45.暁vsティア①
お待たせ!
続きをどうぞっ!
約束の時、夜中で誰もいない南の防衛地にて。
訓練場となっている広い場所で暁は待っていた。側には出雲総隊長と狭間が立っている。
「来るのか?」
「あぁ、アイツは必ず来る。俺を殺しに」
「なんで、一対一で戦うことに拘るのよ? 相手は未知数の力を使うのよ!!」
暁は出雲総隊長に人払いを頼んだのだ。南の防衛地に誰も残さず、訓練場にて一対一で戦うために。
だが、それは認められず、条件を付けられた。
それは、出雲総隊長と狭間が一緒にいることを条件として提示したのだ。暁は少し考え、その条件を認めた。どうせなら、それを利用してやろうと考えてのことで認めたのだった。
「決まっているだろ。他の奴らがいても、足手纏い。それに、死者を増やすだけでこっちにメリットはないからだ」
「…………」
狭間はその言葉を理解しているが、心は暁を一対一で戦わせたくないと否定をする。しかし、狭間達には実力が足りないのはわかりきっていることだ。南の防衛地で強い出雲総隊長が相手に余り傷を付けられないまま、負けたのだから。
「それに、俺は簡単に死ぬことはあり得んな」
「その自身は何処から来るのよ……」
狭間は暁の言葉に呆れて、何も言っても無駄だとわかったのか、反論が無くなった。
「来たか」
「っ!?」
暁は暗くなった空を見上げ、そんなことを呟いたから、出雲総隊長と狭間は咄嗟に顔を空に向けるが、その姿は何も見えない。
だが、暁は一点だけに絞って見ていた。
「こちらは三人だけだ。ティア、姿を見せろよ?」
二人には暁が誰もいない空に向けて話しているようにしか見えなかった。だが、突如に何もない黒い空が白く塗りつぶされたように少しずつ姿を現していく。
「ステルスモードになっていたのに、見破れるのね。それもフォース使いの力かな?」
「いや、そこの空気が変だったからな。言葉に纏めるなら、勘だな」
「勘って、これでも沖ノ国の技術結晶なんだけど……。それを勘で破られたら技術者が泣いちゃうよ?」
「俺が凄いだけだから仕方がない。それに、沖ノ国とか言っていいのか?」
本当は、ステラに教えて貰ったのだ。ステラには丸見えだったようで、ステルスを使ったまま攻撃は出来なくなった。
「構わないの。どうせ、私が負けてもトカゲの尻尾の様に切り捨てられるだけだし、私が勝ったら貴方達は全員死ぬだけ。それに…………私はもう戻れないから」
戻れないとは、出雲達には何のことを言っているかわかっていなかった。だが、昨日に会話をした暁だけはわかっていた。
「そんなことはないぞ。お前は俺と出雲の首を持ち帰れば、大丈夫だろ? そのために出雲総隊長にもここにいて貰うと条件にわざと乗ったしな」
「おいっ!?」
出雲総隊長からツッコミがあったが、暁は無視。負けた場合のことを言っているが、暁には負けるつもりは無かった。
「まぁ、わざと負けてやることはないし、俺が勝つと決まっているからな」
「クスッ、やっぱり暁さんは不思議な人。暁さんにとっては、私の力は未知数だよね? 何故、そんなことを言えるの?」
「未知数? そんなの負ける要因にならんな。俺はどんな能力を持っているかわからない竜の軍団に喧嘩を売っているんだ。それで、今まで生き残っていることが根拠だ」
「そう、わかった。私も本気で暁さんを殺しに行くわ。そして、貴方の覚悟を見せて!!」
ティアは天使のような翼を羽ばたき、白い仮面を付ける。翼から広範囲へ撃ち抜く白いレーザーが降ってくる。
「覚悟か。なら、見せてやろう!!」
訓練場へレーザーの雨が降り注ぎ、大量の煙が上がる。暁が何もしていなければ、身体中に穴を開けられていただろう。
だが、ここで終わる暁ではなかった。
星空刀を手に持ち、足元にはプレートを顕現していた。一瞬の間でレーザーの雨の間を通り抜けて、飛び上がっていた。
シュッと空中でプレートを蹴って、ティアの翼を斬り落とそうとする。
「ーー”二重・雷斬”!」
「聖桜剣!!」
一声で翼の一部が剣に変わり、薄らと桜色が混ざった剣で星空刀を受け止める。力は互角だったようで、お互いが吹き飛ぶ。
”ほぅ、強化された剣撃を受け止めるだけで終わらず、弾き飛ばすか”
(そうだな。通常で二重と同等の力が発揮されているわけか)
吹き飛ぶティアだったが、数瞬で体勢を整えて、手に持った聖桜剣で暁を突き刺そうとする。
「早いがーーーー軌道がわかりやすすぎるぞ!!」
暁も空中を蹴り、プレートも小回りが出来るように威力を小さくした。そして、威力を小さくしたプレートを何回か蹴って、突っ込んでくるティアの横へ回り込むことが出来た。
これでティアの隙を突いた。
はずだったがーーーー
「グッ!?」
「駄目ですよ。私には隙はありませんよ」
隙を突いたと思ったが、反対に暁はティアの攻撃範囲へ入ってしまっていた。ティアは何をしたのか?
今のティアには武器が一つにしか見えないかもしれないが、実際は粒子のように漂う光る翼までも武器だったのだ。
今は翼から発されたレーザーによって、暁は腹を撃ち抜かれていた。このまま、落ちていくだろうとティアは思った。
しかし、ティアの想像を暁は越えた。
「甘えんだよ!!」
「えっ!?」
傷を負ったが、すぐに自己治癒で塞がっていく。地に落ちずにまたプレートを蹴ってーーーー
「”三重・雷斬”!!」
「うっーー!?」
ティアは聖桜剣で受け止められたが、先程よりも、強くて重い斬撃に苦悶の声が漏れて、押し込まれて弾き落とされてしまう。
ドガァァッ!! と地に叩きつけられたティア。
「や、やった!?」
「ちょっ、それはフラグじゃねぇか!?」
観戦していた狭間がフラグを立ち上げる。出雲総隊長が止めようとするが、遅かった。
煙が晴れると、ティアは擦り傷だけで他に怪我がないように立っていたのだ。
「自己治癒の能力は聞いていたけど、そんなに早いとは思ってなかったわ」
「こっちのセリフだ。これだけやって、擦り傷だけかよ」
戦い始めたが、暁は傷が完璧に治っており、無傷。ティアも地面へ衝突時に翼で和らげたから、その時に飛んだ石で腕を薄く切っただけで、殆どは無傷。
戦いはこれからだと言うように、二人はお互いを見合わせるのだった…………
まだ戦いはこれからだ!




