11.総隊長
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暁は守を含めた六人の護衛に囲まれながら、樹海の中にある訓練所へ向かった。今回は何も現れず、そのまま訓練所へ着くことが出来た。
「よし着いたぞ!」
十五分歩いた先には、石の壁と一つの門があった。その中が訓練所だと言う。石の壁で耐久性は大丈夫なのか? と思っていたが、時折にキラッと光る物が付いていることに気付いた。
「あれはアルゼニウムが含まれているな」
アルゼニウムとは竜が苦手とする鉱石であり、魔障を緩和させる効果がある。
「そうだ、『プロティクス』に劣るが、竜の嫌がる鉱石が混ぜられているから竜もどきはあまりここへ近寄らないわけだ」
「街を囲んでいる壁にも同じようにアルゼニウムが詰められているわ」
街の中心にある『プロティクス』はほぼアルゼニウムの塊で出来ており、壁に含まれるアルゼニウムは少々であっても効果はある。
「さぁ、そこにある建物に総隊長の部屋がある。そこへ向かおう」
門が開いて中へ入っていくと、様々な建物がある。この訓練所は黒牙隊と他にあと二つの隊があって、殆どはここの寮で寝泊まりしているから様々な建物が必要になるのだ。食堂、部隊の待機部屋、鍛冶屋など必要な場所がある。
「ふむ、向こうにある広い場所が訓練をする場所になるわけか」
「そうだな。フォースは様々な能力があって、つい建物を壊してしまわないように離れた場所に広く作られているわけだ」
フォース使いの中には広域へ攻撃するフォースもあり、建物が壊されないようにと考えての配置にしてある。総隊長の部屋がある建物へ着く前に、気になった場所を菊地に聞いて情報を集める。
「着いたぞ。三人は待機部屋に戻っていいぞ」
「了解しました!」
ここから大人数でいる理由がなくなり、隊員の三人には待機部屋へ戻って貰う。まず、狭間が総隊長に付いている秘書へ話を通してから、総隊長の部屋へ入っていく。
部屋の中はソファ、机がある簡素な部屋だったが、壁に様々な武器が飾られているのが個別性だなーと思う暁であった。ドアの向かい側に仕事をするための机と椅子があり、そこには片目に黒眼帯をしているゴツい顔の男が座っていた。
「ーー暁君、良く来た。まず、招待を受けてくれたことに御礼を申し上げよう。二人から聞いていると思うが、俺が出雲総隊長だ」
「こっちも自己紹介、必要かな? 名前を知っているみたいだし」
出雲総隊長が放つ貫禄に、菊地隊長と狭間副隊長は脚を合わせて、敬礼をしていた。守はその貫禄に暁の背中へ隠れていたが、壁にされた暁はいつも通りだった。
「ほぅ、聞いた通りの男だな。自己紹介はいいが、これを受け取れ」
そう言いながら、机の中から木刀を取り出して暁へ寄越していた。それを訝しみながらも受け取る暁。何のためにーーと考える前に事が動いていた。
ドゴンッ!!
