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8.昼休みは修羅場

また書き上げられたので、載せます。


 


 何処かの塔。そこへ一体のワイバーンが入っていった。顔が見えない暗い部屋にて、二つの影があった。


「む、帰ってきたか?」

「魔術を付属させる魔術は成功したが、下級種では使うタイミングがわからないみたいだな」


 ワイバーンと違って、身体が大きくて会話が出来る知能を持っている二体の竜が喋っていた。魔術を付属させたワイバーンを送り出したのは、この二体である。


「何処へ送ったんだっけ?」

「おいおい、日本と言う小さな島国だろう。強い奴がいないと、送り出したのはお前だろ」

「そうだったか? 興味もない場所なんて覚えてないな。ワイバーンには弱そうな国へ行けと命令しただけだ」


 竜が言う強い奴とは、上級種の魂を使ったフォース使いのことであり、竜は中級種を使って、情報を集めることがあるからそれぐらいの情報は掴んでいる。


「島国を住処にする竜王は何を考えのことか?」

「わからんな。竜王は常に何か考えていて、私達には及び付かないことを思考しているだろう。今は、我が主となる竜王ゼクトール様が目覚めるのを待つだけだ」


 この竜は竜王ゼクトールの配下にいて、目覚めるまで待っているのだ。あの紅い月を持ってきたことに、竜王達は体力と精神を消耗していることにより、永い眠りに落ちている。


「まだ竜王ゼクトール様は目覚めなさそうだし、ワイバーンをボロボロにした所へ中級種を送り出さないか?」

「それは面白そうだな。日本と言う島国が中級種にどれだけやれるか見てみたいしな」


 中級種を送り出せるぐらいの権威と実力を持つ二体の竜は間違いなく、上級種である。この上級種が中級種を日本へ送り出すのは、ただのゲームである。中級種が勝つか、人間が勝つか決まるだけのゲームで、竜王が目覚めるまでの暇潰しをするのだ。


「誰を送り出す? 中級種ぐらいなら、いなくなっても問題はないしな」

「ふむ、『イゾルデ』を送りこもうか?」

「ふはっ、『イゾルデ』をか! こりゃ、人間に勝ち目はないわな!!」


 上級種の竜は中級種の『イゾルデ』が行けば、人間は勝ち目がないと確信しているようだ。


「上級種に近いと言われている『イゾルデ』相手に、人間はどれだけやってくれるだろうなーーーー」




 ーーーーーーーーーーーーーーーー




 東ノ国


 暁達が通っている学校にて、昼休みのチャイムが鳴る。

 社会科見学が終わった翌日、暁が無事だったことから普通に授業が始まっていた。賀野先生は右腕を骨折していたが、いつも通りに学校へ来ていたので驚いたものだ。三角巾をぶら下げてだ。

 昼休みになり、皆はお弁当を食べる人か学食へ向かう人に別れる。暁はいつもなら学食へ向かうのだが、今日はいつもと違った。


「石神君! 一緒に昼を食べませんか!?」

「ん、遠野も学食に?」

「い、いえ……。お、お弁当を作ってきたので、食べてくれますか!?」


 遠野は二つのお弁当箱を持ってきており、一つは暁のために作ってきた物である。まだ教室に残っていた生徒達がその展開に注目を集める。一緒に学食へ行こうとした武藤は「やるな。俺は学食に行くからな」と言って教室から出て行った。


「まぁ、折角作って貰ったんだし、有り難く受け取るよ」

「良かった!!」


 遠野は嬉しそうに暁の机へ向かう。向かい側にある机を借りて、合わせていた。そこへもう一つの机をぶつけるように合わせた者がいた。その者とはーーーー


「私も一緒に食べさせて頂きますね」

「…………どうぞ」


 遠野は納得いかない様子だったが、断ると暁への印象が悪くなると考えて、渋々と了承したのだった。


「あ、守がそっちに行くなら一緒でいいかな?」

「まぁ、構わねぇよ」


 高嶺も暁から許可を貰って、机が四つ合わせた形になった。男子が一人に女子が三人になり、普通なら一人だけの男子は居にくいと感じるかもしれないが、暁はそんなことない。眠そうな顔で自分の席へ向かう。


「ど、どうぞ!!」

「い、いえ! これは私が食べますので、暁君は私のを食べてください!」


 案の定に守は遠野の邪魔をしようとする。守は遠野が暁へ好意を持っていることをわかっているので、幼馴染みを取られたくない守は邪魔をするのだ。


「なんで、邪魔をするの!!」

「いえ、暁君にわからない物を食べさせるにはーーーーいた!?」

「こら、折角遠野が俺の為に作ってくれたんだから、それをわからない物とかは失礼だろ?」


 暁は守がすることを見かねたのか、チョップを頭へ落として注意していた。


「うちの馬鹿幼馴染みが悪かったな」

「いえ! 庇ってくれて、ありがとう……」

「今のは守ちゃんが悪いね~」


 高嶺から見ても、守が悪いのでチョップが落ちても仕方がないと思えた。チョップを落とされた守はプクーと頬を膨らませた。遠野は庇ってくれたことに頬を赤くして、嬉しそうにしていた。


