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16.樹海に潜む者

はい、どうぞ!!

 


 東ノ国の南に当たる場所では、暁が在籍する対竜部隊の拠点がある。世間では訓練所と呼ばれているが、四つの部隊を抱えている防衛拠点とも言える。

 防衛拠点は元静岡県に位置する場所だけではなく、他に三箇所も設置されている。東西南北全てに設置されており、竜王がいる塔は北海道にあるため、北の防衛が東ノ国で一番の防衛力を誇る拠点が置かれている。

 部隊の数だけでも七つもあるだけではなく、部隊の隊長、副隊長全員が中級種クラスのフォース使いであるのだ。

 その反対に防衛が薄いのは東ーーーーつまり、危険が少ないのが東に位置する場所ではある。

 そこに二つの危険が現れるーーーー




 防衛拠点の周辺にて、二つの影が現れる。一つは人型、もう一つはどの形にも当て嵌まらない異様な形をしていた。


 ”ふふ~ん、玩具の完成だわ。これで面白いの観れるといいな~~”


 人型の影は鼻歌を歌いながら、玩具と呼ばれた異様な身体をした化け物に防衛拠点を襲うように指示を出した。


 ”さぁ、不細工な玩具よ。あそこを潰して見せなさいなーーーー”




 ーーーーーーーーーーーーーーーー




 同時期の南では、暁達は訓練を終わらせて防衛拠点へ戻っていた。

 だが、暁の機嫌が悪くーーーーその原因は目の前で正座している二人にある。


「まさか、ここまでボロボロだと思わなかったよ……」

「ご、ごめんなさい……」

「暁様の期待に応えられなくてすいません……」


 土の上に正座していたのは、先程に竜もどきと戦った守と杏里だった。後ろで狭間が苦笑していたが、正座を止めようとしてなかった。


「聞こう。何故、守は杏里を守らずに前へ出る? 杏里も遠距離の武器を持っているのに、守に対抗しようと前に出たんだ? 俺には二人の考えが理解できないぞ……」


 小型の竜もどきを見つけた二人が起こした行動は、狭間が呆気に取られる程に前へガンガンと進めだった。まるで、二人はどっちが先に討ち取るか競争しているようで協力なんて全くしてなかった。

 守は圧し潰そうと、二枚ある光の壁を挟みこもうとしていた。自分と杏里の守りを考えずに。

 杏里は体力を考えずに沢山の矢を作り出して乱れ撃ちをしていた。周りに味方がいるのを考えずに。


 その結果が、光の壁と土の矢の衝突でお互いが相殺していた。その隙を突かれて、小型の竜もどきはスピードを活かして二人の近くまで走り出していた。

 守は光の壁を壊されたため、すぐに次の光の壁を生み出せない。杏里は体力を使い過ぎたせいで膝を地に付いていて、矢を作るどころではなかった。


 もし、すぐに狭間が助けに入らなかったら二人のどちらかが怪我をしていた。それらの結果を見た暁はすぐに訓練を中止にして拠点へ帰っていた。

 ーーで、正座をさせたわけだ。


「二人は協力する気はあんのか?」

「う、負けたくないと思って……」

「わ、私も思って、勝手に身体が動いていました……」

「…………成る程な。あー、理解したよ」


 つまり、二人は張り合っていて、協力するよりも「この人には負けたくはない!」と前へ出てしまっただろう。暁は昼休みに良く言い合いをするのを知っていたが、まさか敵を前にしても張り合おうとするとは考えなかったのだ。

 これは今のまま組ませては駄目だと理解し、どうするか考えている。暁にも、二人がお互いに負けたくないと思う程に張り合うと考えなかった責任もある。

 だから、無闇に叱り付けようとは思わなかった。だが、この状況になった場合の対処法を知らない暁はすぐに考えるの諦めて、狭間に向かい合った。


「すいませんが、このケースはどう対処すればいいかわからないので、部隊を率いている先輩の意見を聞きたいのですが、いいですか?」

「お、わからない時はすぐに聞くんだね?」

「自分で考えてみたけど、単独に戦わせるには基礎的な体力や技術に経験が足りないので、その考えは捨てました。だけど、協力させようとしても、さっきのようにお互いが脚を引っ張りまくってしまう」

「少しの間で、それだけ考えていたのね。さらに、対処法が思いつかなかったから捨ておくことをしなかった。そこは高ポイントね」

「命を預かっているので、当たり前のことですよ。力を貸してくれる、大切な仲間である二人を死なさせるにはいきませんからね」


 大切な仲間と言われて、二人は正座をしていながらも頬を赤くして嬉しそうにしていた。


 ーーまぁ、あれだけ考えてくれているから頑張ろうと思っちゃうよね。

 だから、ライバルである相手に負けたくはないのね……


 暁は思いつかないと言っているが、狭間はそんなに難しい問題だと思っていなかった。二人はお互いをライバルだと思っていて、張り合っているが…………目的は二人共同じなのだから。