既に出雲が机を蹴って、木刀を暁に振り降ろされていた。だが、動いていたのは出雲だけではなかった。
暁も受け取った木刀を両手で構えて、頭への振り下ろしを止めていた。
「ほぅ、止めたか。次のこれはどうだ!?」
「むっ!」
まだ宙にいるのに、回し蹴りを仕掛けてきた。回し蹴りは暁の脇腹へ打ち込まれようとしていた。暁はそれを受けてしまい、脚の勢いで横へ吹き飛ばされようとしていた。だが、出雲は手応えが少なすぎると違和感を感じていた。
「仕掛けてきたのはお前だ。骨数本は覚悟して貰うぞ」
「おおっ!!」
暁は攻撃を受けたのはワザとで、その衝撃を和らげるために自分から横へ跳んで、そのまま遠心力へ変えていた。押される勢いをそのまま、螺旋で自分の力へ変えてゆく。吹き飛ばされながら自分自身が回転して、木刀を横薙ぎさせる。お返しというように、狙われた脇腹へ向かっていく。出雲は咄嗟に自分の身体て向かってくる木刀の間に、木刀を入れて防御していた。
「うおっ!?」
だが、その攻撃は重くて、まだ宙にいた出雲は反対に吹き飛ばされることになった。吹き飛ばされたが、壁に上手く着地して地面へ降りていく。
「凄えな、それは何処で習ったんだ?」
「チッ、防がれてしまうとはな。流石、総隊長だな」
質問に答えずに、舌打ちをしていた。このタイミングなら脇腹へ打ち込めると思っていたが、反応が早かった。出雲の表情からまだ続きそうだと思えたが、ここで二人を遮る光の壁が現れた。それをしたのは守であり、左腕には綺麗な色をした盾が付いていた。
「貴方、暁君に手を出して…………、私の『輝甲盾』で圧し潰す!! ”硬撃盾”!!」
亀の甲羅みたいに整った六角形を幾つか合わせた光の壁は、守のフォースである『輝甲盾』が生み出した能力なのだ。今は暁と出雲の間を遮っており、その壁が出雲へ向かって圧し潰そうとしている。出雲はフォースでの攻撃だとすぐに理解して、横へ跳んで”硬撃盾”を避けていた。
光る壁はそのまま、ドゴォォォォォンと音を立てて、出雲の後ろにあった壁を破壊していた。この威力だと、ただの人間だと全身骨折していた可能性が高い。本来なら守るための光の壁だが、下級種の中でも誇る硬さを活かした盾の突撃は、建物の壁へクレーターを作り出すのは可能だ。
室内ならこうして押しつぶすことが出来るが、屋外だったら挟み撃ちにする壁が少なくて、光る壁に押されるだけで終わる。
「ヤベェな。そいつはお前の女か?」
「幼馴染みだ。まぁ、続きは無理そうだな」
この部屋へ近くにいた隊員が騒音を聞き付けて、突入してきたからだ。ちらっと菊地と狭間を見てみたが、下がっていたことから出雲が何をするつもりかは、最初から知っていたようだ。
「確かにこの状況じゃ、続きは無理だな。皆は仕事に戻りやがれ!! これはいつものことだ!!」
出雲の口からいつものことだと説明され、皆は納得したようで「なんだよ、いつもの力試しかよー」と言いながら仕事へ戻っていった。この状況はたまに出雲が起こしていたようだ。だが、秘書の女性だけはこの状況を見て、出雲に詰め寄っていた。
「出雲総隊長!! 何をしたんですか!? 壁まで壊すことはないでしょ!?」
秘書の女性は出雲が壁を壊したと判断しているようだ。
「あん? これは俺じゃねぇぞ」
「あーーもう!! やるなら訓練場でやりなさいといつも言ってーーーーーーえっ? 出雲総隊長がやったことじゃない?」
壁を壊したのが出雲総隊長じゃない。なら、誰なのか? と思っていた時、出雲が守に指を指していた。
「こいつのフォースで潰していたぞ。凄い威力だったな」
「へ!?」
秘書の女性が凄い勢いで顔を守がいる方へ向けていた。守は自分がやったことを思い出して顔を青くしていた。飾っていた武器も壊れていて、全部弁償しなければならないと考えたからだ。
「ごめんなさい!! 私が壁を壊しちゃって……」
「……すぐに信じられないことだけど、確かに貴女がやったことだよね?」
「はい……」
秘書の女性が放つ雰囲気から、やはり弁償しなければならないかと落ち込む守。だが、途中で暁が話に入ってきた。
「ん? 別に守は悪くないだろ?」
「えっ!?」
壁を壊したのが守なのは、自分で白状したことでわかりきっている。なのに、守は悪くないとは?
