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13.星空刀

暁がフォースを顕現しました!





 


 ここにいる者は全員が驚いていた。ずっと一緒にいた守、反撃の状況を整えていた出雲、気絶はしてないが動けない菊地と狭間。

 暁のフォースになる『星空刀』は暁の身長と変わらない長さを誇り、綺麗な水色の流線的な模様がある。


「お前もフォース使いという奴だったか」

「まぁ、隠していたけど今はそんな場合じゃないしな。ほんの一部でしかないが、俺の力を見せてやるよ」

「は? ほんの一部だとーーーー!?」


 イゾルデの言葉は続かなかった。何故なら、既に暁が一回のジャンプだけで、空中にいるイゾルデへ迫っていたのだから。ジャンプした地面は抉れており、凄さ増しい脚力だとわかる。


「舐めるな!!」


 驚愕はしたが、自分の影から黒い剣が出てきて、防いでいた。さらに影から別の黒い剣が現れて、暁を突き刺そうとする。空中では人間は動き回れないのだから、イゾルデは勝ちを確信していた。

 守が暁を守ろうと光の壁を出そうとしたが、距離が遠くて届かなかった。


「暁君!!」

「剣も生み出せたのか。だが、俺が考えもなく空中へ跳んだと思ったなら、間違いだーー」


 暁は空中を蹴り、剣を躱した。空中を蹴って移動したことに皆が呆気に取られる。

 皆が呆気に取られる中、出雲だけは『星空刀』の能力を分析して、暁の行動からある程度は掴めていた。


「その刀は空中を自在に駆ける能力を持っているんだな!?」

「うーん、惜しいけど違うかな」

「なっ!?」


 いつの間に暁が出雲の後ろに立っていた。向こうでは黒い剣を振って空振りしている姿があった。空中を自在に動けたとしても、このスピードは早すぎる。


「その線は近いけど、別にこの剣は空中を駆けるだけの能力じゃない。使いようで、空を駆けることが出来ただけなのさ」

「なら、どんな能力が?」

「自分で見つけな。まぁ、俺をよーく見ればすぐにわかるだろうけどな」


 こっちに気付いたイゾルデは、自分を馬鹿にしているのかと怒りながら暁がいる場所へ向かっていた。暁も先程と同じようなスピードで跳び出して、イゾルデの翼を狙う。


「貴様! なんだ、そのスピードは!?」

「反応が良いな。真正面からは難しいなら、全方向から攻めてやればいいだけだ」


 さっきみたいに早い動きではないが、空中で上下左右に動き回ってイゾルデを翻弄する。イゾルデは本能に従って動く下級種とは違って、考えることが出来、暁の能力を分析していた。捕捉できなくて身体に傷が出来ていく中、イゾルデは気付いたことがあった。


「貴様、さっきから一定のスピードしか出してないな? さっきの凄さ増しいスピードは本気でやったのはわかるが、わざわざ一定のスピードでやる必要はないはずだ……」

「一定のスピード……」


 出雲もイゾルデと同じように暁の行動に違和感を感じ取っていた。それが方向を変えるとき、スピードが一定であったことに疑問を感じていた。リズムよく動くより不規則に動けば、更に捉えにくくなるのだから。出雲は暁をじっくりと観察していたら、方向転換する時、足裏に何か薄いプレートの様な物が光っていることに気付いた。

