20.模擬戦の結果
はい、書きあがったので載せますね!
では、続きをどうぞー。
坂盛は何処に行ったのか?
その答えが出る前に、焔の虎が襲い掛かってきた。真正面からではなく、素早い動きで暁の周りを動き回る。反応が出来ない程のスピードではないが、守と杏里だったら付いて行けなかっただろう。
「出てこないなら、先に虎を片付けるか」
プレートを展開して、虎に追いつく。虎は追い付かれるのは予測していたようで、尻尾を鞭のように振り回して近付かせない。初めは一本だけだったが、自分の体積を減らして十本の鞭を作り上げていた。
「チッ、操作性は拙いんじゃなかったか?」
”ほぅ、坂盛と言う奴はかなり努力していたんだな。それぞれの一撃が細かい”
流石に無策では、よく操作された鞭の相手に近付けなかった。これだけの操作を見せてくれるなら、少なくとも坂盛は近くで操っているのは間違いない。
「暁様! 頑張って下さい!!」
「暁君なら、勝てるよ!! 頑張れ!!」
場外で二人が応援していた。みっともない姿を見せれないなと微笑みを浮かべながら考える。
鞭は近付いたら間違いなく、何回か当たる。だが、その何回かを耐えれば行けなくもない。
(坂盛が何処にいるかは見当が着くけど、先に虎を片付けると決めたしな。なら、ここは自分の力を見せつけるのが正解か)
暁は少し考えて、フォースを顕現することに決めた。
「模擬戦だから、余り怪我をさせるつもりはなかったが仕方がない。『星空刀』!」
自分のフォース名を呼び、何もない所から水色の流線的な模様を描く刀を顕現させた。
「まず、鞭を斬り落としてやるよ」
グォォォォォォ!!
一気に十本の鞭が襲って来る。それを暁は恐れることもなく、前へ突き進む。
その時、何本か当たる軌道だったが、それを暁はーーーー
「当たる攻撃だけを切ればいいだけだ!」
言葉通りに実行して見せる暁。暁に当たる鞭だけを斬り落として、距離を詰める。
「そこ!」
近づかれていることに動揺したのか、テンポが速くなっている虎の攻撃。だが、それが隙を生んだようで足元にプレートを作り、一瞬で虎の前へ跳んだ。
「”三重・雷斬”!!」
雷ごとくの速さで上から刀を押し込んで、真っ二つに切り裂いた。
だが、それは罠だった。
「っ!?」
暁はすぐに気付いた。虎の中心に燃え盛る核のような物がヒビ割れるのが見え、嫌な予感を感じ取っていた。
虎は巨大な音と同時に爆発を起こしていた。
自爆をしたのだ。
暁はすぐに察知して、離れていたから無事だった。巨大な音によって鼓膜が破れていたが、戦いには支障はなかった。
だが、少しの間だけでも聞こえなくなったことに隙が出来ていた。それを見逃ずに、今まで地面の中で隠れていた坂盛が動いた。
「取ったーーーー」
真後ろから現れ、刀を持つ側の肩を狙われていた。まず、刀を離させてから、首に添えて負けを促す。
それが、坂盛の勝利方法だった。
近距離からの肩へ突きの攻撃、暁は聴覚をやられている。
普通なら、避けることも出来ない筈だった。
だったのにーーーー
「なっ!?」
「いい手だったが、聴覚は既に回復していたのが運の尽きだったな」
暁は肩を狙われていた剣を瞬時に振り返ってから掴んで止めていた。
暁には、常人にはありえないぐらいの自己治癒能力を持っているのだ。聴覚がやられていたのはたった一瞬だけで、瞬時に修復されていたから後ろから現れたことはすぐに気付いていた。
「これで俺の勝ちだな」
坂盛の首には星空刀が添えられていて、虎鉄は暁に掴まれている。
もう、勝敗は決まったようなものだ。
負けが確定した坂盛は困惑していた。
「なんで、聴覚がすぐに回復した!? 回復持ち……いや、あの薄いプレートがお前の能力じゃなかったのか!!」
「ん? もしかして、まだ広まってなかった?」
こっちに近づいて来る出雲総隊長に向けて聞いていた。出雲総隊長はニヤニヤしながら近づいて来たことから、アレはワザと言わなかったんだなーと透け透けと見えた。
「いい忘れたな。あいつは、二つの能力を持っているんだ」
「なっ!? 二つの能力持ちだと、聞いたことがありませんよ!?」
「そりゃ、初めてだからな。ほれ、模擬戦は終わりだ。掴んだ手を見せてやれよ」
「ほいほい」
虎鉄を掴んでいたため、手の平には大きな切り傷が出来ていた。だが、じゅぅ~と聞こえそうな薄い煙が出て、傷が塞いでいくのを見て、坂盛だけではなく、出雲と一緒に来た栗亜、羽瀬、回復使いの入谷も驚いていた。
「凄い、私の回復でもそんなに早くないわよ」
「って、出雲総隊長も大切な事は早く言って下さいよ……」
「二つ持ちなら、上級フォース辺りかな? 勝てるわけがないじゃん」
三人から様々な感想を言う中、坂盛は驚愕しっぱなしだったが、ハッと気付いた。
「…………私の負けだ。さっきまでの無礼を許して欲しい」
さっきまでの態度を変えた。暁が確かな実力を持ち、三人を納得させる程の腕を見せたことから、出雲総隊長が言っていたことに納得出来たからだ。
「構わないよ。挑発のはこっちだし、赤鷲隊の連携もこっちの二人にも見習わせたいと思う程に熟練度が高かった。また相手をしてくれるとありがたいね」
「ふっ、それまでは腕を磨いておく。次は私達が勝つために…………東に行っても無事の姿で帰って来い」
「残念だが、次も勝ちを譲らないがね。まぁ、ちゃっちゃと片付けてくるよ」
「生意気な」
坂盛はふっと笑い、自分の隊がいる所へ戻っていった。赤鷲隊はフォース使いの四人だけではなく、何人かの隊員がいるのだ。それらの人に説明をして納得させに行ったのだろう。
「凄かったです!!」
「うんうん、暁君が勝つのはわかっていたんだよ」
「守は戦ってもないのに、偉そうだな? 赤鷲隊の連携はちゃんと見たよな?」
「えっ、ええと……」
「すいませんが、霧で全く見えませんでした……」
よく考えれば、外から霧の中で何が起こっているのか見えるわけがなかった。
連携が良かっただけに、見せられなかったのは残念だと思った。二人を見て、そう思っていたが…………
(ん? 二人の様子が変わったな)
二人は顔を合わせれば、八割は言い合いになるのが常だったが、今は仲が少し良くなっているような気がした。
(ふむ、狭間副隊長が何かやってくれたのかな? 今度、お礼にお菓子の詰め合わせを渡した方がいいか……)
狭間副隊長に感謝を思いながら、空を見上げた。これから、東の防衛拠点へ向かい、中級以上の竜と戦うかもしれない。
だが、暁はどの竜にも負けるつもりはないーーーー




