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21.バスの中で

はい、続きです!!

 


 赤鷲隊と模擬戦が終わった後、暁達はバスの中にいた。


「はい、あーん」

「そっちよりもこっちを。あーん」

「何よ、このハーレムは……」


 バスの中で昼御飯を食べており、両脇からあーんされていた。暁はなんでもないように、差し出されたおかずをパクッと食べていく。

 前の席で呆れたような表情で見ている狭間がいた。


「甘ったるい所を見るぐらいなら、菊池隊長と変われば良かったかしら……」


 何故、狭間が一緒に東の防衛拠点へ向かうのか?

 狭間は臨時として、暁の隊に入ることと指示があったのだ。東の防衛拠点にいる間だけで、暁達は新参者であり、余計なトラブルを避けるために狭間副隊長は監督として一緒にいるのだ。

 菊池隊長でも良かったが、女性二人を任せる場面があれば、狭間の方がやりやすいと考えてのことだ。


「そういえば、狭間さん。他の防衛拠点から応援も来ていますよね?」

「……そうね、最低でも一つの防衛拠点からは一チームは送ってくるはずよ。東が破られたままじゃ、街が危険なのは何処も同じだからね」

「ふむ、またトラブルの予感がしそうだな。新参者の出番はない!! とか」

「そんな馬鹿を送るとは思いたくはないけど…………、可能性はゼロだと言えないわね」


 菊池や狭間がいる優しい隊もいれば、プライドが高い隊もいる。

 東の防衛拠点では、様々な防衛拠点からチームを送られてくるし、協調性がないチームを送って破滅となれば悪夢だ。そんなことはないように、最低でも協調性があるチームを送ってくるはず。

 暁達が協調性があるチームだと言えるか怪しいが…………


「向こうで仲間割れをしている場合じゃないよな。……なら、足を引っ張る馬鹿がいたなら骨を二、三本ぐらいは折ってもいいよな?」

「止めてよ!? 物騒なことを言ってないで、どうすれば仲良く出来るか考えていなさいよ」

「まぁ、配慮はしよう。だけど、話が通じないなら力付くになるけどいいよな?」


 欠伸をしながら答える暁に呆れて溜息を吐く狭間。話が通じない時は、大抵は力付くに言い聞かせることが多いのは何処も同じで、暁はそのやり方は否定しない。

 狭間もそのやり方は暁と同じように否定はしないけど、あとは二人はどうなのか心配だった。

 その視線に気付いたのか、暁は苦笑して答えていた。


「二人のことは気にするなよ。守は昔から口より手を出すのが早い方だ。出雲総隊長の時もそうだったしな」

「むぅ、それは総隊長の方が悪いんだもん。それに、いきなり襲い掛からなかったら話すぐらいの猶予は少しだけ与えるよ?」

「それは猶予というよりは遺言の間違いじゃね?」


 猶予を与えると言っても、力付くで言い聞かせるのは否定してないのは変わらないようだ。


「でも、杏里は…………」

「心配はありませんわ。もし、暁様に何かしようとする愚かな者がいるなら、蜂の巣にしてやるまでです」

「杏里の方が物騒!?」


 初めて、出会った時は気が弱い小動物のような少女だったのに、今は物騒なことを言うようになってしまっている。

 狭間は思わず、暁の方へ向いてしまう。


「いや、俺は何もしてねぇよ」

「え、だって……」


 ちらっと杏里に視線を向ければ、杏里はその意図を理解したようで、説明してくれた。


「私は暁様を失いたくはありません。暁様を害する者がいれば、排除をしないと、この前みたいに…………」

「……あ、ごめんなさい。私が助けられなかったばかりに」


 狭間は杏里の心に深い傷を残してしまったことに謝っていた。私が上手くやれば、あの時に助けられたのでは? そんなことを気にしていた狭間に声を掛ける者がいた。


「あんたが悪いわけじゃない。二人に心配を掛けてしまったのは、俺が弱かったからだ。それに、俺は生きているんだし、もう終わったことにウジウジと悩むな」

「でも……」

「あのな、あの時に落ちたお陰で、強いフォースを手に入れることが出来たから悪いことだけではない。それに、イゾルデも俺の能力が無かったら、皆は殺されて街も焼かれていただろう」


 暁の言う通りに、イゾルデを倒せる可能性があったのは、新しいフォースを手に入れた暁だけだった。

 狭間はそれを頭で理解しているが、心は申し訳ない気持ちで一杯だった。


「あー、これ以上に暗くなるぐらいなら話は終わりにするぞ。あと三時間ぐらいは掛かるんだよな?」

「え、えぇ」

「俺は寝ているわ」


 話をしている内に、食事も終わったので椅子に身体を預けて眼を瞑った。数秒で寝息が聞こえたから、本格的に寝始めたようだ。


「早いね……、これからのことに不安はないのかしら? この子は」

「ふふっ、暁様より自分のことを心配してはどうですか? 暁様は貴方のことを許しているのですから、それに応えては?」

「え、でも……」

「暁君はたまにキツイことを言うけど、どれも相手のことを考えてのことなの。狭間さんはまだあの事を気にしていますよね? でも、暁君はあの事を気にしすぎて、戦いに集中出来ないことを心配しているの」

「えっ」


 暁が私の事を心配している?


「気付いてなかったの? 暁君は狭間さんのことを仲間だと思っているんだよ」

「仲間だと認めた人にしか励ましたりしないよ。そのことに気付いたのは近頃ですけどね……」

「そうでしたか……」


 寝ている暁を見て、クスッと笑顔を浮かべる。歳下に励まされ、心配をしてくれていることにむず痒いと感じつつも、嬉しいと感じていた。


「……二人が懐くのもわかる気がするわね」

「え、何か言いましたか?」

「うぅん、何でもないの。…………ありがとうね」


 狭間は前よりは少し元気になったようで、これからのことに頑張ろうと思うのだったーーーー






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