『魔王』
とても(?)長いです。今までで最長です。
「まったく、ユノは無茶ばっかするんだから」
睡眠にはまだ早い時間である。
月明かりも射さない真っ暗な雨の夜。人為的な物とは言えど、その暗闇は本物だ。魔が棲むと言われる、ぼんやりと影だけが浮かび上がる闇の世界。部屋に物が無くて良い事があるとすれば、こんな時だろう。
態々選んだそう広くも無い部屋にある物の配置は、既に由乃の頭と体に叩きこまれていた。入って目の前、テーブルに手をつきながら、ソファ側で無くベッドの方へ迷いなく進み、由乃が気に入っている低反発のマットが、淵に腰かけた由乃の体重の分だけ、軽く沈んだ。
由乃の後を追ってきたミレオミールも、由乃の隣に腰を下ろす。「パチンッ」という小気味の良い音が暗黒に響き渡り、呼応して、部屋の明度を上げて行った。
部屋の照明に変化は無い。彼は彼の魔法で、この部屋に明かりを灯したのだ。
テーブルの上に、青白い光源は、二人の顔色を青白く照らした。
窓が近かった故にうっすらと見えた彼の笑顔は、部屋に明かりが灯った事により、青白く不気味だが、鮮明にミレオミールという存在を映しだした。
部屋は真っ暗だったのに、彼の声を聞くだけで、彼がどういう表情をしているのか、由乃には手に取るように解る。先ほどもそうだ。全く見えないにも関わらず、まるで明るい場所で話しているような、不自由の無い感覚。そんなもの、由乃は家族だけだと思っていたが、どうやらこの男にも適用されるらしい。
窓を叩く雨の音が五月蠅い。
けれどもそれは二人の時間を阻害しない。
しばし沈黙の時を過ごした後、やっと、ミレオミールは言葉の続きを紡ぎ始めた。
「怪我は?」
最初は、その三文字だった。
何気ない声色に、片手で自身の髪を弄ぶ素っ気なさ。世間話よりも温度を感じない台詞は、それでも確かに、由乃を心配したが故の言葉に違いは無い。
由乃は心配される事が苦手だった。
元々、出来ない事は出来ない、やりたくない事はやりたくない、でかなりはっきりしているのが由乃である。由乃がやると言うのなら、それは由乃にとって『出来ない』事でも、『やりたくない』事でも無い、と言う事。伴う危険も総て受け入れ、それを由乃が了承した、という事なのだ。
だからこそ、心を配ってくれるのは、由乃もありがたい事だと思ってはいた。けれど、嬉しがったり、歓喜に震えるような事は、決して無い。
それを知っているからこそ、ミレオミールはいつも何気なく、そして何事もなさそうに、ただ事実を確認するだけのように、由乃に問いかけてくれるのだ。
……そうなると、彼が気遣ってそういう風に聞いているのか、本当に興味が無いだけなのか、由乃に判断はつかなかったが、後者であってくれた方が嬉しいので、藪を突く気は、由乃には毛頭なかった。周りを良く見過ぎる彼の場合、前者である可能性が高い事には、由乃は目を瞑らせてもらう。
「平気だよ。骨に異常は無いし、そう深い傷も負って無いし」
「その右手首も?」
「うん。幸運だったねって言われた。日頃の行いが良いからね」
「…………」
ノーコメントだった。
帰ったら回復魔法、と言っていた割に、ミレオミールは回復魔法を施す気は無いらしい。何も言わないまま、由乃は彼の次の言葉を待つ事にした。由乃からは、これと言って彼に聞きたい事は無い。彼の用事についても、今で無く、もっと時間のある時に聞けばいいから、だ。
二人は青い光を見つめたまま、再度雨が滴る音を聞いた。
ざあざあという音は心地よく、程良い空気の振動を二人に伝える。
元々二人は、音を聞くのが好きだった。
雨音、葉擦れ、鳥の囁きや、猫の鳴き声に、馬の嘶きや蹄の音。
言葉無き空間で、自身以外が奏でる総ての音を、ただ耳が拾うだけの、穏やかな時間。
沈黙は苦痛でも不仲でもなく、平和と親和の上に成り立つ信頼。
居心地の悪い沈黙があるとすれば、それこそ、由乃が拗ねている時くらいだろう。あれはお互いに居心地が悪いので、ミレオミールはとっとと由乃を許し、由乃もさっさと自身を改める。何だかんだ、良いコンビなのである。
「何で、戦う事を念頭に置いた?」
沈黙は好きだが、会話が嫌いなわけでも、会話をしないわけでもない。むしろ、今ミレオミールがここにいるのは、由乃と会話をするためなのだ。
ずっと黙っていては、彼は野暮用に戻れないし、埒も明かない。
考える素振りも見せず、由乃は息を吐き、少しだけ肩を竦ませる。
「念頭に置いたんじゃないよ。戦わなきゃいけない場合も考えてただけ」
嘘で撒く必要も無い。由乃は本心から、ただあの時の事を言ったまでだった。
「フェリアの症状はともかくとして、外から見る限り、あの家は『ちょっと不審』程度だったからね。ウィルに戦闘のための魔法を使ってもらう前に、一度思い付きで、家の中の人をこう……サーチ……探知?してもらったの」
「……そんなこと出来たっけ?」
「頑張ってもらった」
本当に、ただの思い付きだった。
魔法生物が、《人形》が、どう世界を見ているのか。
それを知らない由乃は、ウィルの魔法に身をまかせようとした時、ふと思いついたのだ。
――ウィルの眼には、世界がどう映っているの?
