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28.上級種

本日二話目!

 


 まだ模擬戦の途中だったが、警報と伝達により、それは中止にされる。


「模擬戦をやっている場合じゃないわね」

「あぁ、言っていた奴の見間違いではなければ、ヤバイ奴が来ているからな」


 強者である二人が危惧しているのは、キマイラなんてなモノではなかい。それよりヤバイのが来ている可能性だ。

 伝達に来た者の言葉。




『人間の少女が乗っていた』




 それだけならいいが、悪いのはキマイラに乗っていたということ。ただの人間の少女が乗っている…………のはあり得ない。話から聞くには、キマイラは理性なんてあるようには見えなかった。

 つまり、見出される推測は一つしかない。




 上級種の竜が来ている可能性。




 上級種なら人間へ化ける魔術があってもおかしくない。それに、外国では人間の姿をした竜が現れたという情報もある。


(厄介な展開が来ちゃったな……)

 ”確かに、今の暁では上級種と戦うには早い。今から逃げるのが一番賢い選択だが?”

(ふっ、まさか。俺が逃げるとでも?)

 ”そこは逃げて貰いたかったが……、仕方がないか。暁はそういう男だと知っているからな”


 ステラは呆れているが、何処か心配するような雰囲気が読み取れた。ステラが本気で暁のことを心配していると知って、暁は少し嬉しくなった。


(安心しろ、俺は絶対に死なないし、必ず恩は返してやる)

 ”……そうか。なら、好きに動け。我も出来るだけ助けよう…………だから、死ぬな”

(おう)


 これから出会うことになる敵を必ず倒して生き残ると覚悟して脚を動かしていく。

 数分は走ると、とんでもないプレッシャーが襲いかかってきた。まだ姿が見えないのに、それだけの威圧がここまで届いていた。


「はぁ、ハァハァっ……」

「大丈夫か……?」

「う、うん」


 その息切れは走ったからだけではなく、プレッシャーが凄さ増しいことから精神を削られているように感じられていた。

 守だけではなく、他の隊員や杏里もそうだった。プレッシャーに負けず、走れているのは隊長全員と波剛総隊長、梨華、狭間だけだった。


(おや、狭間の奴、心が前よりは強くなっている? いや、覚悟を決めているような……)


 前の狭間だったら、守達側だったかもしれなかったが、あの事件があったから、そんな事件をもう二度と起こしたくない……いや、起こさせないという気持ちがプレッシャーに打ち負けなかった。


「っ! いた、構えろ!!」


 波剛総隊長の号令により、皆は全員がフォースを顕現して構える。

 資料に描いてあったのと変わらない姿のキマイラと…………その上に立つ少女。姿形だけなら、人間の少女にしか見えないが、その存在感はキマイラを凌いでいて隊員の中で怯えて気絶をする者が現れる。

 その少女が口を開く。


「ほぅ、前よりは強い奴が何人かいるな。私を楽しませてくれるか?」


 見た目はワンピースを着た少女だが、中身は妙齢の女性だと感じられた。正直に言えば、ヤバイ。この一言に尽きる。

 波剛総隊長も勝てないと理解させられたが、逃げるにはいかない。

 総隊長である指示が仲間の生死を左右させることを理解しつつ、中級種と同等のキマイラと上級種だと思える少女と戦うメンバーを頭の中で素早く采配する。


「キマイラはーーーー」


 言葉は続かなかった。少女が既に貫手で波剛総隊長の頭を貫こうと、目の前へ移動していたからだ。波剛総隊長は見えても反応は出来ていなかった。




 波剛総隊長は何も出来ず、頭を貫かれて脳味噌をぶち撒かれてしまう……………………………という幻覚を見たような気がした。

 波剛総隊長はまだ生きている。何故、生きているのか?




「やらせるかよ」

「やらせるわけないでしょ」




 フォースを顕現した暁と梨華が頭と貫手の間に刀と槍を挟んで、止めていた。反応出来たのは、この二人だけで他は反応出来ていなかった。


「へぇ、反応出来たんだ?」

「あっさりと仲間をやられるにはいかないんでなっ!!」


 暁が少女の腹へ向けて、プレートを顕現した拳で殴り付ける。腹にブチ込めたがーーーー手ごたえが少なかった。


「チッ、後ろへ飛んでダメージを減らしたか」

「あぁっ……」


 波剛総隊長は助かったことを理解して、腰を抜かしてしまう。死があっさりと迫ってきたことに恐怖して、脚が震えていた。

 そんな総隊長を見た暁は、すぐに見限った。


「キラキラか狭間さんが皆を指揮をして、キマイラをやってくれ」

「待って、暁はーー」

「俺は梨華と一緒にアイツを抑えておく」

「そうだね。アイツの相手は私と暁でやる」

「無茶な事を!?」


 上級種をたった二人だけで相手をすると言われたら、止めるだろう。だが、少女の攻撃に反応出来たのは暁と梨華だけで、他の人が混ざっても足手纏いにしかならない。

 むしろ、この二人しか相手にならないのだから仕方がない。


「……死なないでよ?」

「無理はしないで、頑張って!」

「こっちは任せて」


 狭間、守、杏里が続けて言葉をくれる。なんか、送り言葉のようで死亡フラグの気がしたが、言葉は素直に受け止めた。


「あぁ、無理はすんなよ」


 暁と梨華は言葉を交わずとも、わかっていた。お互いは一度は戦っているのだから、言葉はいらなかった。

 まず、この少女をキマイラと引き離すことからだ。それを理解しているのか、梨華が先に動いた。




「”激流渦潮”!」




 自由に動かせないように、少女の周りにある水分を操って、渦巻きのように激しい水流が少女を襲う。もちろん、少女が何もしないのはあり得ない。


け」


 魔術を使ったのか、ただの一振りだけで少女を囲んでいた激しい水流が弾け飛んだ。

 だが、それでいい。梨華の”激流渦潮”は暁を目晦めくらませるために使ったのだ。その試みは成功したようで、暁は少女の手を掴めた。


「これでさっきみたいに逃げられんぞ! ”三重・崩拳”!!」


 先程の一枚より多いプレートで、再び腹へ殴り込んだ。少女からうげっと小さな声を漏らして、森の奥へ消えていく。

 これで、当初の作戦は成功だ。相手が油断していたから、成功しただけで二度目はもう通じないだろう。


 暁はキマイラと上級種の存在から生き残れるように頭を働かせて、動き出すのだったーーーー








暁達は上級種相手に生き残れるか、お楽しみに!

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