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58.『タラテクトフラッグ』①

はい、続きをどうぞ!


守視点



 広大な森林が広がる中、東ノ国のチームが固まっているのを確認できた。他のチームはいなかったが。


「作戦通りに動くように!」


 キラキラの人がリーダーになって、指示を出していくのが見えた。

実力は覚醒能力を使える梨華の方が高いが、リーダーとしての資質は誠冶の方が高い。守はキラキラのことが少し苦手だが、今はチームを組んでいるので、指示にはちゃんと従う。


「鈴さん、行こう」

「は、はい」


 最初は弾の補給出来る場所が見つかるまでは、見つかりにくい場所で隠れている。戦うのに不向きな二人だからのもあるが、三時間も長い時間で森林にいるから体力も温存しなければならない。


「どう、敵の反応はある?」

「今、調べます」


 常時に発動できる能力ではなく、使用すると考えていないと使えないようだ。鈴のフォースは察知系で、腕輪の様なアクセサリーだった。


「『生命察盤』、発動」


 鈴がそう言うと、手前にホログラムみたいな物が現れた。点々と赤や緑の丸いのが出ており、全てが動いていた。


「これは……?」

「私の索敵範囲は200メートルになります。赤は私が仲間だと認めていない生き物で、緑は仲間だと思って下さい」

「小さな赤い点が多いね……? それでは、どれが敵かわからない

のでは?」

「大丈夫です。緑は他の赤より少し大きいでしょう?」

「あ、本当だ」


 小さな赤は虫や動物などの生き物になり、人間ぐらいのは他より大きめになっている。鈴の話で、竜や竜もどきは人間よりも大きいので、わかりやすいと。


「私は生命のある物しか索敵出来ません。だけど、命がある生き物なら、見逃すことはありません」

「へぇー、便利だね」


 鈴の能力を教えてもらい、守も自分が出来る事を教えていた。防衛拠点は違うが、今はチームで仲間に違いないので、協力できるように隠し事は無しにした。


「敵が来たら教えてね」

「その時は、出来るだけ離れましょうね」


 連絡が来るまでに木の影に隠れようとしていたが、スマホから仲間の連絡があり、確認すると弾を補給出来る場所を見つけたと――――






 梨華視点



(これが蜘蛛の糸か。粘々しているわね……)


 梨華は拾った枝で木々にへばり付いている蜘蛛の糸に叩き付けてみたが、切れずに枝が捕まった。そして、五分待ってみると、その糸が消えて枝が地に落ちた。

 敵が撃ちだす蜘蛛の巣だけではなく、木と木の間に垂れ下がっている蜘蛛の糸にも気をつけなければならないようだ。


「おっと、時間を無駄にしていちゃ、駄目だわ。しかし、敵を見つけることは出来るのかしら?」


 とても広いと聞いているので、すぐ敵を見つける事が出来るか心配だったが――――




「ん?」




 梨華は少し違和感を感じた。何故か、木が揺れているような木がする。こんな演出はあったのかと思ったが、それは違った。


「っ!」


 梨華は戦闘経験が豊富であり、竜もどきや下級種の竜も何十体か倒してきた。僅かな気配を後ろから感じ、咄嗟に横へ避けると、何かが通り過ぎた。――――蜘蛛の巣だった。


「敵!」


 すぐ覚醒状態の人魚型になって、上空へ向かって泳いでいく。森を抜けるのは不可能なのは少し前に試したから、知っている。上に行こうとしても、100メートル辺りで天井みたいなのがあって、先に進めないようになっていた。だから、50メートル辺りまで進み、下を警戒する。


「姿が見えない……? まさか、幻覚系?」


 木が揺れていたり、姿が見えないのは幻覚のせいではないかと考えた。姿を隠すのは禁止されていることだが、警告の音がしないことから梨華自身が見る視界になにらかの細工がされているということ。それなら、禁止の範疇に入らない。


(面倒な敵ね。逃げた方がいいかしら? 3点のフラッグを持っているのは私だし……)


 こういう幻覚を使うような相手は掛けられてしまったなら、すぐ逃げた方が一番いい。そうすれば、距離が開いて解けるのだから。それに、梨華は東ノ国のチームで点数が高いフラッグを持っているから、逃げた方が賢い考えだろう。


「でもね、相手の情報を一つも得られずに逃げるのはちょっと、プライドに触るよねぇ」


 梨華は腰抜けが嫌い。自分がそれになるのは我慢ならない。だから、逃げずに迎え撃つことに決めた。それに、姿を隠す敵と戦うのは初めてではないので、その経験を活かす。


(細工されたのは視覚だけ? 聴覚、触覚はどうなんだろ?)


 まず、敵を見つけなければならないが、視覚だけに幻覚を掛けられているのか、他の感覚に違和感がないか調べておく。




 ガチガチガチッ!




 木に槍を叩いてみて、音が平常に聞こえているか確認していた。距離感もおかしくはなかった。触角は槍を掴んでいる感じから、細工されている可能性は低いように思えた。


「っと!」


 色々と確かめていたら、また蜘蛛の巣が飛んできた。距離もあったので、あっさりと避ける事ができた――――すぐ梨華は横へ泳ぐように進むと、梨華がいた場所を蜘蛛の巣が通り過ぎた。避けられたのは、後ろから気配を感じたからだ。


「そこね!!」

「くっ、野生児みたいな奴だな!?」


 梨華が進む方向から、イラついた声が聞こえたので敵がいるのは間違いないようだ。敵の姿はわからないが、梨華は野生の勘と言える感覚で、敵のいる場所を大体は補足していた。


 実際、梨華はフォース使いで覚醒をしている状態なので、竜の力を限界まで引き出して戦える。つまり、竜の力を余すこともなく使えているので感覚が普段より鋭くなっていた。だから、梨華が敵を大体といえ、捕捉できたのはそのお陰であった。


「攻撃をしては駄目だったわね……なら、こうする!!」


 梨華が取った手は、水流の竜巻を敵がいる周りを狙って道を塞いでいく。これなら、敵を狙った攻撃にならず、敵の敵を止める手になった。


「クソ!!」

「出鱈目に撃っても当たらないわよ!!」

「ぐおっ!?」


 蜘蛛の巣を乱射されたが、空中を泳げる梨華に取っては脅威ではなかった。近距離まで近付き、一発だけで敵を蜘蛛の巣に絡めた。腰に刺さっていたフラッグを奪い、白いフラッグだったことに残念だと思ったが、始まったばかりだからいいかと納得するのだった。




「まず、1点!」




 東ノ国のスタートはまずまずの良いスタートとなった。だが、『タラテクトフラッグ』はまだまだ始まったばかりだ――――






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