聞いた時の、ぽかんとしたウィルの顔は最高に可愛かった。
それはさて置き、それからは簡単に事が運んだ。
ウィルの――《人形》が得る視覚情報は、基本的には人間と変わらなかったらしい。空は青く、雲は白く、太陽は眩しく黄色に近い真っ白な光を放ち、大地は単純に言ってしまえば茶色く、草木は緑。木の幹は表面の槌よりも濃い茶色や灰色で、影は黒く暗く、フェリアの髪は赤く、由乃の瞳は黒く。
壁をすり抜けて奥を見るような透視能力は無く、できる凄技があるとすれば、他の人形の視覚情報を共有し合う、くらいだと言っていた。
『でも、きみの目は宝石でしょ?』
『はい、アクアマリンです』
『どうやって映してるの?』
『わかりません。でもそう見えますので』
『……もっとさ、こう、違う見え方、できるんじゃないかなぁ』
『……例えば?』
『……こう、ほら、漫画とかに良くある……ロボットの熱源サーチとか、聴覚から超精密な位置情報を割り出したり、あとはそう――魔力を薄く広く充満させて、物体の位置と動きを知る、みたいな――』
『…………はぁ、なんだか、全然解りませんね』
けれど、今の現状を受け入れるよりも、ウィルは進化を望んだ。
――わたくしにできることが増えると言う事は、それは、《人形》(わたくしたち)の可能性が広がる、と言うことなのです。
誇らしげに笑う少年は、母親に褒めてほしい一心で勉強を頑張る、そんな健気で、純真で、微笑ましい姿に似ていた。
《人形》、けれど、彼らは正しく、リュネ・ドーラの子供達なのだ。
「へぇ、そっか。《人形》にそんな扱い方が、ねぇ……」
珍しく感心するミレオミールが、何度も単調な言葉で感動を顕にした。幾度も頷き、由乃よりもそちらに興味が移ったらしく、今まで目前の光源を何とはなしに眺めていた二人だったのだが、ミレオミールは一気に瞳に好奇の色を灯し、由乃の顔を覗きこむ。
「どういった感じ?」
由乃は若干背を引いて、ずいっと近寄った顔から逃げつつ、「よく解らない」と告げた。
「私じゃなくて、ウィルに聞くべきだわ。私は彼の感覚を知っているわけじゃないし、むしろ知らないし……『どうやって見てるか説明してください』なんて言われても、ミオだって、説明できないでしょ」
『何を見ているか』では無く、『どうやって見ているのか』
実際には、網膜が水晶体がレンズが視神経が――等のややこしくて複雑な、人間の解剖学だか生態学だかのなんやかんやが関わっていることを由乃は知っているが、知り方が曖昧すぎて、説明などもってのほかである。
高校三年間使うと言われた生物の資料集を拝見したとき、こんな暗記が多くてややこしそうなところ、一生やりたくない、と思った記憶もあるほどだ。文字は全体的に目を通したし、興味深くはあったが、如何せんグロテスクな物が苦手な由乃にとって、眼球や内臓や、血管や神経等のポップでカラフルなイラストは、あまり好ましい物では無かった。
一度ざっと目を通しただけで書物を閉じ、それ以降、暇な時だろうが理系の資料集は開かない様になってしまった。
まだ授業でも取り上げられていないし、覚えていろという方が無理な問題である。
ただ、何処に人がいるかは解るが、誰がどこに居るかは解らない、といった感じだったらしい。魔力感知に近いのでは、というのが、ウィルの見解である。
ミレオミールは体を戻し、暫し考え、確かにと二度頷き、この話を内に仕舞いこんだ。恐らく、明日帰ったら即行でリュネ――正しくはウィル――の所へ向かう事だろう。
由乃も体を戻したところで、ミレオミールは話を戻した。
「ウィルの新機能により、ユノは内部の情報を手に入れ、それで窮地を知った――ってことか」
「機能って……まぁ、うん、そんなとこかなぁ。最早家の中が蛻の殻、って可能性もあったから、あれは本当に助かったや……でも、やっぱり断言はできなかったから、見張りの人に、話を聞いて、情報を得てからにしようと思ったんだけど」
「……その見張りが、予想以上に情報を所持していなかった、わけか」
ずばり、だ。
そして、予想以上に、由乃があの男たちを好意的に捉えてしまった。
