12.中級種『イゾルデ』
明日からは書く時間が減るので、ストックが切れたら書き上げて載せるといった感じになります。
宜しくお願いします。
自分の上司である上級種から命令を頂いて、自分は日本と言う島国にいる。試作のワイバーンを追い詰めた者がいる東ノ国へ向かい、蹂躙せよとの命令だ。
中級種の『イゾルデ』は身体全体が真っ黒でワイバーンと違って両腕がある。ワイバーンの場合は翼が両腕のような物だが、中級種以上は背中に翼があって、魔術によって重い身体を支えて飛ぶことが出来るのだ。
ようやく東ノ国が見えるようになり、その前にある訓練所となる場所がある。そこには、対竜部隊が在籍しているのは聞いている。
ーーまず、そこを潰すか。
体長五メートル以上はあるイゾルデは翼を唸らせて、能力を発動する。様々な竜がいる中には魔術と違う特別な能力、『固定能力』と言う特別な能力を持った者がいる。
イゾルデもその分類であり、自分の影から三体の小さなワイバーンが現れる。どのワイバーンも真っ黒で、身体も普通のワイバーンより小さいが、人間よりは大きい。訓練所へ着き、上空で宣言をする。
「私はイゾルデ! まず、ここの領地を頂きに参った!!」
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(宣言してくるとは、堅気な竜なのかな)
”ふふっ、たまにその様な竜もいるのだ。しかし、固定能力を持った中級種を送り出してくるとはな”
(固定能力?)
”そうだ。周りにいる黒いワイバーンがいるだろ? 黒いワイバーンなんて初めからいないし、魔術では生きた竜なんて作れない。だから、必然的に固定能力と判断出来る。固定能力とは魔術と違って、強力な物が多い。だが、数少ない竜にしか使えないから安心しろ”
(はぁ、今は安心出来る状況じゃないってことだろ……)
ステラの話では竜の中でも固定能力を持つは少ないと言う。だが、上空に浮いている竜はその固定能力を持っているのだ。
暁は皆と外に出ており、建物がない訓練場にいる。訓練所にいたほぼの隊員はここに集まっていた。自分と守を除けば、戦える隊員は11人。他は訓練所の外へ出張しているらしい。
「フォース使いはあの中級種を狙い、他は黒いワイバーンをやれ!」
「「「はっ!!」」」
「学生二人は戦えるなら、黒いワイバーンをやる隊員のサポートをして欲しい!!」
「なっ、総隊長! 学生に戦わせるつもりなんですか!?」
まさか、学生二人にも戦わせるとは思っていなかった狭間は反対していた。だが、出雲の返事は冷めた声だった。
「考えてみろ、この戦力では勝てるかわからねぇ。俺の秘書に他の場所へ応援を頼みに向かったが、早くても一時間ぐらいはかかるだろう。もし、負けたら街へ向かう可能性がある。なら、ここにある全戦力を出し惜しみにしている場合じゃねぇ!」
「しかし……!」
狭間はこの前、暁に戦わせて崖へ落とさせてしまった。無事だったといえ、危険に晒したのは間違いない。
「わかったよ。あのワイバーンをやればいいんだろ?」
「貴方!?」
「構わないさ。もし負けたら街に逃げても意味がないし、俺もここが潰れては困るんだよ」
「え……?」
暁は意味がわかってない狭間から眼を逸らして、出雲へ向けた。
「もし、ここを切り抜けたら……わかっていますよね?」
「やはり、喰えねえ奴だな。条件の話だな?」
「そうだ。無理な条件は言わないから安心しろよ」
「くくっ、面白えな。なら、先に結果を見せてみせろ」
出雲は腰に付けていた剣を暁に投げ渡していた。隊員と同じアルゼニウムが混じった剣で、これがあれば鋼鉄の剣よりは斬れる。
「よし、フォース使いは俺に続け!!」
出雲もフォース使いで、フォース使いは守を除けば六人いる。それらが自分のフォースを顕現して、イゾルデへ向かう。暁も守を連れて、既にワイバーンと戦い始めている隊員へ合流する。
「守、巻き込んですまないな」
「いいよ! 私は暁君の護衛だから!!」
守の脚が僅かに震えていることに気付いたが、この戦いに勝つためには守の力が必要である。暁はまだこの力を使って目立つにはいかないからだ。あと、守の力があればワイバーン程度なら無理しなくても勝てる考えもある。
「出雲総隊長からの要請で、手助けをしに来た!!」
「な、出雲総隊長が…………わかった。二人は、もう一人の隊員と組んで、一体をやってくれ!!」
「了解した!!」
訓練もしてない学生が前線へ加わることに驚愕したが、出雲総隊長からの要請と聞いて、すぐ班を組み直した。戦場にて、出雲総隊長の命令は絶対なのだから。
一緒になった隊員は護衛をしてくれた大太刀持ちの男性だった。
「お前達も戦うのか!? あれ、その剣と盾は……」
「この剣は出雲総隊長から貸してもらった。あと、守は防御系のフォースを持っている!!」
「成る程、フォース使いがいるなら一番先に倒せるかもな。俺は剛でいい。手助けを頼んだぞ!!」
簡単に説明を終わらせ、分断したワイバーンへ向かう。黒いワイバーンは能力で作られたとステラが言っていたから、イゾルデは闇か影から生き物を作る事が出来る能力を持っていると予測する。
(三体までしか出せないのか? もし倒しても復活出来ないか?)
