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2.社会科見学

 


 高一になって、社会科見学とか……と思う人が多いかもしれないが、見学先は将来にとっては有益な経験になるであろうの場所だ。奪われた土地を奪い返して、竜を追い返すか全滅させることが人類の悲願である。追い返すか全滅させるなら、竜の上に立つ七体の竜王を倒すのが望ましいといえ、上級種の適合者でも塔の中には入れないままである。

 それらをなんとかする為に、東ノ国は二つの施設を作った。それが、研究所と訓練所である。有望な人物を生み出すために、全ての学校に見学を義務付けられている。そう、それが社会科見学となるのだ。

 そして、社会科見学の日になり、暁のクラスは二台あるバス前に立っていた。だが、一人だけ涙目で唸っている人がいた。その人とは…………


「うぅ~~」

「涙目になる程かよ……」


 涙目で唸っているのは守で、呆れながらも宥める暁。三日前に集めた希望者のプリントを集計した結果、暁と守は別々の場所を選んでおり、一緒にいられないから唸っているわけだ。しかも、いつも一緒にいる高嶺と武藤は暁と同じ場所を選んでいたから、守は一人だけになってしまったのだ。

 守は他に友達がいるといえ、いつものメンバーで楽しみたかったのもある。


「運が悪かったな。まぁ、お土産を…………売っているわけがないか」

「んーーーー!!」


 ポカポカと暁の胸を叩く守。子供っぽい所を初めて見たクラスメイトは眼を大きく見開いていた。


(まだ子供っぽい所は直ってないな……)


 見慣れている暁は、軽く叩いているから痛くないので頭を撫で続ける。そうすれば、落ち着くのを知っているからだ。


「あのな、別々になったのは仕方がないことだが、別に長い間離れるわけじゃないんだろ? それに、これくらいは良くあったんだろ?」

「それはそうだけど……、これから行く場所は街と違うんだよ……」

「危険がないように、護衛が付いている。しかもフォース使いが二人いるんだから、下級種が現れても大丈夫だ」

「んむぅ、わかったよう……」


 いつまでもこうしていられないのを理解しているからか、渋々ながらも暁から離れてバスへ乗り込む。暁も守と別のバスへ乗り込もうと脚を動かしたが、周りから視線を感じていることに気付いた。その中から、高嶺が代表というように、質問を投げかけて来た。


「ねぇ、暁君は守ちゃんと付き合ってないよね?」

「はぁ? どう見れば、そうなるんだよ?」

「えぇっ!?」


 暁にしたら、幼馴染みを宥めただけで、それ以上もそれ以下はない。だから、そう答えたのに…………


「嘘だろ!? あれだけ熱い状況を見せられて、それはないだろ!?」

「武藤までかよ…………、言っておくが、そのくらいは日常茶飯事だぞ? 唸る守を宥めただけのことで、いつものことだ」

「えーー…………」


 納得出来ないような顔だったが、暁が欠伸をしながらダルそうにバスの中へ入ってしまったので、これ以上のことを聞くことが出来なかった。周りが思ったことが一致しており、暁は『超鈍感』だと理解したのだった。




 一方、守が乗ったバスでもさっきのことを追求されていた。だが、守の答えはーーーー




「え、私と暁君が? 付き合ってないよ?」

「信じられない!? あれは恋人以上じゃなかったら、やらないわよ!!」

「え~、そんなことはないと思うよ? 暁君は一人にすると、無茶をしちゃうから心配なの。昔からそうなんだから……」

「ん? いつもダルそうにしているあの石神が?」


 守と話している女子はクラスメイトになってから、一ヶ月で大体のクラスメイトの性格を把握していた。だから、いつもダルそうにしている暁が無理をするような性格に見えなかったのだ。


「今の暁君を見て、そう思えないのは仕方がないよ。前よりは大人しくなったからいいけど、何かがキッカケでまた無理をしちゃうじゃないかと心配なの……」

「ふーん、その割には貴女が暁に宥められているわね」

「そ、それは! 暁君が私に何処を見学するのか教えてくれなかったからなのよ!」

「まだ子供なのかしら……?」


 保護者のつもりなのか、子供みたいに暁と離れたくないのか、よく分からないなと思うのであった。




 二台のバスはそのまま何か起きる事もなく、無事にそれぞれの目的地へ着いた。バスは着く五分前に別れ道へそれぞれ向かっており、暁側は訓練所の近くまで、橘側は研究所の前へーーーー




 暁側は、高さ10メートルは伸びている壁を前にしていた。大型車が通れる大きさの扉が一つあり、先生が扉前に立った。


「ここからは、樹海の中にある訓練所へ歩きで向かう。皆に護衛用の剣を持たせるが、もし敵に出会った場合はフォース使いの二人に任せるように。もし、飛び火が来た場合だけ、その剣で振り払うだけにしとけ!!」


 先生が十人ぐらいいる生徒へ説明し、護衛をしてくれる軍服を着たフォース使いが自己紹介を始める。


「初めまして、私は『伸縮蛇鞭』の狭間はざまと言うわ。私達が護衛に着くことになったから、中に入ったら出来るだけ言うことを聞くようにしてね」

「ああ、それだけ樹海は危険でもある。だから、訓練所もこの壁の外側にあるわけさ」

「自己紹介を」

「おっと、俺は訓練所にいる対竜部隊の一つ、黒牙隊の隊長を受け持っている『重突斧』の菊地きくちだ。ちなみに、狭間は副隊長な。宜しく頼む」


 部隊は三つあり、その中の黒牙隊と言う部隊の隊長と副隊長が護衛を受け持っていることに驚いていた。普通なら、部隊の下っ端がやる仕事で隊長や副隊長が受け持つ仕事ではないからだ。


「もしかして、何かが……?」

「何かがあるとハッキリしていないが、最近の下級種……竜もどきと出会う回数が増えている。元々、三日に四体ぐらいだったが、三日前から十体の数に増えている。だから、念のためにな」

「そうでしたか……」


 数が十体に増えたといっても、一度に十体も現れたわけでもない。だから、皆は隊長と副隊長がいれば問題はないと考えているようだ。


「さて、皆は剣を持ったな?」

「「「はい!!」」」


 暁も剣を持ち、近くに誰もいないのを確認してから軽く振ってみる。


(ちゃんと研いでいるようだが、連戦になったら折れそうだな……)


 下級種には『シェルドラ』のように本物の竜だけではなく、竜もどきも含まれており、竜のもどきとは生き物が竜の魔障を吸収して変異した化け物である。元の身体より強化されていて、普通の剣では両断するのは難しい。


「おーい、剣を抜いてどうしてんだ? 敵はあの二人に任せればいいんだよ」

「まぁ、先程の話が気になってな……」


 竜もどきとのエンカウントが増えたことに暁は引っ掛かっていた。さらに、嫌な予感がビンビンと感じてしまう。


(はぁ、嫌な予感が当たっても二人が対処出来ることに祈るしかないか……)


 大きな門が開き、訓練所までの道が準備されているので、それを通って歩いていく…………









 研究所を見学している守も嫌な予感を感じていて、落ち着かない様子だった。


「どうしたのー?」

「あ、いえ……」


 歯切れの悪い言葉に気にかかる女子だったが、研究所の者から説明が始まったため、会話はここで終わった。


(どうか、無事にいて……)


 内心で幼馴染みの無事を祈りつつ、研究所の者からの説明を聞いていくのだった…………





まだ続きます!

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