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26.斬鮫隊

はい、続きです!

 



「……は? ちょっと待て、その名前でいいのか?」


 学校が終わり、東の防衛拠点へ向かった暁達は波剛総隊長へチームの名前が決まったと報告していた。


「何か問題があるのか?」

「名前に『竜』が入って…………いや、名前に入れては駄目の規則はなかったな。皆が『竜』と入れるのを無意識に避けていたから、お前らの隊が初めてになるがな」


 東ノ国では、『竜』をチーム名へ含めたチームはいない。他の国ではわからないが、東ノ国では暁達が初めてになるわけだ。


「『虹竜隊』か。わかった、上にもそう報告しておこう。紋章になるデザインは決まっているか?」

「あぁ、決まっている。それはあとでデザインを描いた紙を渡すから待っていてくれ」

「わかった。一週間で終わらないなら、出雲総隊長に渡しておいてくれ」


 しばらく、チームについての会話をしていたら、テントの中に入ってくる者がいた。

 その者は、守や杏里と変わらない身長で少女といった姿だったが、ジャラジャラと音がなる鎖を身体に巻きついて、ヤンチャしていそうな髪型にピンク色をしていた。


「あ? 誰だ、お前らは」

「貴女こそ、誰ですか?」


 お互いは知らない顔に目を細める。そこに波剛総隊長が話に割ってきた。


「あぁ、まだ顔合わせをしてなかったな。あの少女は斬鮫隊の隊員だ」

「ここにいるということは、もう一つのチームか。弱そうな奴らばかりだな」

「なっ! 私達はともかく、暁様を馬鹿にするなら許しませんよ!?」


 現れた少女は暁達を見回して、見下したような眼で暴言を吐く。それに杏里は暴言を吐いた少女を睨み、いつでもフォースを顕現出来るように構えていた。


「あん? この私に挑むのか、斬鮫隊のエース、梨華りかに?」


 杏里がヤル気だと見たため、梨華もフォースを顕現しようとする。


「ちょっと待ちやがれ! ここでフォースを顕現すんじゃねぇよ!」

「でも、私の気が収まりま……」

「杏里、今は止めとけ」

「はい、すいません」


 波剛総隊長が止めても杏里は渋ったままだったが、暁が言うとあっさりと闘志を引っ込めた。闘志がなくなったことを理解し、舌打ちをして挙げていた手を下げる。


「見掛け倒しかよ、情けないね」

「梨華、それ以上言うなら、お前だけではなく斬鮫隊に罰を与えるぞ?」

「チッ」


 梨華は斬鮫隊に迷惑を掛けたくはないのか、すぐに黙った。

 二人が大人しくなったことにホッと安堵して、椅子に座り込む。これで斬鮫隊の隊長達が来てくれば、無事に顔合わせをすることが出来るーーーーーーと思ったが、暁が動いていた。


「梨華と言っていたね。君のフォースは下級種? 中級種?」

「あ? それを聞く前にお前の名を名乗れよ」

「またーー」

「杏里、いいから口を塞ぐ」

「ひゃい……」


 杏里は言われた通りに自分で口を塞いでいた。返事が可愛らしくて、暁は微笑みを浮かべそうになったが、今は梨華と話が優先。


「悪かったね、俺は『虹竜隊』の隊長をやっている暁と言う。宜しくな」

「『虹竜隊』……聞いたことがないな。それに……いや、今は関係ないか。さっきの質問に答えてやろう。中級種のフォースだ、三年もこの力に付き合っているから、誰にも負ける気はない。自分の隊長や総隊長であってもな」

「ふっ、凄い自信だな。『虹竜隊』を知らないのは仕方がないよ。このチームを作ったのは二週間前で、名前はついさっきに報告したばかりだからね」

「……は? 出来たばかりのチームがここに来るとか、何考えてんだよ!? 確か、聖馬隊は北からだから、南の方か。南も人材に困窮してんのか?」


 結成されてから、二週間しか経ってないのに、ここへ寄越したことに憤っているようだ。足手纏いだからではなく、まだ経験が浅いチームを危険な場所へ送り出したということに怒りを向けているように見えた。


「それは違う。南は危険な場所にエースがいる『虹竜隊』を送り出しただけだ」

「アンタは、黒牙隊の狭間じゃないか。って、エース?」

「そう。西のエースが君でこちらのエースが暁になるわけだ」


 梨華は斬鮫隊だけではなく、西の防衛拠点ではエースと呼ばれる程に強いのだ。


「眠そうな顔をしたそいつが、南の総隊長より強いと言うのか? 信じられねぇ……」

「見た目では信じられないだろうけど、実力は確かだよ。何せ、一週間前に現れた中級種をほぼ一人で倒したようなものだし」

「はぁっ!?」


 中級種を一人で倒したと言われては驚かないひとはあまりいないだろう。


「眠そうな顔をした男が中級種を一人で倒したと言われてもすぐに信じられる訳がないでしょ!?」

「黙って聞いていれば、暁君のことをよく知らないで喚くとか恥ずかしくはないのですか? 暁君は強いですよ、何処かの鎖女と違って」

「っ! 何言ってんだ、私よりあの男が強いとでも言うのか?」

「当然でしょ」

「チッ、暁と言ったな? お前と模擬戦をするぞ。そこで、本当の実力を見せてやる」


 守と梨華が言い合いをしていたのに、何故か、暁と梨華が模擬戦をやることになっていた。

 暁は面倒そうだったが、後のことを考えれば、実力を見せてもらうのもいいと思った。


「待ちやがれ! 勝手に模擬戦をやるのは許さんぞ。今の状況をわかっているのか!?」


 波剛は模擬戦に反対のようだ。狭間がその会話に入る。


「模擬戦ね、いいじゃないの。お互いの実力を見る機会にもなるし、連携をするにはやはりお互いの能力を知っておくのもいいしね」

「む……」


 狭間の言うことに一理があったのか、少し考え込む。暫くして、溜息を吐いていた。


「はぁ、梨華。斬鮫隊の隊長は来ているよな?」

「えぇ……あ、噂をすればね」


 梨華の言葉と同時に、何人か梨華と同じ制服を着た者と聖馬隊の誠治がテントの中へ入ってきた。


「あら、梨華ちゃん。ここにいたのね」

「すまないが、これから模擬戦をやることになったから、花蓮かれんは回復を頼めるか?」

「模擬戦ですか?」


 おっとりとした女性は斬鮫隊の隊長であり、仲間にはない巨乳の持ちであった。波剛総隊長が言うには、花蓮と言う者は回復能力持ちのようだ。

 暫く、波剛総隊長が花蓮に説明をして、理解してもらった。


「わかりましたわ。そういうことなら、必要だと理解出来ますわ」

「おー、暁と梨華が戦うのか! 楽しみだぜ!」


 誠治は戦いを見るのが楽しみで子供のような笑顔だった。花蓮はふふっと微笑み、初対面である暁達にキチンと挨拶するのだった。


「貴方が梨華ちゃんと戦うのですね。お柔らかにお願い致すますわ」

「花蓮! そんなのはいいし!! 暁も本気でやらないと後から酷いからねっ!」


 梨華は本気でぶつかり合うのを望んでいるようだ。模擬戦なのに、本気で戦うのかと思ったが、苦戦するなら本気で戦っても良いかと思って、テントから場所を移すのだった…………







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