろ今日だし、……奏ちゃんは良くも悪くも男女分け隔てなく人タラシだからそういう意味で区別がついたのは凄いと思う。
それだけじゃなく、出来た恋人が彼女だということに気が付いたのも、なんていうか奏ちゃんのことしっかり見てるんだなって。
先に彼女が出来て悔しい、とかそんな言葉だけで全面的に奏ちゃんを肯定してる。
異常だと責め立てるわけでも、変に気を使うわけでもない。なんてことのない普通を羨ましがって褒めている。
うう……やっぱり間中君ずるい。あたしの知らない奏ちゃんのこといっぱい知ってるんだろうし、凄く人間が出来てる。
よく奏ちゃんと間中君は付き合ったりしなかったなぁ。お互いがお互いを凄く理解しあってるのに。
『アイツ昔から変なとこ聡いんだよね。あ、でも涼華だってのはバレてなかった』
「そうなんだ。なんか間中君なら誰なのかまでわかってそうなのに」
『流石にそこまでじゃないって。あー、でももし涼華がいいなら間中には言っとこうかなって思うんだけど……どう? モチロン、嫌なら絶対言わないから正直なとこ教えて?』
奏ちゃんのそのセリフに少し考えてしまった。
間中君はたぶん、ううん。絶対に、奏ちゃんの彼女があたしでも言いふらしたりはしないと思う。
あたしは間中君のことはあまり知らないけど、奏ちゃんが間中君のことを信頼してるのはよくわかるから、きっと祝福してくれる。
報告したら間中君、奏ちゃんを揶揄ったりとかするのかな。……あ、奏ちゃんが照れたりするなら見てみたいかも。
『涼華? おーい。やっぱ嫌? 別に言わなきゃなんないわけじゃないから』
「あ、違うの。間中君は奏ちゃんの親友だものね。あたしからも間中君に言っておきたいな」
『え? 涼華が間中に?』
ごめんなさい、間中君。ちょっとヤキモチ妬いたりして。奏ちゃんと仲いいの羨ましいんだもん。
わかってるんだよ。奏ちゃんが間中君を、間中君が奏ちゃんをそういう目で見てないってことは。
でも、なんていうか、奏ちゃんが好きなのはあたしなんだよって、言いたいっていうか……一番奏ちゃんのことを知ってる親友は間中君かもしれないけど、あたしもこれからは奏ちゃんのこともっと知っていくんだよって主張したいっていうか。
奏ちゃんをあたしに下さいって言うわけじゃないけど、あっでもそういうことになるのかな。
うー……顔が熱い。
ぱたぱたと手で顔を仰ぐ。
あたしがそういうと奏ちゃんはなぜかびっくりしたような声を出した後、少し口籠った。
『涼華からもかー…………あー……そっかー……。えー……っと……』
「……な、何かダメだった……?」
『いや、全然ダメじゃない。うん、大丈夫。真実は時として物凄く残酷だってだけ』
「……? どういう」
『なんでもないよ。ああ、そうだ。そういえばさ、涼華』
電話口で奏ちゃんが何か考えている風だったけど、ささっと思考を切り替えたらしく、話題が次へ移る。
とりあえず間中君に報告するときはふたりですることには異存はないみたい。
ちょっとドキドキするけど、うん、大丈夫。
なあに、と奏ちゃんに返事を返すと、奏ちゃんがあたしにとっての爆弾をさらっと落としてくれた。
『屋上で数字のこと話してた時顔色悪かった気がしたんだけど、平気だったの?』
たぶん、このときのあたしの顔を誰かが見てたら一瞬で真っ青になって真っ赤になるっていう凄い現象を目の当たりに出来たと思う。
「だだだ、だだ、だい、大丈夫!! ほんとに!! 全然、なんでもなかったから!!」
『え、あ、お、おう!? 落ち着いて!? 明らかになんでもなくなさそうだけどまず落ち着け!?』
「ちょっとなんていうか答えみたいなものが見えた気がしたんだけどちょっと確証持てないっていうかもうちょっと検証してから報告したいっていうか出来たら勘違いだったらいいなとは思ってるんだけど隠し立てするつもりじゃなくて絶対奏ちゃんには言うんだけど心の準備も必要でもしあたしの考えが当たってたらあたし」
『全然落ち着けてないね!? 涼華! とりあえず深呼吸して深呼吸! っていうか、ノンストップでそれだけ言うの凄いな!?』
慌てたように言う奏ちゃんに、はっとして深呼吸する。
いけない、ちょっと暴走しちゃった。完全にちょっとじゃなかったけど。だ、だって、その、もしあたしの想定が当たってたとしたら……は、恥ずかしすぎて……!
でも思い当たる節があるというか、そう考えると完全に腑に落ちてしまう。
奏ちゃんは幸いまだ全然推測もしていないみたいなんだけど、……この考えをいうの勇気がいるという、か……っ
『あー……えっとさ、あんま深刻に考えすぎなくていいからね? 私はこんな数字が見えるとかいうの信じてくれただけでもわりと救われてるし』
「考えるよ! だって好きな人の力になりたいもん!」
頭の中で真っ赤になったり真っ青になったりして、落ち着こうとしていたら、電話の向こう側から申し訳なさそうな奏ちゃんの声が聞こえてきた。
別の意味でさあっと血の気が引いて、慌てて奏ちゃんに叫ぶ。だって、あたしは相談されて嬉しかった。
奏ちゃんがあたしに頼ってくれたの、不謹慎かもしれないけど凄く嬉しかったんだもん。
あたしの勢いにびっくりしたのか、電話の向こうだから奏ちゃんの顔は見えないけど、ふふっと笑ったように聞こえた。
『ありがと、涼華。じゃあ、期待してる』
「う、うん! あの、もうちょっと、確信が持てたらすぐに言うね!」
恥ずかしいけど。死ぬほど恥ずかしいけど! もしかしたら奏ちゃんが数字の意味を知れば見えなくなるかもしれないし!
あたしの勘違いの可能性もあるし悲観しすぎるのもよくない。
……9割方間違いない気はしてるけど……。確信が持てちゃったら……奏ちゃんには…………し、正直に言おう。
『私も考えてるんだけどサッパリわかんないんだわ。涼華はアタリついてんだね。さすがだなー』
「もしかしたら、違うかもしれないけど……あの」
『別に違ってもいいって。一緒に考えてくれてありがとな』
あたしの彼女が本当にカッコよくて大好きです。
だ、大丈夫。奏ちゃんはどんな答えでもきっと真剣に聞いてくれる。引かれない。
『うわ、すごい長話しちゃったな。私、風呂行かないと』
「あ、お風呂まだだったんだ。ふふ、いってらっしゃい」
『ん。そんじゃまたLIMEするな』
「うん、それじゃまたね!」
電話が切れたのを確認して、ぽふっとベッドに倒れこむ。
お風呂……奏ちゃん、お風呂かー……。
顔が真っ赤になってくのが自分でもわかる。
大義名分……確認……。頭の中をそんな言葉がぐるぐるまわる。
「あぅ……」
うう……ごめんなさい、奏ちゃん。
これで数字が増えてたら、たぶん確定、です。
布団に潜って声を押し殺す。
数字……増えてるって言われたら……頑張って言うから。
奏ちゃんのこと考えて、ひとりでしちゃった数が、浮かんでるんだと思う……って。
涼華視点でした。
閑話あわせて16話目でようやく数字の意味が話中で推測浮上。
ヒロインはえろいん(笑)




