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61.『タラテクトフラッグ』④

はい、いつもよりちょっとだけ長いかも?

では、続きをどうぞ!



 ハオランが憤怒の表情で仲間がいる場所へ向かっているなかーーーーーー




 荒れに荒れた、森の中にて。激しい戦いがあったという跡が残される中で立っている者が複数人はいた。その中で梨華は肩に槍を乗せ、空中からつまらなそうな顔で見下ろしていた。




「ふん、つまらない戦いだったな」


 そう呟いた梨華だったが、その声を拾った者が近づいて、ニコニコと笑みを浮かべーーー


「仕方がないかと思いますよ。何せ……」




 ここには中国チーム以外の、各エース級が集まっていますので。





 イギリスチームのリーダー、アーノルドの右腕である冷たい微笑を浮かべる青年、ヨルドがそう言うのと同時にドーリーは舌打ちをしていた。


「卑怯なことをやらせると輝くな。お前らは」

「おや、そんなに誉めないで下さいよ」

「誉めてねぇよ!」


 この場には同盟を組んだ4人のメンバーが立っており、先程まで戦っていた中国チームはクモの巣に絡まれて動けない状況になっていた。手を動かせないため、ハオランへ連絡もできなくなっていた。


「くそ! 一つの国に全ての国が組んで囲むとは、お前らに恥はないのか!?」

「おやおや、負け犬がほざいていますね?」

「貴様!」

「そうそう、恥はないかでしたね。もちろん、勝つためにやったのですから、恥はありませんね。ふふっ……」

「それはお前だけだろ……はぁっ、案に乗るべきではなかったか?」


 このゲームでの、エース級が組み、ハオラン以外の中国メンバーをボコると言う作戦。この作戦を提案したのは、イギリスチームのヨルドであり、厄介なハオランの一人勝ちを防ぐために、皆はひとまず一時的に同盟を組むことにしたのだ。

 梨華も遊撃で動いていた時に、突然に気配を感じさせないまま後ろから現れたヨルドに出会っていた。もし、フラッグを取りに来ていたならば、梨華は半々の確率で奪われていた可能性があった。今回は突出すぎているハオランを止める為に、話をしただけだったので戦いは起こらなかった。

 後から知ったことだが、他の皆も同じような現れかたで、皆を驚かしていたようだ。


「それは傲慢じゃない? 戦いはつまらなかったけど、中国をこのまま放っておけば、間違いなく中国は1位独走だった筈よ。勝ちたいなら、ルール違反に接触しない程度に何でもやるべきよ」

「それは……そうだが……」


 ドーリーは梨華の言葉を頭では理解しているが、感情は認めたくはないと渦巻くっていた。


「おや、貴女は戦いのことを良くわかっていますね」

「ふん、竜と戦っていれば自然にわかることよ。死ぬか、生きるのどちらかしかないなら、何をしてでも生きることを優先するわよ。それがゲームであってもよ」


 ヨルドから誘いがあった梨華は現状の状況から考え、流石にハオランを止めないと不味いと思ったから、話に乗った。勿論、安全を考えて、皆が集まる前に自国のメンバーに会って、フラッグを取り替えていた。

 ルールでは、フラッグを隠してはいけないと書かれているが、交換したり渡したりしては駄目のルールはない。


「……そろそろ解散しない? ハオランがこっちに向かっているわ」


 今まで黙っていたロシアのメンバー、ルイエは霧を生み出すフォースで広範囲に探知をかけていて、ハオランが近づいていると伝えてきた。


「その力、流石ですね! 私の力と違って便利で攻守にも優れています。羨ましいですね!!」

「……チッ、お前の力が劣っているような言い方だな? 嫌味を言っているなら、黙っとれや!?」

「いやいや、嫌味なんて、本心から言っていますよ?」


 青筋を浮かべるドーリーに対して、人を馬鹿にしたような微笑で否定する。


「まだ喋り続ける馬鹿は放って、解散するわよ」

「……そうですね」


 別に、自分達は仲間ではない。ただ、この場限りの同盟であって、言い合いをする二人を止めることはせず、さっさとこの場から離れる。離れる二人に気付いたのか、ヨルドに構うの止めて脚を動かした。


「皆さん、今回はありがとうございましたー! ……まぁ、予定通りですね」


 ヨルドは小さな呟きを残し、自分の影へ消えていった。それで、梨華達は自分の影から現れたことに気付けたが、このゲームでは1度もヨルドが影から襲いかかってくることはなかった…………












 この場から離れた梨華は、自分の影に注意しつつ、ハオランが向かっている方向の反対側へ向かっていた。


 すぐに襲いかかってくることはないか?


