46.暁vsティア②
はい、続きをどうぞ!
地に墜とされたティアは再び、宙に飛び出した。そして、翼の形をした光の輝きが更に強くなっていく。
「もっとスピードを上げるわ。エンジェルモード切替」
エンジェルモードと発された瞬間に、二枚の翼だった物が八枚の天使の翼と変わった。
暁は前の翼でも天使のような姿だと思ったが、今はその天使の上位版になったように感じられていた。
(さっきのがただの天使だったが、今は天使長ような姿になったな。スピードを上げると言っていたが……)
”避けろ!!”
(なっ!?)
ステラが声を掛けてくれたお陰で、直線的にこっちへ飛んできたティアから避けられた。今度は翼そのものを武器にし、鋭く尖った刃のようになっていた。
更に、八枚の翼の付け根に噴射口のような物も現れていた。その噴射口があって、先程よりもスピードが上がっていた。しかも、噴射口は自由に位置を調整出来るようで、ギサグサと読めない動きをしてくる。
「このモードでも、互角に戦えるなんて、凄いね」
ティアの言う通りに、暁はギサグサで素早い動きで飛んでいるティアをシッカリと眼で追っていた。そして、重い攻撃を星空刀で上手く受け流していた。
「なら、これでどう!?」
ここで、遠距離も織り交ぜて翼から光線が飛び乱れる。鋭利にされた翼、スピードアップの噴射口、マシンガンのように撃たれる光線。
これだけの要素を持ち、暁へ攻撃を加えるティア。
だが、暁には一度も当たらなかった。
「えっ!?」
「戦闘経験はまだ少ないな?」
鋭利にされた翼は星空刀で受け流して、光線の雨はステラと共同思考により、穴を見つけ出して抜け出した。ギサグサに動くティアに対して、噴射口の位置を見ることで噴射方向を予測した。そして、脚を細かく刻むように、プレートを蹴って追いつく。
それらの行動を合わせた結果、無傷でティアの懐へ入ることに成功していた。
そのまま、星空刀で翼を二枚ほど斬り落とした。
「しまっーー!?」
片方の二枚が斬られ、バランスを崩してしまうティア。それでも、諦めずに、墜ちて行く途中で残った翼を全て切り離していた。
切り離した翼は薄い光で繋がっていて、翼はそのまま鎌のように暁へ振り下ろされていく。
「”禁忌・崩脚”」
暁はそれを十枚に重なったプレートを設置し、振り下ろすだけで全ての翼は掻き消えた。
「あぁっ!?」
衝撃がティアまでに届き、地面へクレーターが出来る程に深くまで落とされていく。
暁は禁忌を使うと、脚一本を駄目にしてしまうが、自己治癒によって数秒はあれば完全に治せる。
煙が盛り上がる中、暁は空中でジッと注視していた。
「こ、今度こそ、やったじゃない?」
「そうだな……、と言うか、少女は死んでねえよな? アレは」
二人にはクレーターが出来る程の衝撃を受けたティアが生きているとは思えなかった。それだけに威力が高いのは二人とも、イゾルデ戦で知っているのだから。
もう戦いは終わったのかと安堵する狭間だったが…………
「まだだ。しぶといのは服までも光の粒子で出来ていたからか?」
「は、ハァハァっ」
ティアはまだ生きていた。これだけの威力を食らっても、まだ立てたことに驚く出雲総隊長と狭間だったが、少女はもう限界だと見えた。
左腕がダラリとしているから、脱臼か骨折のどちらかしているのが伺えていた。
「流石だな。咄嗟に光の粒子をクッションにするように展開していたのも、ダメージ軽減を助けていたか。それにしても、光の粒子は一つの能力だが、応用が効くな」
「一つの能力…?」
暁の言葉を聞いていた狭間がそう漏らしていた。
「そりゃ、ティアが使えていた能力は一つだけだ。戦いを見ていたならわかると思うが、光の粒子を固めて、剣にしたり光線を発射していたし、噴射口からも光の粒子が吐き出されていたしな。つまり、能力は応用の効く、光の粒子を操る力だろう」
「そういえば、そうだったな……」
出雲総隊長も戦った時を思い出していた。どれも光の粒子を使われていたような気がする。
ティアの能力について、話をしていたが、ティアは左腕が動かなくても、まだヤル気はあった。
「ま、まだ……」
「まだ手があるのか? もうないだろ」
もし、まだあるならエンジェルモードになっていた時に使っていただろう。実力の差があったとわかっていて、怪我をしてから手札を切るのは遅すぎる。つまり、もうティアに手はもう無かった。
暁の指摘は当たっていたようで、歯噛みをするティア。
「それでも!! 私はーーえ?」
いきなり、ティアのポケットから携帯が鳴る音が聞こえてきた。この携帯には、暁と育て親の番号しか入っていない。なのに、それが鳴ったという事は…………
「まだ戦闘中なのに?」
「出ろ。俺は待ってやるよ」
「…………」
戦闘中なのに、電話に出るのを待ってやると言われて、訝しむティアだが、出ないわけにはいかないので、携帯を取る。
「もしもし……?」
『負けそうだね?』
「っ、ま、まだ!!」
ティアの戦意はまだ消えていなかった。だが、電話の向こうからは冷たい声しか流れない。
『無駄だ。戦いを見せて貰ったが、お前の実力では勝てない。だから…………お前は廃棄することに決定した』
「え?」
『だが、それは相手を道連れにする。このようにな!!』
電話の向こうからスイッチを入れるような音が聞こえていた。
それから、ティアが自由自在に操っていた光の粒子がティアの命令を無視して、ティア自身を包み始めた。
「キャァッ!?」
『バーサーカーモードニキリカエマス』
「なんで操作出来ない! こんなの知らない!! 」
機械的な声が流れ、ティアが付けていた白い仮面が割れて、素顔を晒していた。その顔は悲痛に歪んでいた。
ティアを包み始めた白い粒子は一つの形を模っていく。その姿とはーーーー
「やっぱり、白い粒子の能力は…………」
目の前には、身体を侵食されたティア。ティアは抵抗しているのか、侵食は顔半分まで止まっており、完全では無かったが…………その姿は『竜』だった。




