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7.帰還

ファンタジーランキングを見たら、いきなり48位に入っていて驚きました。ブックマークして頂いた方と評価して頂いた方、ありがとうございます。

今後も読んで頂ける人が増えてくれると嬉しいです。


では、続きをどうぞ!

 


 ステラが事前に準備してあった”転移”の魔術を使い、暁が落ちた崖の近くへ戻ることが出来た。転移する際に、誰もいなかったのは良かった。もし、誰かに見られたら説明が面倒臭いからだ。


 ちなみに、フォースの名前と能力は決めており、ステラが感心する程の使いやすい能力を持った武器が出来たのだ。

 暁は元から竜へ対応するために、身体を鍛え、技も編み出したりしている。螺旋を使った技も一例である。それらを生かせる能力を創り出したのだ。


「しかし、どうやって誤魔化するか……。この力のことはまだ隠しておきたいし」

 ”ふむ? 知られると不都合があるのか?”

「一番の理由は、証拠が武器一つだけでは心許ないな。竜王の幽霊に出会ったなんて、誰も信じてくれないだろ?」


 生き残ったのはステラのお陰だが、説明するには状況証拠が『フォース』という武器しかない。いや、それだけでは足りないかもしれない。


 ”成る程、我が皆に姿を見せることが出来れば解決だが、それは不可能だな。盟約を結んだ暁にしか見えん”

「だよな。実は八体目の竜王がいましたなんて、益々信じてくれなそうだから隠した方がマシだ」


 だから、ステラのことは話さずに運良く生きて帰れましたと通すつもりだ。


(皆は俺が死んだと思っているよな。どんな顔をして、帰ればいいんだ……)


 門へ着くまで、暁は考え込んでいた。門前で待機していた菊地や狭間に驚かれたのは別の話である。




 ーーーーーーーーーーーーーーーー




「落ち着いた?」

「…………うん」


 ここは駐車場に停めてあるバスの中。先生がまだ気絶から起きないので待機となっている。

 バスの中は雰囲気が暗くなっており、泣き続けていた遠野は暗い顔で俯いている。

 守も暁が死んだなんて信じられなくて、「まだ生きているはず!!」と叫び、現場へ向かおうとしていた。だが、梶谷が頬を引っ叩いて「まだ生きていると信じているなら、そいつが帰ってくるのを大人しく待ちな!!」と怒鳴ってくれたことで、守は少し冷静になれたのだ。


 体力を消耗している生徒をバスで大人しくさせて、梶谷は自分の部隊を訓練所から率いて、捜索を始めることにした。菊地と狭間も参加しようとしたが、ワイバーンとの戦いで思ったより消耗していたので、門前で待機することに。