 梨華は気味が悪い笑みを浮かべるヨルドを警戒していた。能力も厄介だが、その思考へ警鐘を鳴らしていたこともあり、中国と戦っていている時も警戒していたが……

 いつまでも襲ってくる気配は感じない。


「警戒しすぎだったか?」


 何も起きないことから、考えすぎだったのかと警戒をほんのちょっとだけ緩めてしまった。それがーーーーーー








 上空から現れたハオランに気付けず、尾びれを捕まれてしまった。


「なっ!?」

「お前かぁぁぁぁぁ!!」


 高い身体能力を持って、尾びれを振り回されて、投げられて大樹へ衝突してしまう。


「がはっ!?」

「その姿、覚醒能力だな!?」

「っ! 舐めるな!」


 間に水の竜巻を展開し、すぐ懐へ入れないようにしたが……




「そっちこそ、我を舐めるな!!」




 ハオランのフォースである『衝凸』でトンファーが衝撃を膜のように包み込まれて、その衝撃が水の竜巻を弾いて真っ直ぐに突っ切ってきた。トンファーでそのまま攻撃すれば、ハオランの反則負けになってしまうので、蹴りを選んだのだが、そのルールのお陰でトンファーで攻撃してくるスピードの差があった。

 つまり、梨華はそのスピードの差で上空へ逃れることに成功した。


 はぁはぁっ、なんでこっちから! 反対側に向かったのに、すぐ追い付いてきたと言うの……!? ……………………っ、冷た……霧? まさか、嵌められた?




 今までは泳いでいた上空よりも高く上空に逃れると、薄く白いモノが漂っていることに気付いた。冷たい空気を感じ、それが霧だとわかり、そして、嵌められたことも理解した。


 梨華の推測は当たっていた。影に警戒を注いでいた分、周りへ警戒が薄くなっていたことに、梨華は薄い霧が漂っていたことに気付かなかった。漂っているといっても、流石に人の周りを纏うように展開すれば、一般人でも気付くだろう。

 だから、霧を操っているであろうの、ルイエは梨華からの死角である上空に霧を展開させていた。






 ルイエが持つフォース、『無魔霧』は幻惑系の能力であり、触れさせることなく、近くを漂うだけでも道を誤認させることも可能だ。


 よく考えれば、2位の私らを誘うのもおかしなことだよな……。つまり、本当の同盟はイギリス、ロシアってことか? アメリカは馬鹿真っ直ぐの奴だったから、ないとして……


 そう、ヨルドは2位である東ノ国をも削ろうと考え、4位であるロシアと本当の同盟を組み、上位2組を撃ち落とそうとしていた。それだけ、ヨルドはハオランと東ノ国を警戒していた。

 アメリカ? ドーリーの時点で警戒にするには値はなかった。




「うらぁっ!!」

「ちょっと、か弱い乙女に向かって殴るなんて、どうなのよ?」

「覚醒能力を使える時点でか弱い乙女とは思わないことにしているわ!!」

「酷い男ね。それでは、モテな……いえ、既婚者でしたっけ」


 口では余裕そうに見えているが、実際はギリギリだった。梨華が制空権を掴んでいるといえ、能力での攻撃が封じられている時点で、距離を稼ぐための水の竜巻を盾にしながら逃げ回っていた。といえ、ハオランに対しては効果があるとは言い難い状況。




 …………はぁ、仕方がありませんね。あとで、皆に謝らないとね。




 東ノ国での作戦があるので、ここで消耗するにはいかないと、ある考えを決行することに決めた。


「ねぇ、おじさん?」

「俺はまだ四十代だ! おじさんの歳でもねぇだろ!」

「十分、おじさんだと思うのけれど……まぁ、いいわ。私はここら辺でおさらばしたいのだけれども?」

「ふん、逃がすと思っーーー「なら、こうしたら、どうかしら?」なっ!?」


 梨華は、なんとフラッグ二本を捨てるように、大樹へ投げた後にクモの巣の銃で撃った。フラッグ二本とも大樹へ縫い付けれていた。


「それはプレゼントするわ。じゃあね」

「待て! ……クソッ!」


 ハオランは脚を止め、逃げて行く梨華を睨んでいた。目的のフラッグがここにある以上、追う理由がなくなったからだ。いや、梨華を消耗させるために追うことも出来たが、縫い付けられたフラッグがそうさせてくれない。銃で撃たれたフラッグは5分経たないと掴めないからだ。攻撃して無理矢理取ろうとしても、すぐに取ることは出来ず、どのみちは逃げられるだけだ。




「く、次に会ったら逃がさねぇぞ……」















 何を言って謝ろうかしら……守は見た目に反して、少し怖いよね…………












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