 ーーーー暁のため。




 目的はそれに終結しているのだから、狭間はやり方を伝えるだけでいいと考えている。


「……よし、この件は私に任せてくれない? この場合は女性だけの方がいいから、暁は他のことをやって待っていてくれる?」

「む、そうか? なら任せていいか?」

「先輩に任せなさい!」


 狭間は自信満々に言うので、それを信じて任せることにする。暁はちょうどやることがあったので、三人から離れた。


「あ、あの……?」

「ここでは話しにくいし、私の部屋に行こう」

「あ、はい」


 狭間は内容が内容なので、周りに誰もいない場所が良いと考えて二人を黒牙隊の待機部屋、その周りにある自分の部屋へ招待する。




 ーーーーーーーーーーーーーーーー




 一人になった暁は歩きながらステラと話をしていたことを思い返している。あの時、暁の質問に対してステラの返答はーーーー








 ”今のままじゃ、塔の中には入れんな”

「なに?」


 木の上であることを忘れて、一歩前へ踏み出していた。


 ”慌てるな。お前はまだ弱いのもあるが、塔の中へ入るには手順がある”

「手順……」

 ”まず、『魔術』の説明をしておこう。暁にとって、魔術とはなんだと思う?”

「いきなりだな、魔術か……。様々な能力を使えるようになるイメージがあるんだよな。イゾルデの時は無かったが、浮かぶ魔法陣みたいな奴に意味があって、物理を無視した現象を引き起こせる……」

 ”成る程、大体は合っているな。そう、魔術には魔法陣が必ずある。魔術の上級者なら隠すことも可能だが、人間相手には意味はないな”

「やはり、魔法陣には人間に理解できない意味があったんだな」


 魔法陣を隠す、見えなくするのは魔法陣から魔術の意味を読み取れないようにするためだが、人間は見ても理解できないので隠す意味はないということ。


 ”竜の『魔臓器』から生み出される魔力によって、魔法陣に記載された魔術を発動する。あ、魔臓器とは人間で言うと弱点みたいなものだ。どの竜にも左胸にあり、壊されたら死ぬ”


 ステラの左胸に穴が空いてあったことを思い出した。ステラが言う弱点は人間で言うなら心臓のようなものだろう。


 ”説明を聞くだけなら、魔術は様々な能力を使える。と考えてしまいそうよな?”

「まぁな……」


 魔法陣に記載した意味がそのまま現実に現れるなら、どんな効果でも魔法陣に記載すれば発動できると思ってしまう。リスクは魔臓器から生み出される魔力が減るだけで、魔力を体力と同等と考えたら、それ程にキツいリスクではないと暁は考えていた。

 だが、ステラはそれを否定する。


 ”魔術は完璧ではない。何処か欠点が必ずある”

「は?」


 魔術は完璧ではない? 『竜の襲来』の日に竜が様々な現象を起こしてきたのを見てきただけあって、信じられなかった。


「欠点があるって……火は水に弱いということとか?」

 ”それもある。では、塔の話に戻ろう。塔も魔術で造られた存在。竜以外を中へ通さない塔…………という認識になっているだろう?”

「そうだな、他の国はミサイルを打ち込んだこともあったが、無傷だった。どんな攻撃にも壊れず、竜しか中へ入れない鉄壁な塔だと思っていたが…………欠点があると?」

 ”そうだ。言っておくが、竜以外を通さないような魔術はない。この我が言っているのだから確実だ”

「つまり、塔は必ず中へ入れる方法があると?」


 ステラは竜だけが有利になるような魔術なんて、ないと言っている。使う側が有利になるための魔術だが、種族を限定するなどの細かい設定は初めからないのだーーーー


 つまり、今建っている塔は竜以外が通れない道しか用意されていないように見えるが、実際は道が隠されているだけで必ず人も通れる道があるという。


 ”ただ、道が隠されているのではなく『鍵』が設定されているな”

「鍵だと?」

 ”そうだ。人間には見えてないが、我には見えている。塔を覆うような大きさになっている魔法陣が……”


 暁はステラの説明を頭の中で纏めていくと、知りたいことがわかっていく。


「成る程、イゾルデが使っていた魔法陣を隠す魔術も使われていたのか。で、ステラにはその魔術が効かなくて、塔を覆う魔法陣が丸見えだった。そして、竜しか入れない理由がその『鍵』に関わっているのがわかったわけか!!」

 ”ふふっ、そこまで辿り着くとは頭が良いんだな。そう、塔の欠点は『鍵』があること。まさか、竜である我が人間の味方をするとは考えてなかったから、完璧に見えた塔の魔術も崩れているな”

「あぁ、魔法陣が見えても人間には読み取れなかっただろうな。しかし、もしかしたら解析される危機も考えて、更に見えなくする魔術も掛けていたようだったが、意味はなかったな」


 これで暁はやるべくことがわかってきた。まず、その『鍵』を探すことから始めればいい。と思ったが、それは簡単なことではないと話の続きでわかった。ステラが言う『鍵』とはーーーー




 ”ここから北にある塔の魔法陣に記載されていた『鍵』は、ミザール。『ミザール』という竜が持っておる”




 ステラがいう『ミザール』、北斗七星の一つと称されている名である。その名前が偶然なのか、わからないが確実にその竜は鍵を預かるぐらいだから上級種と考えても間違いはない。


 上級種と戦う自体はいいがーーーー何処にいるかわからない竜を探すことから始めなければならない暁は面倒そうだなと溜息を吐きたくなるのだった…………








感想と評価を待っています!


まだこの小説があることを知らない読者に伝える方法とかあれば、教えていただきたいです。

宜しくお願いします。

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