47.白竜
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光の粒子に包まれたティアは能力を操作出来ず、完全に包まれないように抵抗をするしか出来ない。
だが、その姿は完全に竜にしか見えない。さらに、その能力も人間の技術を超えており、どうすれば光の粒子を操れるのか見当が付かない。
だが、暁が一つの推測を思いついたように、光の粒子を操る能力は、元は竜の能力ではないかと。
「な、なんで……私が、竜に……い、嫌、イヤァァァぁぁぁ!!」
「落ち着け、完全に飲まれんなよ!!」
暁は白桜に竜の能力が付属されているまでは予想出来ていたが、今みたいのは予想外だった。まるで白桜がまだ生きているようにティアを取り込もうとしているのだから。
『ゴガァァァァァ!!』
「む!?」
突如にティアの身体が輝き始め、光の粒子を全方位へ放ち始めた。自分にだけではなく、出雲総隊長と狭間もその攻撃に巻き込まれようとしていた。二人も危険だと理解し、フォースを顕現していた。出雲総隊長は片腕しか動かせないが、一本だけで光の粒子を防ぎ切っていた。
「”二重・雷斬”!」
暁は隙だらけになっている竜の翼を斬り落とそうとしたが、すぐに繋がってしまい、ダメージ一つもなかった。
(チッ! 本体はあくまでもティアで、竜は光の粒子でしかねぇかよ)
”これは、ティアの生命力を原動にエネルギーが強化されているな。しばらく放っておけば、ティアが死んで竜も止まるだろうが…………暁はそうしないだろうな”
(当たり前だ!)
暁は元より、ティアを助けるつもりなのだ。だが、さっさとバーサーカーモードという物を止めなければならない。暁には一つだけの手があるが、本来なら誰も見てない場所でしか使うつもりはなかったのだ。
だが、そうは言っていられない状況になっているので、使うことに決めた。
「仕方がない。早いと思うが、見せてやろう」
戦闘中に、暁は星空刀を消していた。周りは何をするつもりなのかと思い訝しむ顔になるが、次の瞬間に驚愕の表情に変わっていった。
「『虚閃刀』ーー」
二本目となる刀は、黒い刀で月光に輝く美しさを誇っている。虚閃刀なる刀の効果とはーーーー
「虚ろなる物は斬れず、自分が真実だと定めた物を一閃とする刀だ」
暁はそう言い、一瞬でティアの懐へ入った。そして、そのままティアごと斬り捨てた。
「えっ!?」
暁がティアごと斬るとは思っていなかったようで、更に驚愕する狭間だったが、それ次第に様子がおかしいと気付いた。
斬られたティアの表情は驚愕のままだが、苦しみや痛みの表情を浮かべることはなかった。
「ーー粒子が?」
「そうだ、俺は粒子しか斬ってない」
斬られた後に散らばったのは血や臓物ではなくーーーー光の粒子だけだった。しかも、その粒子は元に戻ることもなく、虚空に消えていった。その様子を見た出雲総隊長は虚閃刀の効果がわかったようで、成る程と呟いていた。
「何かわかったのですか?」
「あぁ、何故、別の能力を使えるのかわからんが、あの刀の効果がわかった。虚閃刀と言ったか? あれは、暁が指定した物だけを斬れる刀ってわけだ!!」
出雲総隊長が言ったことは、大体が合っているようだが、少しだけ説明が足りない。指定した物だけと言っていたが厳密に言えば、暁が指定出来るのはーーーー1つだけ。1つだけしか選択出来ず、1つしか斬れないのだ。
それだけ聞けば、使い道が少ないと思うだろうーーーー
『ギガァ!!』
白桜……もとい、白竜の意識が光の粒子を斬った刀が危険だと理解したのか、排除しようとする。星空刀の時だったら、防ぐにはプレート無しでは力が足りなくて押し切れなかっただろうの太いレーザー光線が、暁へ向かっていくーーーー
「甘ぇよ」
虚閃刀を振るだけで、あっさりと弾き飛ばしていた。星空刀の時だったら、この様にあっさりとはいかなかっただろう。
では、虚閃刀が出来たのは何故なのか?
暁は、虚閃刀を作る際に設定したのだ。この刀は暁が指定した1つだけの物を斬れないように制限を掛けることでーーーー、その分だけ性能を高めた。
この前、ステラが言っていた、『1日1回だけと限定すれば、山一つを吹き飛ばせる』みたいに、限定どころを決めて、他の性能を強める。この場合は、刀が斬れる範囲は狭まるが、斬れる対象には高い効果を発揮出来る。
使い道が難しいように聞こえるが、今の様にティアを助けたいのに役立つことが出来る。対人戦でも手加減をしたい時にも使える。もちろん、竜に対しても莫大な効果を果たせるように考えてあるーーーー
「気を強く持っていろ。すぐに助けてやるよ」
「…………な、なんでよ。私ごと斬れば、いい、じゃない!! 私は、貴方達、の敵なのよ!?」
ティアは苦しそうな表情でありながらも、侵食してくる竜の力に抗っていた。仇敵である竜に侵食されるぐらいなら、死んだ方がマシだと覚悟を持っていた。なのに、暁は敵であるティアを助けようとしていた。
「ーーーー逃げるのか!!」
ティアは言葉に詰まった。
「このまま、死んだとしてもティアが今までやってきたことは許されることはない。なら、生きて何が出来るか考えてみろよ!!」
「でも……」
「でも、じゃねえよ! 助けてやるから、話はその後だ。決して、逃げるだけは止めろ」
その言葉に暁の願望みたいな物も感じられたが、竜の侵食が更に強くなって、これ以上は考えられなかった。
『ギァガァァァァァーー!!』
「う、うぅぅーー!!」
「チッ! 時間は余り無いか!」
暁は虚閃刀を発現したままでも、プレートの能力を使えるようで、再びにティアの懐へ入って決着を付けようとしたが、白竜の方が早かった。
白竜を中心に、周りへ眩しい光が広がり、暁の視界を塞ぐ。暁といえ、この光量には腕で遮る必要があった。それ程に眩しかったのだ。
光が止んだかと思えばーーーー
「グッ!?」
「暁!? ーーーーな、なにアレ!?」
暁が何かに弾かれて、地面に衝突してしまう。狭間が声を上げて駆け寄ってくるが、上空へ眼を向けると絶句して脚を止めていた。
白竜がいた場所、上空には奇妙な姿をした何かがいた。ティアの部分は変わっていなかったが、背中から翼だけではなく、長い首が8本も伸びていて先端には、竜の頭があった。
その内の1本で暁を弾き飛ばしたのはわかったが、狭間は奇妙な姿に言葉を失うのだった。
「面倒な姿になってしまったな」
”その姿は正に、ヤマタオロチのようだなーーーー”
姿が変わった白竜の相手に、暁はティアを助けるには素早く白竜を排除しなければならない。明らかに、敵は強くなってしまい、絶体絶命の状況に陥ってしまうのだった…………