 そのプレートを踏むように跳び出していくと、その板は割れて消えていったが、見るには初速が早いと感じられた。


「あぁ、成る程。推測が当たれば、スピードが一定になっても仕方がないわな」

「え、何に気付いたのですか?」


 出雲の近くには怪我した隊員が集まり、守も側にいた。纏まった方が守りやすいからだ。聞いていた守と隊員達はまだ暁の能力はどんなのかまだ掴めてなかった。


「暁の足裏を見てみろよ。薄いプレートみたいのがあるだろ?」

「…………確かにありますね」

「それが『星空刀』の能力ってことだ。あの薄いプレートはおそらく、反発を生み出している」


 よく見れば、暁の初速は一番早くて勢いがあることから反発の力を使った移動だと推測出来る。イゾルデも同じ答えに辿り着いたようで、暁に向けて叫んでいた。


「読めたぞ、お前の能力は反発を持ったプレートを生み出すんだな!? さらに、足裏へしか発現出来ない!!」


 反発を使った移動なら、プレートの向きにしか跳べなくてすぐに方向転換は不可能。さらに、カウンターが弱点だと呼んでいた。


「これで終わりだぁぁぁぁぁ!!」

「短い間にそこまで見抜くとはな。だが、一つだけ間違いがあるぞ」


 暁が足の裏に薄いプレートが張ってるのを確認したイゾルデはその向きを読んで、人間の身体ぐらいに大きい剣を振るう。そのタイミングは完璧で、すぐに脚を動かして向きを変えるには遅い。このままなら、イゾルデの言う通りに終わってしまう。だが、イゾルデは一つだけ間違えていた。


「ーーーー今!!」


 暁は向かってくる剣に手を伸ばしていた。さらに、掌に薄いプレートが三重に重なっていた。そのプレートと剣が当たった瞬間に、黒い剣は弾かれて手から離れた。


「な、なにーーーーーー!!」

「掌にも展開出来るんだよーーーー」


 弾かれて隙だらけになった身体に向けて構える。両腕を使った弾きと似た構えだが、違う場所は身体を捻って左手の掌が星空刀に当てていたことだ。




「”二重・雷斬”!!」




 弾きではなく、反発を使った技。二重になったプレートを星空刀に当てることで、振り抜くスピードを倍増させる。倍増させた刀は雷だと錯覚させるぐらいに早い。その刃がイゾルデの身体にめり込んだ瞬間、暁はやれると思っていた。だが、イゾルデはまだ諦めてなかった。自分の影から手が現れて自分の尻尾を引っ張ることで、斬れたのは脇腹だけだった。


「ギガァァァァァァ!! まだまだ!!」

「チッ!」


 避けたイゾルデは武器を持たずに、拳で暁を殴りつけてきた。それを能力で避けるには時間が足りなくて、刀で受け止めるしかなかった。

 フォースの刀は強固な物であり、殴りつけられても傷一つなかったのは凄いが、暁本人は無事じゃなかった。

 両腕は強化されていたので、ヒビが入る程度で済んだと言え、脚から地面に着地した脚は完全に折れていた。


「ぐぅっ!?」

「あ、暁君!?」

「手と脚がやられたか!? 回復のフォースを使える奴はいるか!!」


 出雲が周りにいるフォース使いに回復のフォースを使える者がいるか聞いているが、いないようだ。三チームの部隊で隊員の中に二人はいたが、どちらも出張している。


「ふ、ふはははっ!! 頼りの坊主も動けない。これで終わりだぁぁぁぁぁ!!」

「ち、まさか影を自在に操れて、生き物も作れる能力だったのかよ」

「私が守る!!」


 守が前に出るが、戦況は間違いなくイゾルデの方に傾いている。イゾルデもすぐに魔術を放たずに溜めているようだった。


「間違いなく、今までの魔術よりも強いのを使ってくるはずだ!!」

「私の盾じゃーー」

「あぁ、無理だ……」


 中級種が本気の魔術を使ってこようとしている。守が本気で守ろうとしても破れるのが見えている。


「くっ、どうすれば!!」


 出雲はまだ諦めていなくて、なんとか避ける方法を考えていた。後ろで両腕両脚が治って立ち上がっている暁に気付かずにだ。

 守も暁の前に立って、イゾルデに恐怖しながらも睨んでいたから、後ろにいた暁が屈折体操をしていることに気付かなかった。

 さらに後ろにいた隊員の皆は暁の様子へ呆気に取られていた。


「よし、溜まった。さっさと消えーーーーーーーーは?」

「馬鹿か。回復させる時間を与えるなんてよ」

「暁君!?」

「はぁっ!? 折れていなかったのか!?」


 イゾルデの前には、既に暁が現れていた。気付いてなかった二人は驚愕していた。

 イゾルデは一瞬だけ固まっていたが、すぐに切り換えていた。すぐに魔術を発動すれば、暁は何も出来ないという自信があった。




「”暴風陣”!!」




 先程と同じ魔術だが、その規模と威力が違っていた。それに対抗するように、暁も自分の能力を使う。


「脚一本ぐらいは覚悟するか」

 ”どうせ、すぐに治るだろ”


