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24.情報

はい、どうぞ!

 


 ここはテントの中。大きく作られているようで、大人数が入っても余裕があるように作られている。

 暁達のチームと誠治がいる聖馬隊、本来ならもう一つの隊も来ているが、今はパトロールのために外出している。


「今回の応援に来て頂いてありがとうございます。私は東の防衛拠点にて、竜の研究をさせて頂いている久保と申します」


 ヒョロッとしたボロボロの白衣を着て、不健康そうな男が暁達の後から来て、挨拶をしてきた。


「私は街の中にある研究所にて、竜の生態を研究しております。今回は、どんな竜が攻めてきたのか、皆様が集まるまでに調べて置きました。これが、資料になります」


 ここが潰されて、半日も経っていないのに、既に調べ終わっていることに驚いていた。


「早いな。ふーむ、たいした情報じゃないみたいだがな」

「無茶を言わないで下さいよ。短時間で調査をして、報告しろと言われたら、全てを調べるには時間が足りないですよ」

「上層部が無茶を言ったみたいだな。もしかしたら、またここへ攻めてくるかもしれないかと怯えているからな」


 だから、急遽にここへ三つの隊を集めて調査も短時間で終わらせたのだ。

 また攻めてきた時のことを考えて。


「短時間の調査でわかったことは、資料に書いてある通りだ」


 暁達は資料を読んでいく。中には重傷を負った隊員からの情報もあり、竜の姿も描かれていた。

 竜の姿が、誰も知っているような姿ではなかったことに皆は驚いていた。

 中級種以上は殆どが竜のその物の姿をしているのに、この資料には……


 頭が二つあり、ライオンとヤギの形をしていて、それだけではなく尻尾も蛇になっていた。翼もあるが、小さくて、この巨体を浮かせるようには見えない。


「えっと、キマイラと言う空想の生き物に似ているよね?」

「確かに。合成獣とかも呼ぶわね。というより、竜には見えないのですが……」


 守と杏里の見解は同じようだ。暁もどう見ても竜の姿には見えず、下級種の竜もどきではないのかと思ったりした。

 だが、下級種では防衛拠点を半壊させる程の実力があるとは思えない。数が多ければ話は違うが、今回は一体だけで攻めてきたと書いてある。


「やはり、中級種なのかと怪しいと思うよな。だが、実力は中級種以上はあると間違いない。こちらには中級種のフォース使いが一人いたのだが、今は入院中だ」

(ふーむ、姿はキマイラで中級種以上の実力があるか)

 ”おそらく、竜の誰かが魔術を駆使して造ったかもしれんな”

(魔術で?)

 ”ああ、何体かの竜もどきを融合させて、強化しているな。姿から見て、最低でも三体以上の竜もどきが使われてるな”


 ライオン、ヤギ、蛇の特徴が出ているから、三体以上なのは間違いはない。


「資料には……書かれてないか。一つだけ、いいかな?」

「ああ、構わない」


 暁はステラが気付いたことを説明していた。この化け物は中級種の竜ではなく、下級種の竜もどき達を融合させた姿ではないかと。


「その可能性は私も考えていた。だけど、確証がないから資料に載せられませんでした。不確定なことは混乱を招くかもしれなかったので」

「なるほど。中級種以上の竜にも人間と変わらない知能を持っているから可能性もあるか」


 波剛も可能性があるのは賛成する。資料に描いてあるキマイラの姿を見ても、ただ下級種の竜もどきを何体か合わせただけで、防衛拠点を潰せる程の実力があるとは思えなかった。そして、防衛拠点だけを攻めた理由もまだわからない。


「なんか、竜が試しているように見えますね」

「試す?」


 誠治は資料を読みながら、そんなことを呟いていた。キマイラは防衛拠点を潰しても、街の方へ向かわなかった。まるで、防衛拠点が目的だと言うような感じだが、誠治は何かを試すために襲っているように感じられたようだ。


「む、魔術も使っていたか。ふむふむ、『確実ではないが、魔法陣が現れた瞬間に強化されたから、身体強化に通じる魔術を使ったかと思われます』か……」

「下級種は魔術を使わないはずだったよね?」

「いえ、この前のワイバーンも下級種に位置するはずでしたが、逃げるために魔術を使っていました」


 周りがザワッと驚愕するような雰囲気が現れていた。今までは、下級種には魔術を使えないという常識があった。だが、最近は下級種でも魔術を使うという新しい情報が出たのだから驚いても仕方がないだろう。


「なら、今回は実験のために襲っていた可能性が高まったな。キマイラも元は下級種の竜もどきで、更に魔術を使えるようにして襲わせた。そこでデータを取っていたかもしれないな」

「竜がそこまで考えて動くのか? 今までは本能に従って襲っていることが多かったから違和感を感じるが……」


 そこまで言って、言葉を止める誠治。少し考えれば、魔術という人間には出来ないようなことをやってのけるから、知能を持つ竜がいてもおかしくないと気付いたからだろう。


「そうだな、情報はここまでか。また新しい情報を見つけたら、知らせるように」

「はい」


 久保はこれで出番が終わったので、街の中にある研究所へ戻っていく。


「パトロールに出てる隊には俺から説明しておく。今日の夜のパトロールは聖馬隊に任せる。暁達は帰ってもいいぞ。明日の正午にはここへ来いよ」

「了解しました」


 希望に沿ってあるので、暁達から何も言うことはない。暁達は明日からが本番になるということで、今日はそのままバスに乗って解散をするのだった…………









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