「守はまだ生きていると信じているのね……」

「うん、信じているの。暁君があっさりと死ぬなんて、想像は出来ない」

「そう……」


 守は未だにも、暁の無事を信じている。慰めていた高嶺は落ちてゆく姿を見ただけに、生きているとは思えなかったのだ。


「暁君はね、学校から帰って、すぐにトレーニングをするから遊んでくれないし、剣を持って変な踊りをするし……」

「変な踊りって…………、もしかして、回る奴だよね?」


 熊の竜もどきとの戦いを思い出して、回りながら攻撃する奴があったなーと苦笑しそうになった。


「うん。クルクルと回っていて何をしているんだろうと考えてもわからなかったの」

「あの暁がねーーーーーーーーえ?」


 急に高嶺の声が止まったが、守は俯いていたため、まだ気付かない。


「変な踊りをする暇があったら、私と一緒に遊べばいいのに」

「ふーん、変な目で見てくるなと思ったら、変な踊りだと思われていたんだな」


 守は返事に疑問を感じることもなく、話が続く。


「うん、クルクル回る奴、意味わからないもん。聞いても教えてくれないし。そんな暇があれば、一緒に遊びたいのに」

「一応、俺達は高校生だよな? かくれんぼや缶蹴りをやろうと言うから、一緒に遊ばないだけだ」

「そんな!! かくれんぼや缶蹴りは楽しいーーーーーーーーーえ?」

「お断りだ」


 ようやく顔を上げたことで、目の前に暁が立っていることに気付いたのだ。周りにいるクラスメイトも驚いていたが、生きているとは思っていなかったようで声が出ない。

 その空気の中、暁はいつも通りで守の隣に座って、んーーと背伸びをしていた。


「あ、暁君!? 生きていたの!?」

「あん? 見りゃわかるだろ?」

「ちょっ待てよ! 普通に入ってきて普通に背伸びをしている場合かよ!? どうやって生きて帰った!?」


 武藤が質問した内容を皆も知りたいようで、頷いていた。


「簡単なことだ。熊で落下の衝撃を和らげ、崖はクライミングをして登って帰っただけ。終わり」

「短っ!?」

「あの崖から落ちて、無傷って……、どれだけ鍛えれば出来るのよ……」


 無茶苦茶な帰還方法で武藤と高嶺は呆れていた。だが、喜ばしいことである。死んだはずのクラスメイトが生きていたのだ。

 バスの空気が明るくなったのを感じられた。


「え、あ、暁君……生きていた……」

「そうだ。傷一つもない」

「ふぇぇぇ、うわぁぁぁぁぁーーーーん!!」


 守の涙腺が決壊し、暁へ抱きつこうとしていた所にーーーー




 横から邪魔が入った。




「石神君!! 無事だったのね!?」

「うぉっ!?」


 先に抱きついていたのは、さっきまで生きていることに呆然していた遠野だった。ようやく現実に理解が追いついて、脇目を振らずに暁へ飛び付いたわけだ。

 遠野に抱きつかれたせいで、暁は椅子の奥まで押されていた。そのせいで、抱きつこうとした守は誰もいない場所で腕を交差しているとこだった。何処からか「うわっ……」と哀れむ声が聞こえた。これは恥ずかしいと…………


「石神君!! 石神君!!」

「こらこら、顔を制服に当てるなよ。制服は泥だらけだし、遠野の顔が汚れているんじゃないか」

「んーー」


 遠野の顔は制服に付いた泥のせいで少し汚れていた。ポケットにあったハンカチを取り出し、拭いてやる。遠野はされるままになっていて、嬉しそうだった。


「よし、綺麗になったぞ」

「あ、ありがとう……」


 また頭を撫でたことで、遠野は顔を赤くして、少しぼぅっとしていた。皆はこの展開にハラハラしていた。近くにいた高嶺は面白いネタを手に入れた! と目を光らせ、武藤は「また鈍感野郎が……」と呆れていた。そして、この時が来た。


「わ、私が抱きつくとこだったのに!! 感動的な場面を邪魔しないでよ!?」


 守は既に涙は止まっており、怒りの一心だった。だが、遠野はなんで? というように、暁に抱きついたまま顔を傾けていた。


「え? 橘さんは石神君の幼馴染みだよね?」

「そうよ! それが何!?」

「なら、付き合ってないよね。問題はないのに、怒鳴るなんておかしいよね?」

「つ、付き合ってないけど、ここは幼馴染みが一番先に感動的な場面を演出が常識でしょ!?」

「そんな常識は知らないー」


 遠野は守を無視して、暁の胸へ頬擦りを始めていた。


「ちょっ! 暁君もされるままにしていないで、止めさせなさいよ!!」

「ふぁ~、説得するの面倒だ。眠いから寝るわ。遠野、寝るのを邪魔しないなら勝手にしな」

「はい!!」

「暁君!?」


 寝るのを邪魔しないなら、胸へ頬擦りは許すと暁は言っているのだ。暁に許された遠野は嬉しそうに静かに胸へ頬を寄せるだけにしていた。知らない人が見ると、恋人のように見えるだろう。


「ぷくーーーー!」


 守も遠野とは別に、暁の隣へ座って制服を摘むだけにしていた。それだけで、修羅場だと見ればわかるような景色だった。武藤は「これだけしても、暁の奴は無自覚だよな……」と考えたりしていた。




 眼を瞑っていて、意識だけの世界になった。そこに、ステラから念話が来た。


 ”ふふっ……、モテるんだな”

(は? なんで?)

 ”ーーえ!? こ、これだけの修羅場を見て、その言葉とは!?”

(修羅場? ただ遠野に懐かれて、守は幼馴染みを取られたくないだけだったような……)


 声を出さずに、暁もステラと繋がっているのを感じてから思考すれば、念話みたいなことも出来るようになったのだが、ステラは暁の鈍感さに驚愕していた。


 ”…………気付かないとは、小娘達は苦労するんだろうな”

(は? 何言っているんだ?)

 ”いや、なんでもない。さっさと寝とけ”

(まぁ、流石に疲れたから寝るけどな)


 話を打ち切り、暁は体力と精神を回復させるために意識を消してゆく…………






恋愛も少し出てきましたね。

竜王と盟約を結びましたが、1章はまだ続きます。


では、続きをお楽しみにしてくれると嬉しいです!!

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