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18.模擬戦

はい、続きをどうぞ!

 


「お前らは東へ出張だ」

「は?」


 緊急時の警報が鳴って、防衛拠点にいる皆が総隊長の部屋へ集まったかと思えば、いきなり出雲総隊長から暁達に向かって、そう言っていた。

 詳しい説明もなしに言われては、わからないのは仕方がないだろう。


「出雲総隊長、詳しく説明しなさい。それだけでわかるはずがないでしょう!」

「これから説明するつもりだったんだよ!!」

「でしたら、先に説明してから指示を出してください」


 出雲の隣に立っていた秘書が呆れながらも、説明するように促していた。


「あー、東の防衛拠点が襲われて壊滅した。だから、お前らに出張の指示を出す」

「……はぁ、防衛拠点を襲った敵が中級種以上の可能性があるため、貴方がいる部隊を東へ赴いて、まだいたなら討伐して下さい。いなくても、代わりの部隊を編成するまでに防衛をお願いしたいのです」


 足りない説明を秘書が捕捉していく。暁達はその説明でようやく理解した。敵は防衛拠点を一つ潰したぐらいだから、下級種はあり得ない。さらに、中級種クラスのフォース使いもいたが、その人がやられたことから敵は中級種、もしくは上級種の可能性がある。


「わかった。二人もいいな?」

「うん!」

「私も一緒に行きますわ!」


 暁は先程と違った雰囲気を感じ取り、狭間が上手くやってくれたとわかったようだ。実戦になったらわからないが、中級種以上の竜となれば、暁が前に立って戦うから問題はなかった。


「あの、新しい部隊だけ向かわすのは危険ではないですか……?」


 蓮田が隊員達の言いたいことを言っていたようで、頷く者もいた。まだ部隊が出来たばかりのチームだけを向かわせるのは心配だった。さらに、イゾルデとの戦いにいなかった隊員の中で嫉妬を向ける者もいた。

 出雲総隊長に気に入られて、重要な仕事を任されたと感じている者もいるようだ。


「正直に言おう。ここで正体が確実ではない中級種以上の敵に対応出来る奴は暁、一人しかいなかったからだ。ただそれだけだ」

「なっ……」


 きっぱりと言われて、呆気に取られてしまったが、やはり苦情を言う者も出てくる。苦情を進言したのは、三人いる隊長の一人だった。

 イゾルデの戦いでは出張していて、暁が出会うのはここが初めてである。その男は細身でメガネを掛けていて、インテリな雰囲気を醸し出していた。

 進言する隊長は一瞬、暁を一瞥しーーーー


「納得出来ません。私達の部隊、赤鷲隊なら中級種相手にも遅れを取りません!! 経験が浅いーーーーむしろ出来たばかりの部隊で訓練もまだ終わらせてない、若造達を行かせる貴方の正気を疑わないわけにはいきません!!」

「ほぅ、俺の判断が間違ってると?」


 出雲は口を歪めて笑っていたが、眼は笑っていなかった。威圧によって空気が重くなっているのを感じ、進言した隊長は睨み合いを止めないが、背中に冷や汗をかいているのを感じていた。

 衝突してしまうのかと、皆がハラハラと両者を見ていたがその空気を読まない者がいた。


「あー、その睨み合いは時間の無駄だから。そこのメガネに聞いていいかな?」


 横から口を出したのは暁だった。名前を知らないので、特徴であるメガネをあだ名として呼んだ。


「め、メガネ!? 私の名は坂盛だ!! 坂盛隊長と呼べ!!」

「あー、同じ隊長なんだから堅いことはいいだろ? んで、坂盛だったな。なんで、俺達じゃ駄目なの?」


 眠そうな表情だが、瞳の奥を覗き込まれて、恐れを少し感じた坂盛は一歩だけ後退してしまう。相対していた出雲は暁が話した方が解決しやすいかと考え、任せて下がっていた。


「あ、当たり前だろう。貴様達はまだ訓練を全て終わらせてない。討伐依頼を受けたいなら、それらの訓練を三ヶ月間受けてーーーー」

「それって、意味あるの? 既に竜を殺せる力があるのに、無駄な時間を掛けることに。それとも、無駄な時間を過ごせと規則で決まっているからと言うのかな?」

「き、貴様はーーーー」


 坂盛は額に青筋を浮かべて、隊員達がいる前で怒鳴り散らそうとするがーーーーまた暁によって遮られる。




「つまり、今は強いか弱いかの問題だよね。あんた達は中級種を倒す自信があるから出雲総隊長に進言している。それは間違ってないな?」

「あ、あぁ…………」


 怒鳴るタイミングを外されてしまい、そう言うしかなかった。だが、次の言葉によって眼を大きく開いてしまう。




「俺とあんた達の部隊で模擬戦をやらないか? もちろん、フォースも使う。勝った方が東へ行くでどうだい?」

「き、貴様は本気か?」


 暁は部隊同士での模擬戦と言っていない。暁は一人で赤鷲隊で戦うつもりだ。


「な、無茶だよ!? いくら暁君が強くても……」

「大丈夫だ。それに、守はともかく杏里は俺の戦いを知らないから丁度いいんだよ」

「あ、暁様がそういうなら、従いますが…………」


 暁の言葉を上官としての命令だと判断した杏里は少し落ち着かない様子だったが、従うことにした。


「本気なのか!?」

「赤鷲隊を舐めすぎじゃないの……? 赤鷲隊は私達の部隊と違って、中級種クラスのフォース使いがいるのよ」

「ほぅ」


 中級種クラスのフォース使いが含まれていることに楽しそうな表情になる暁だった。坂盛は黒牙隊が止めようとしても、暁が楽しそうな表情になったことが気に入らなかった。


「貴様は教育が必要だな。自分が言ったことに後悔するなよ?」

「やっぱり、そういう事になったか。まぁ、今回は回復使いが一人いるからフォースを含む模擬戦を許可しよう!!」

「出雲総隊長!?」


 あっさりと許可を出した出雲に秘書が止めようとするが、これから戦う両者がやる気満々だったので止めることはできなかった。

 と、赤鷲隊のメンバーで小さな女の子が手を上げていた。


「入谷は戦いに加わる必要はないよね?」

「そうだな、入谷は回復専門だから模擬戦に参加する意味が薄いな。下がって見ていろ」


 もし回復専門の入谷が気絶でもしてしまえば、怪我人を治せないから下がらせるのは当然だろう。


「へぇ、その子が回復のフォースを使うんだね。回復のフォースには詳しくないから幾つかの質問いいかな?」


 気になったことがあったので、隊長である坂盛から眼を外して、直接に入谷へ言葉を向けていた。


「手短にね」

「じゃあ、四肢欠損とかは治せるかい?」

「うーん、繋げるなら出来るけど、元が無くなってしまったら治せないね」

「ふむ、フォースも万能ではないか。教えてくれてありがとうな」


 質問はそれだけだったようで、すぐに離れて二人の元へ戻っていた。


「訓練場へ向かうぞ!!」


 出雲総隊長の指示通りに皆は訓練場へ向かっていく。暁は一人で数人を相手にするのに、気負いもなく欠伸をして歩いていた。それを目撃した坂盛は眉をピクッと動かしたが、何も言わなかった。これからの戦いで思い知らせるつもりなのだからーーーー








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