”それはわからんが、固定能力を使う時は魔術を発動するよりも消耗するはずだ”
(成る程……)
消耗するなら無限ではない。それだけわかれば充分だった。暁は剣を抜いて、ワイバーンを睨む。
「俺が前に出る! お前らは横から攻撃を加えてくれ!」
「わかった」
「うん!」
ワイバーンはまだ飛んでいるので、ファーストアタックは守が受け持つ。守の能力は光の壁を二枚まで同時に操る事が出来る。一枚は必ず自分の側に置き、一枚は攻撃したり他の人を守るために動かす戦法を軸に置いてある。その戦法を推奨したのは暁であり、下級のフォース使いである守は身体能力を強化することが出来ないから、守自体はただの女子校生なのだ。
中級種以上のフォース使いとなれば、武器を出している間だけ身体能力を強化出来る。その見本が、向こうで戦っている出雲総隊長も中級種のフォース使いであり、他のフォース使いと違う動きをしていた。
「守、そのワイバーンを払い落とせ!」
「うん!!」
守が前に出ていく。ワイバーンに出来るだけ近付くためだ。もちろん、自分の守りを固め終わっている。
「ここからならギリギリかな……?」
ワイバーンは飛び回って、こっちの隙を伺っているが、守はその動きに合わせて動き回っていた。守は外で遊ぶのが好きであって、スタミナと脚の速さは結構高い方だ。
ようやく、守が範囲内へ入ることが出来たのを感じ取ってから、ワイバーンの上空へ”硬撃盾”を展開させた。
守が操れる距離も限界があり、15メートル内と決まっている。
「今っ!!」
「ピ!?」
出雲にやったのと同じように、盾を突撃させた。死角になっていたワイバーンの上からの攻撃は避けられず、直撃していた。そのまま、地面まで押し込めば、潰れて終わりだったがーーーー
「抜け出されちゃった!?」
「充分だ! 剛、左を頼む!!」
「了解だ!」
暁の狙いを察知し、暁と剛が同時に動いた。今のワイバーンは先ほどより地面に近くなったので、剣が届く。低く飛んでいる今がチャンスになっており、先に翼を斬り落とす。
「ふっ!」
「うらぁっ!」
大きくジャンプをして、右翼は暁が根元から綺麗に斬り落とした。左翼の方は斬れたには斬れたが、半分しか斬れてなかった。剛が大太刀で大振りをしたせいで、避ける時間が出来てしまって半分しか斬れなかったのだ。
「チッ!」
残った翼を使って、身体を旋回しつつ暁へ向かってきた。ジャンプをしていて、まだ地に着いてないから避けられない。
だが、今は側に守がいる。
「通さない!! ”二重結界”!!」
自分を守っていた盾を合わせた二重の盾が暁の前へ現れる。ドスッ! と大きな音が立って、一枚目の盾は割れてしまったが、二枚目の盾でキッチリと突進を止めていた。
頭から突っ込んだため、少しバランスを崩したワイバーンに向かって、大太刀を振るう剛。腹に切り傷が出来て、痛みに地面を転がる。
「すまねぇ!」
「間に合ったから構わない。守も良くやったぞ!! 次も期待しているぞ!!」
「うん、任せて!!」
地面に転がっている隙を突いて、先に残った翼を斬り落とした。今のワイバーンは両腕がない状態で、目や口がないのに痛みがあって叫び声を上げている不可意味な姿だった。
「叫び声は何処から出てんだ? アレはよ」
「わからん。竜自体が不可思議な生き物だしな」
「まだ動くよ!!」
剣の切れ味はとても良い物で、螺旋を使わなくても簡単に斬れた。だが、向こうにいる中級種のイゾルデはそう簡単に斬れそうには見えない。
それどころか、フォース使いも頑張っているが、素早く動くイゾルデに攻撃を当てていたのは出雲総隊長だけだった。出雲総隊長が持つ武器は双剣で、雷を発生させる能力を備えていた。
雷は魔術によって相殺されるか、打ち負けているため、致命傷になる攻撃にはなりえなかった。
「ギギャァァアォォォォ!!」
「まだ動くか。血も出てないから本物じゃないのは知っているが、首を斬れば消えるのか?」
「わからん。姿はワイバーンみたいだが、黒くて目や口がない生き物は知らねぇや。というか、なんだそりゃ?」
距離が近付いたので、姿はワイバーンだが目や口がなく、血も流れてないから変だと思ったようだ。だが、痛みを感じて叫び声を上げていたから反応が生き物みたいだと思える。
「まぁ、いいや。生き物に似せているなら首を落とせば終わるだろ」
「そうだな」
今のワイバーンは両翼なしに、腹も深く斬られていて致命傷のはずが、痛みがあってもこっちを踏み潰そうとしてくる。脚の大きさは人間を掴める程ではないが、重さによって骨一本ぐらいは逝ってしまうだろう。
「剛、首に合わせるぞ!!」
「おう!」
踏みつけ攻撃を避けたら、尾を振り回してきたが暁はそれに何もしない。頼りになる幼馴染みがいるのだから。その期待に応えるように、守が一枚の光る壁が現れた。突進程の威力はないから、一枚で防げた。
「今だ!!」
「はぁっ!」
一人では、翼と違って太い首を両断するには威力が足りなすぎる。だから、二人で両端から同時に打ち込むことにしたのだ。
暁は熊の時と同じように、両手を使った弾きと一回転する螺旋で威力と鋭さを上げた斬り上げの剣で、剛はジャンプして自分の体重を乗せた大太刀をーーーー
ガチッ!