由乃が話をしたのはたった一人だが、由乃はたまに、彼らの様子を物陰から窺っていた。そこから見て取れた彼らは友達関係のようで、言ってしまえば、由乃とミレオミールや、由乃とフェリアなんかの関係に、良く似ていた気がしたのだ。
「……別に、好感があっても、武器を持たれたらねじ伏せる覚悟は有ったんだけどね。でも、あの人たち、どうにも無関係っぽかったからさ」
それは、既に彼ら本人に説明した話だ。
彼らはユリアの存在を知らされていなかった。
『午前中からここにいた』という言葉は曖昧だったが、恐らく、ユリアとユエが楽しくダイニングでお喋りしている間に、男たちはあの家へ押し寄せたのだろう。
見張りは最初から持ち場に立たされ、『四人家族』というキーワードだけ、人を追い返すために実行前から伝えられていたのだろう。
自分たちで追い返すための嘘を作り、内部の様子は知らされていない。幸か不幸か奴らの狙いは復讐――奇しくも、それは自身が牢屋に入る原因となった由乃と、彼らが狙った子供達への復讐だった。
城に戻り、事情聴取を終えたらしい兵士たちから報告を受けたナイルが教えてくれた動機がそれだった。ハッキリ言って、迷惑極まりない。
悪い事をした自身を棚に上げて何を言っているのか。身勝手も自分勝手も由乃は持ち合わせてはいたが、あれほどの理不尽は、きっと他には無いだろうと、酷く嫌な気持ちになったことを覚えている。
「フェリアが――私が無理矢理回復させたフェリアが」
「腹殴ったんだっけ」
「殴った」
「過激だなぁ」
愉快そうに笑うミレオミールを一睨みし、由乃は話に戻る。
「最初は私の事止めたけど、私が考えを曲げないことを悟ると、手伝ってくれたから」
あの時、ウィルの可能性を広げたり、ウィルの魔法を授かったりしている間に、フェリアは立ち直っていた。そして、もう止められないなら、と憲兵への通報を、自ら名乗り出てくれたのだ。
由乃が合図したら、全力疾走で憲兵へ知らせに走る。
それがフェリアの仕事で、彼女の足の速さにより、憲兵の到着はとても早く、そして十二神将の一人、ナイルを伴い、既に殆どが伸びていたとは言え、異例のスピードで解決に向かう事ができたのだ。
「裏道を通って、こっそり三人で憲兵呼びに行けば良かったのに」
「…………」
正論だ。
それは、由乃も考えた。
けれど――
「ミオにとって、『魔王』って何?」
「――は?」
シャーペンの芯の話から、いきなりシャーペンを作る工場が何処に在るかの話になったかのようなぶっ飛び方で、由乃の話題は変わった。
田舎町の小さな事件――と言ってしまうには、彼女は当事者過ぎたが――の話から、一気に世界の根源的な悪に話が飛んだ。
ミレオミールは顔を由乃に向けながら一瞬思考が停止して、一文字での疑問を表すのが精一杯だったが、流石になんの前置きも無く、何も関係の無い事を言いだすような由乃では無い。繋がりが解り難いとか、他人にはわからないが自分では繋がっている、等の身勝手さはあるが、一応、これも由乃にとっては、必要な質問なのだろう。
「…………」
ミレオミールは暫し考える。由乃が求める答えを。
「……『魔王』は、『魔族を統べる存在』『魔族の生みの親』で『魔法の第一人者』で、『この世界の悪』、だ」
「……それが、ミオの意見?」
由乃の真ん丸な黒い瞳が、ミレオミールの淡い色を射ぬく。
彼女の闇にはミレオミールが出した光源の青が反射し、まるで深海を思わせる深さで耀いていた。
ミレオミールは苦笑して、肩を竦めながら視線から逃げる。
彼女の問いに、ミレオミールは誠意を返せていないのだ。
「一般論。悪いけど、俺からユノに――『勇者』言える意見があるとすれば、『倒すべきもの』それだけさ」
倒すべき、もの。
魔王は、この世に存在しては、ならない。
「……あれは、世界の均衡を崩す。最初の勇者が倒した時、死んでおけば良かったものを……」
勇者によって、魔王は討伐された。
それも、遠い昔の話だ。
今、由乃が召喚されているのだから、推して知るべし。
魔王は再び現れた。