「あのな、どうしてこうなったのか考えれば、守は全く悪くないだろ。つまり、この壁を壊した原因を起こしたのがーーーー出雲総隊長なんだから」
まだ理解していない守に説明しながら、出雲に向けて指を指していた。
「お前は俺の護衛だ。なら、攻撃されたから守ろうとしたよな?」
「う、うん!」
「なら、お前は間違ったことをしてないわけさ。一番悪いのは、力試しと言わずに攻撃してきた出雲総隊長なんだから」
「ちょっ!?」
出雲総隊長は暁の言葉に慌てる。指を降ろして、説明を続ける。
「そうだろ? もし、急に力試しをしなければ、この状況にならなかったわけだから。何か間違ってるのか?」
「うっ……」
暁の言葉は正論であり、この状況を起こしたのは出雲で間違っていないのだから。
「しかし……、フォースを使わなければ良かったのでは?」
「え、なんで? 守はフォース使いだが、フォースがなかったら何も力がない女の子になってしまう。フォース無しで出雲総隊長の攻撃を止めればいいと言いたいのか? それに、守はフォース使いだから俺の護衛に選ばれたんだから、俺を守るためにフォースを使うのはおかしくないだろう?」
「成る程。つまり……」
また出雲に指を指してーーーー
「請求するなら出雲総隊長にしろよ」
キッパリと言い放った。秘書の女性は少し考えて、暁の言葉は最もだと思い、出雲総隊長へ脚を向けた。
「では、この請求は給料から差し引いて置きますわね」
「う、うぅぅ……了解だ……」
「よろしい。では、私は仕事に戻ります」
出雲も自分が悪いのを理解しているので、大人しく従ったのだった。自分の秘書がこの部屋から出て行くのを見て、溜息を吐いていた。
「はぁ~、まさか壁が壊れてしまうとはな。これでは竜が来てくれないと今月はヤバイな……」
「竜の死体を研究所へ売るってわけか。総隊長は金が無いのか? …………っていうか、学生に請求すんな」
「あ、初めから請求するつもりはなかったさ。お前は口論に強いか、試させるためにやったことだしな」
「…………まさか、これも?」
「そうだ。たまたま壁が壊れてしまったが、丁度良いと思ってな。俺の秘書を口論で納得させることが出来るか、試験にしたわけだ」
「ちょっと待て。力試しに試験とかはどういう意味だ?」
試験と言われても何のことかわからない。会いたいため、招待をしただけだと思ったが力試しに試験と言われても意味がわからないのも仕方がないだろう。
「お前、部隊に入るための条件を知っているか?」
「む、成人すること。だが、フォース使いなら15歳から入ることが出来る」
「まぁ、世間ではそうなっている。だが、実はもう一つあるんだわ。それが、総隊長クラス以上の推薦だ」
「…………成る程。つまり、出雲総隊長はーー」
「お前を推薦をすることに決めた。力試しや試験も合格だ。お前みたいな有能な人材を見逃す俺じゃねぇ」
暁は呆れていた。だが、暁に取ってはチャンスである。暁はフォース使いではないから、入るなら成人になるまで待たなければならないからだ。暁はステラのお陰でフォース使いになったが、政府では記録されてないフォースなので、面倒事になるのは読めている。バラすならいい時期を待ちたいと考えていた。
暁に懸念があるとしたらーーーー
「口論の試験……、まさかと思うが、偉い人と口論するためじゃないよな?」
「その通りだが? いつも俺の秘書がやってくれているが、一人では大変でな」
「はぁっ、面倒な……」
やはりかと思いつつ、あともう一つの懸念があることに思案する。だが、先に動いたのは暁が懸念していた人物であった。
「もし暁君が入るなら私も一緒に入るからね!!」
「……守がそう決めたなら何も言わない」
想像していたことだが、そんなに悪い事でもない。近くにいれば、守りやすくなるのだから。それぐらいの力は暁にある。
そうして懸念を一つずつ潰していき、最後に暁が考えた条件が通れば自分の目的を達することは難しくないだろう。
「では、条件を伝えたいけどいいかな?」
「ほぅ、出来ることなら叶えてやるから言ってみろ」
出雲はニヤッと笑って、こっちへ目を向けていた。普通ならいい顔をされないが、出雲は笑って聞いてくれるようだ。
暁が望む条件とはーーーー
「大変です!!」
ノックもせずに総隊長の部屋に入ってくる者がいた。軍服を着ているので隊員だとわかる。出雲は眉をピクッと動かしていたが、隊員の慌てようから事情を察したのか、こっちの用事は後回しにされた。
「何があったか簡潔に話せ!!」
「は、はっ! 中級種が此処へ向かっているのことです!!」
「何だと!?」
中級種が此処へ向かっているらしい。中級種はワイバーンと違って、知能を持った竜であり、魔術を使ってくる。下級種とは実力が結構開いているので、全体の部隊で当たらなければ勝てないような相手である。
そういう危険な化け物が此処へ近づいているのだった…………
今も書き続けているので、続きをお楽しみに!
他の人にもこの小説のことを広めてくれるとありがたいです。では、また〜!