金属音が鳴り響いた。その音が鳴り響いたのは、二人の武器が当たったということ。つまりーーーー
「ギガァ……」
太い首は両断されて地に落ちた。両断に成功したから、半分ずつ斬ったお互いの武器が当たったのだ。
地に落ちた首は身体と一緒に黒い霧となって消えていった。
「よし、一体片付けたか。普通の生き物じゃねぇな」
「これはただの生き物じゃなくて、イゾルデと言う奴が能力で創り出した偽の生き物だろうな。多分だが」
「成る程……待てよ、それだとイゾルデを倒さないとまた出てくる可能性があるわけか!?」
「そうだな。これだけの能力にリスクがないとは言い切れないが、まだ何体か出せるかもしれんな」
「ヤベェじゃないか!? 俺達も出雲総隊長達の手助けに行くぞ!!」
他の二体は四人の隊員が上手く連携を使って戦っているから、任せても大丈夫だろう。そう判断して、暁も先に向かった剛へ着いて行く。
「出雲総隊長! 俺達もーーーー」
「馬鹿! 離れろぉぉぉぉぉぉ!!」
手助けに入ろうとしたが、それは出雲の言葉によって止められる。イゾルデが何かしようと動いているのを感じ取っていたからだ。
「増えてきたので、ここら辺で掃討させて頂きます。”暴風陣”!!」
魔術を発動してきた。さっきまで攻撃を相殺するような弱い魔術ではなく、イゾルデの周りにいる敵を暴力の嵐が蹴散らしていく。しかも、鎌鼬を織り交ぜており、隊員が斬り裂かれていく。
総隊長からの警告によって、イゾルデの近くにいた者がいなかったから死者は出なかったが、殆どの人がやられていた。
無事なのは、守の”二重結界”によって守られた暁、守と一先に遠くへ逃げ切れた出雲だけだった。
「ほぅ、この技を喰らって倒れない者がいるとは。褒めてつかわそうじゃないか!!」
「ぐっ、化け物め……」
「黒いワイバーンごとやるとはな。駒がやられても痛くも痒くはないわけか」
周りを見れば、向こうで戦っていた隊員と黒いワイバーンは倒れ伏せていた。イゾルデは黒いワイバーンを創らなくても、全員を相手にすることが出来たかもしれないが、この魔術を使うには苦労していた。だから、自分が戦う者を減らすために黒いワイバーンを創り出して相手をさせていたのだ。
「暁君……」
守もこのままでは勝てないと理解したのか、脚が震えて涙目になりそうだった。暁もそうではないか? と暁の顔を見ていたらーーーー
「やっぱり、中級種となればここまで強いのか。魔術って奴もここまで効果を発揮出来るのも面白いな」
笑っていた。勝てないと思っているような表情ではなかった。暁は頭を掻いて、仕方がないなと言いながら前へ出た。
「暁君!?」
「大丈夫だ。まだバラすつもりはなかったが、予定変更だ」
暁は出雲達が勝てれば良かったが、こんな状況になっては出雲だけでは勝てないと判断した。予定変更になってしまうが、これから本気を出すことに決めた。
”ようやくか! 暁、お前の力を見せてやれ!!”
「来いよ。俺のフォースーーーー」
暁の周りにある空気が揺れる。守はこの状況を知っている。自分がフォースを発現する時のと同じなのだ。
突き出した手に朧気と武器の姿が浮き出てくる。
「ーーーー『星空刀』!!」
一直に伸びた長い刀が暁の手に現れた。『星空刀』、これが暁の新たな力の一つになるーーーー
どうでしたか?
続きをお楽しみにして頂ければ良いのですが。何処かおかしな所があれば教えてくれるとありがたいです。
では、感想と評価をお待ちしております。