それが滅びた『魔王』なのか、新たに生じた『魔王』なのか、それはこのカルロディウスでも、ミレオミールの出身地である、魔法都市バルでも解らないとされていた。魔王に関して最も詳しいのは、魔法を研究する魔法都市バルに相違ない。勇者の伝承が多く残るのはカルロディウスだが、魔王は『魔王』という名の概念に過ぎず、国民の誰もが心に『勇者像』を持ってはいたが、はっきりと「これが『魔王』」と断言できる物は、誰も持ってはいなかった。
『魔王』とは、『敵』であり、『人に仇なす存在』であり、『魔族の親玉』と言うのが、人々の『魔王像』に他ならない。
「フェリアにね、言われたの。『「勇者」の仕事は「魔王」を倒すことだ』って」
「……なるほどな。フェリアはユノが大好きだからなぁ」
「そういう問題?」
「そーゆー問題」
腕を後ろへ下げ、重心を腕へ預けながらミレオミールは天を仰ぐ。
由乃も確かにフェリアに好かれている自覚はあった。何故かはわからないから、首を捻るしかないのだけれど。
「フェリアは、『勇者』じゃなくてユノに――『ヨシノ』っていう一人の人間に、憧れてるんだ」
「……え、なんで?」
当然の疑問である。由乃は天井を見上げるミレオミールを見つめながら、答えを促した。
返ってきたのは、とても単純な言葉だった。
「二週間前、誘拐されそうになったロニとミシェルを助けたから」
「…………それだけ?」
「それだけ」
視線を由乃と合わせ、にっと口の端を上げた。
上を向いていたおかげで頭に血が上ったのか、ミレオミールは上半身を元の位置まで戻す。
由乃は疑問符を浮かべるしかできなくて、続きを期待してミレオミールの様子を目で追った。
間もなく、ミレオミールは答えを寄こした。
「フェリアが男を怖がってるのは、由乃も知ったろ」
「うん……まぁ」
「だから、さ。フェリアは、成人男性というか、自分より大きくて、年上の男っていう種類の人間に恐怖してる。悪党とかは全部ダメ。下手をしたら、兵士の男たちもだめらしい。武術を嗜んでる奴は、基本的にマッチョだからな。例外、ナイル様、などなど」
基準は良く解らなかったが、体格がしっかりした強そうな見た目の男性は全員アウトらしい。
由乃は曖昧な返事を漏らしながら、彼の言葉の続きを待つ。
「だから、人攫いの、野盗の集団を叩きのめした女の子――つまり、『勇者』では無く、自身の恐怖の対象に打ち勝った、自分と同じ女の子である『ヨシノ』を、勇者以上に、フェリアは崇拝してる。お前が、ユノそのものが、フェリアにとっての希望で、光で、一番大切な存在なんだよ」
由乃の頭へと伸ばされた手は、宙で止まり、ひっこめられた。
溜息は幸せが逃げると言われているが、溜めてしまった陰鬱な空気は吐き出すに限るだろう。手を下ろし、息を吐き出しながら、ミレオミールは裸足の足をベッドに上げ、その膝に引っ込めた掌を置いた。
彼の言わんとするフェリアの、由乃に対する羨望にも似た憧憬。
「それ、フェリアから聞いたの?」
「いや、俺の勘」
説得力の欠片も無い事をさらりと言ってのけたが、目を細めて笑む彼が言う『勘』は、由乃の言う『勘』とは中味の質がまるっきり違うのだ。
由乃の勘が無意識から来る所謂「虫の知らせ」だとすれば、ミレオミールのそれは、知識と観察と経験によって培われたそれらを『意識的に』活用し、そして自身が出したその結論に納得した時のみ用いられるものだった。
説得力は、彼がその情報を提供したという時点で、充分に存在しているものなのである。
「…………で?」
「『で』?」
「『魔王』」
「あ、そうそう『魔王』」
本気ですっかり忘却の彼方に屠られていたらしく、「忘れてた忘れてた」と二度繰り返しながら、由乃は唸った。言いたかった事を思い出しているようである。
「えーっと……フェリアに」
「『「魔王」を倒すのが「勇者」の仕事だ』」
「そうそう」
辿った記憶が先ほどまでの会話に辿り着いたらしく、今度はうんうんと頷いた。
「私それ聞いて、正論だなって思ったんだよね」
「……まぁ、そうだろうな」
一番最初の勇者が『勇者』となったのは、当時脅威となっていた魔王を倒したことに由来する。
