33.少女の正体
はい、続きです!
キマイラが塵になって消え去った後。後ろから衝撃を感じ、後ろを見てみると守と杏里が抱きついているのが見えた。
「今度こそ、やったよね!?」
「ああ。塵になったのを見たよな? あそこから復活できる奴は流石にいねぇよ」
「助けてくれてありがとうございます。私はまだ未熟ですね……」
「まだ未熟かと聞かれば、そうだと言うしかないが…………」
暁は苦笑して二人の頭を撫でる。
「それは一人の時はな。お前達が組めば、先程みたいにキマイラに風穴を開けられたじゃないか。良くやったぞ」
「「っ!!」」
まさか、褒められるとは思っていなかったようで、二人とも顔を赤くして顔を伏せていた。向こうでは花蓮が皆を回復させて、気絶から目を覚ます者がちらほらと。今回は運良く、死人は出なかった。
キマイラが動く者を最優先に潰して、追撃を加えてなかったからだ。
キマイラを倒し、祝勝の雰囲気になりかけた所に波剛総隊長が気付いたように、剣を支えに起き上がっていた。
「少女は!? やったのか……?」
「いや、それはーーーー」
「へぇ、キマイラを倒したんだね」
少女の声が上から聞こえた。少女は浮いており、長い黒髪が風に揺れる。
少女がまだいたことに、動けるようになった者はフォースを顕現して、警戒していた。
「まぁまぁ、警戒しなくてもいいよ。今回は手を出さないと言ったから、ちゃんと約束は守るよ」
「なら、何故ここに?」
キマイラがやられたのを理解し、少女は手を出さないと決めているなら、ここへ来る理由がないはずだ。まさか、ただ会話をするだけのためにここへ?
それは情報を与えるキッカケになるかもしれないので、少女にしたら得がないに等しいのだ。
「なぁに、ただ自己紹介をしてなかったなーと思ってね」
「は? それだけで?」
「うん! 他はどうでもいいけど、貴方には興味があるの。だから、自己紹介をしましょ?」
少女が興味を持ったのは、暁だけで他の者はどうでもいいと。
その言葉にギリッと歯を噛み締める者が多数だったが、キマイラにやられた先では何も言えない。
「ふーん、情報をくれるなら会話をしても構わんが、仲間を馬鹿にするのはやめて貰おう」
「へぇっ。仲間とは誰のことかな?」
暁は名前を言わずに、目線だけで教える。守、杏里、狭間に向けられていたのを少女だけ理解した。
「実力はまだまだのようだけど、貴方が期待している……、そんなところね。さて、自己紹介と行こうか! お先にどうぞ!」
「普通は言い出しっぺからなんだが、竜にこっちの常識を押し付けても仕方がないか。俺は南の防衛拠点で『虹竜隊』の隊長をやっている石神暁だ」
「『虹竜隊』の石神暁ね……、覚えたわ。次は私の番ね」
今度は少女の番になる。暁はただの自己紹介で終わるだろうと気を抜いていた。
だから、少女の言葉に驚愕する表情を隠せなかった。その少女が自己紹介をした内容はーーーー
「私は竜王レイディアム様の配下。上級種の力を持っており、更に魔術の極みを目指す研究者でもあります。名称はーーーー」
ドゥーベ・ドラグリア
「ーーと申します。では、また何処かで会いましょう」
ドゥーベと名乗った少女はワンピースのスカート部分を軽く掴んで、貴族みたいな礼をして、姿を消していった。
「ーーは?」
少女は名称をドゥーベ・ドラグリアと名乗っていた。
ドゥーベ、前にステラと話していたミザールと同じ北斗七星の名前。つまり…………
”暁の思っている通りだ。さっきのは竜王レイディアムが住まう塔の鍵を持った上級種のようだな”
(のようだなって、ステラも知らなかったのか?)
”塔の鍵を持っているのは、北斗七星の名を持っているのは知っていたが、どんな奴かは知らなかったな”
(そうか……)
今は情報がまだ少ないから、考えても仕方がないと判断して、まだ側にいた二人の頭を撫で続けた。二人はまた顔が赤くなり、狭間は呆れた表情をしていたが、暁はこれからどうしようかと考えるのだった。
キマイラを倒して、上級種の少女は去ったから危険はないが、東の防衛拠点が成り立つまではここに通うことになりそうだ。
そんなことを考えていた暁だったが、ステラから朗報があった。
”疲れたような顔をしていないで喜べ。キマイラは下級種の集合体だったが、能力的には中級種以上だったから、魂を吸収出来た”
(そうか、良かったな)
”馬鹿言え、朗報はこれからだぞ”
(む?)
暁の目的、中級種以上の魂を吸収して『創刀七星』を復活させる。そして、一定の魂を吸収出来たらーーーー
”二本目の刀を創れるぞ”
この朗報により、暁とステラの念願が一歩と近付いたのだった…………
次からは第3章に入ります!
第3章は『迷子の天使』になります。お楽しみに!!