 ステラから呆れの言葉を頂いたが、暁は気にしない。痛いものは痛いのだから。

 暁は右脚の足裏を魔術の中心へ向けて、十重となったプレートが現れる。移動するのと違って反発の力は敵の方へ向けられる。




「”禁忌・崩脚”!!」




 十重に重なった威力は衝撃を完全に受け止めきれずに、自傷するのはこの前の夜にわかっている。だから、禁忌と名付けたのだ。

 自傷してしまうが、その分の威力は抜群だ。




 ドバァァァァァーーーーン!!




 右脚は複雑骨折に筋肉の繊維が切れてしまって血だらけになっているが、魔術は完璧に消し飛ばされていた。


「な、何が…………」

「今度は避けられないぞ。”三重・雷斬”!!」

「しまっーーーー!?」


 渾身の魔術がただの脚蹴り……ヤクザ蹴りと言うべきか。その蹴りによって破られてしまったのだから、信じられないと思うのは仕方がないだろう。

 その隙を突かれ今度こそ、イゾルデは首を斬り落とされて地に落ちてゆく。


「終わったか…………あー、痛え」

 ”良くやった。魂の一部を喰えたぞ”

「そうか」


 ステラの魂である『創刀七星』の回復には、竜の魂を一部頂くことが必要なのだ。それも、中級種以上なのだから、苦難の道と言われても仕方がないだろう。戦いが終わった暁は地面へ降りていく。地面に着くと、皆が興奮した状態で集まっていた。暁は溜息を吐きながら、周りを見回すと予想していた通りに質問の嵐が来た。まず…………


「なんで、動けるんだよ!? 骨が折れてなかったか!?」

「それを聞かれると思ってたよ。これも星空刀の能力で、自己治癒が高まる効果があるわけだ」

「……は? 能力を二つって、聞いたことがないぞ!?」


 本来は星空刀の能力ではなく、暁本人の能力になるが、それは言わない。面倒事になるのはわかっているからだ。

 次に、守と狭間が質問してきた。


「私も聞きたいけど…………いつ、そのフォースを手に入れたの?」

「この前からあなたの事を調べたけど、三年前に申請して不合格していて、今も政府からはフォース使いではないと聞いているのだけど……」

「あー、それも説明しないとな。信じてくれるかわからんがな…………」


 これも本当のことを言わずに、崖から落ちた時に死にかけの竜へ出会ったと話を始める。その竜は人間に対して敵意を持っていなくて、死ぬ前に力を残したいと言ってきたので、それを受けた。

 それで、二つの能力を持ったフォースが生まれたなどと真っ赤な嘘を話した。この話なら八体目の竜王から貰ったよりは信じてくれるだろう。


「信じられないような話だが……その力を直に見せられては嘘だと言えないな」

「凄い、運が良かったのね!! しかも、あんな怪我がもう治っている!?」

「凄い治癒能力……だから、あんな無茶苦茶な攻撃が出来たのね」


 狭間は”禁忌・崩脚”のことを言っているだろう。そんな技はこの治癒能力がなかったらやらなかっただろう。


「アレだけの威力に強さなら上級種クラスのフォース使いと言えるじゃないか」

「うむ、決めた。条件は無条件に受けてやろうじゃないか!! だから、この部隊に!!」


 出雲は暁が上級種クラスのフォース使いだとわかり、どうしても入れたいと考えていた。だから、暁の言う条件は必ず叶えるつもりだ。


 ”暁が強いとわかったとたんに、これは現金ねぇ”

(まぁ、仕方がないだろうな。実際に中級種の竜を単独討伐したようなものだし)


 暁が望む条件はいくつかあり、今の暁に必要なことであったので、この誘い文句はありがたかった。

 中級種を一人で倒したから、そのことはすぐに広がるだろう。だが、とっくにその覚悟は出来ていたので、暁は眠そうに欠伸をして何とかなるだろうと考えていたのだった…………








次で1章が終わります。


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