「お、サンドイッチにサラダか」

「は、はい」


 シンプルな作りだが、シンプルなだけに失敗する確率は少ない。中身はハム&チーズ、カツ&レタス、タマゴの二セットずつだった。

 変なものは入れていなくて、見た目は綺麗で美味しそうだった。それを口へ持って行き、咀嚼する。


「うん、美味い!」

「良かった!! もし、足りなかったら言ってくださいね。私の分から取っていいので」

「いや、それだと遠野の食事が少なくなるだろ? 今日は体育もないからこれくらいで充分だよ」

「そうですか! …………体育がある日はもう少し量を増やせばいいのですね」


 小さな声で、脳内へメモを残していた。その声が隣にいたから聞こえていた高嶺は本気だなーと感心するのだった。

 まぁ、昨日の活躍を見れば惚れても仕方がないなーと思っている。高嶺も惚れそうだったが、守と対立したくはなかったから、立ち止まることが出来たのだ。それだけではなく、遠野のアタックが凄いこともありそうだが…………


「あ、あの!」

「ん、なんだい?」

「わ、私のことを杏里と呼んでくれませんか!? あと、私も暁君と呼んでいいですか……?」


 おっと、あっという間に踏み込んできたよ。幼馴染みの守はどうでるんだろ? 向かい側に座っている守の様子を伺っていたらーーーー




 顔は笑顔だが、手に持っている箸が折れているーー!?




 それどころか、粉々に砕いていそうな雰囲気で高嶺は眼を逸らすしか出来なかった。隣にいる暁はそれに気付かずに、軽い気持ちで了承していた。


「構わないぞ。好きなのように呼びな」

「は、はい! あ、暁君……」

「おう、杏里。これでいいか?」


 幸せな表情になり、杏里はそれを隠そうとしていなかった。その表情を見た暁はそんなに嬉しいことなのか? と疑問を浮かんでいたが、気にしないでサンドイッチを摘んでいた。と、その時に守が授業でもないのに、手を上げていた。


「意義ありーー!! 出会ったばかりの友達がいきなり、下の名前で呼び合うのは早すぎると思います!!」

「ま、また貴女は邪魔を!! 貴女も下の名前で呼んでいるのではありませんか!?」

「私は出会って長いので、もう名前を呼び合っても問題はありません!! 貴女が暁君と呼ぶには三年早すぎます!!」

「なっ、それは卒業しているのではないですかーー!!」


 二人は食事を放って、言い合いをしていた。暁は介入するのも馬鹿馬鹿しいと思って、放置しようとしたが、高嶺が涙目でこっちを見ていることに気付いた。

 溜息を吐きたくなる暁だったが、この状況では食事を美味しく食べられないだろう。暁は椅子から立ち上がって、下から見下ろすようにする。


「おい、食事中は静かにしろ。親に習わなかったか?」

「「うっ……」」


 暁が目を細めて、注意すると言い合う二人は黙った。目を細めて下から見下ろされると、普段よりも怖いと聞いているので実行したら黙ってくれた。威圧はこれぐらいでいいだろうと、椅子に座りなおして説教を続ける。


「まず、悪いのは守だな」

「なっ!」

「そうだろ、名前で呼んでいいと許可を与えたのは俺だ。それを引っ掻き回したのは誰だ?」

「は、はい……私です……。ごめんなさい……」


 守は暁が本気で怒ると怖いので、そうなる前に謝るのが一番であるのを知っている。


「次に杏里」

「は、はい!」

「売り言葉に買い言葉をしてどうする? 自分が正しいと思っているなら、余裕を持てよ」

「………………そうでしたね。ごめんなさい」


 杏里は別に間違ったことをしてないのだから、喧嘩は買わないで無視すれば良かったのだ。二人は謝ったので、もう喧嘩するなよと、少し笑みを浮かべて頭を撫でてやるのだった。

 怒られていたはずの二人は暁に笑みを浮かべて撫でられたため、顔を赤くしていた。




「女の扱い上手っ……」




 修羅場な様子を黙って見ていた高嶺はそう漏らしていた。小さな声だったから、誰にも聞こえていなかった。


 さらに、見ていた人達はその手腕に感心して、クラスメイトの中で修羅場を収めた男として伝説が残るのだった…………






修羅場を書くのは少し難しいですね。

修羅場の収め方もこれで良かったかわかりませんが、楽しめたなら良かったと思います。


続きは多分、0時に載せるかと思います。

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