どの絵本でも、最初はただ泣いている女の子だ。この世界の人々と出会い、他所者だったが受け入れてもらえた嬉しさから、恩返しのために魔王を倒すことを決意し、そして見事討伐して帰って来て、このカルロディウス国という国が出来た。
「原本は、違うんだっけ……?覚えてないけど――」
「待って、ちょっと待ってユノ、原本って何」
話が進まない。
ミレオミールは再度、違う所に興味を示した。その事に関してはどうとも思わないが、由乃もミレオミールの様子に驚く事になった。
「……ミオ、原本の存在知らなかったんだ」
勇者の伝説について由乃が知っている事は、基本的にミレオミールの部屋の書物を、総てミレオミールに読ませることによって蓄えたものだ。
けれど、一番最初に由乃が見せられたものは、違う。
あれはエトワールが丁寧で優雅な動作で運び込み、その涼やか穏やかで優しい声色で読みあげられ、全体に向ける不信感は確かに高かったものの、内容はともかく、エトワールのその姿だけは、由乃はしっかりと思い起こす事ができた。
「原本……そんなものがあるんだ……へぇー」
ミレオミールの青い瞳が、青白い光に照らされながら厭らしく煌めいた。
完全に標的とされており、これはエトワールに悪い事をしたな、と由乃は慙愧した。
(これ以降、エトワール様のために下手に知識欲の怪物・ミレオミールを刺激しない事を、ここに誓います――)
深く反省しながら瞑目し、祈るように誓いを立てる。一応ミレオミールにエトワールの名前を出してはいないが、原本などという、いかにも国宝級の存在を拝見しようとするならば、十二神将の誰かに聞く事は間違いが無いだろう。
国宝級の物を、態々下っ端――とは言え十二神将、である――に聞く必要は無い。さっさとトップに訊ねればいいのだ。最も発言力を持つ実質的なリーダーは、誰が何と言おうとエトワールである。それに、彼は何故かミレオミールに対して信頼を置きすぎているきらいがあるし、なにより、ミレオミールに対して甘い。
彼が由乃の『最初のお供』として名乗りを上げた時、随所で上がる反対の声を無視して賛成してくれたのが、彼だ。
彼の鶴の一声が無ければ、恐らく、二人は二人きりで旅をすることも無かったし、ここまで親密になることも無かっただろう。
(――エト様、ご迷惑おかけします。大好きです)
由乃が心の中で詫びと告白をしていると、既に心を決めたミレオミールに話しの続きを促されてしまった。
「えっと、正論だと思って……で、私、思ったんだけど、私って、『魔王』を知らないんだよね」
「…………うん?」
ミレオミールは首を傾げた。釣られて由乃も鏡映しのように顔を倒したが、何が起こるわけでもない。
「魔王を知らない?」
「うん、私、『魔王』知らないじゃない」
「いや『じゃない』って言われても」
この世界に生きる人々の誰も、『魔王』を知らない。由乃はそう言うのだ。
カルロディウスでも、魔法都市バルでも、現在この世界を脅かしている『魔王』の存在を、捉えられてはいない。
特に由乃はここに来たばかりの初心者で、ミレオミールから学んだとはいえ、魔獣を何度も倒してきたとはいえ、彼らが何をやったか、本当の意味で知っていることなど何もないのだ。
由乃は、魔族の事を、何も知らない。
知らない相手と、戦わされているのだ。
「……そんなこと、ないだろ。ユノは最初から、知ろうとしてた。だから俺も、俺の持ってる魔族――魔獣や魔人の知識をユノに教えたし、ユノはそれをちゃんと記録してる。そうだろ?」
「それは、うん」
知識は、ミレオミールの知識は由乃のノートに由乃の母国語で書き連ねられている。魔族のこと、魔獣のこと、魔人のこと、そして――初代『魔王』のこと。
「初代の、伝説の勇者に倒された魔王は、極悪非道で、悪の権化で、魔獣や魔人を使って、この国――大陸に在る全部の国を乗っ取ろうと、人々を襲って来たんでしょ?」
「――そう」
故に、人々は苦しみ、嘆き、それでも耐えながら、なんとか生きながらえて来た。
そんな中、立ち向かったのが、異世界の人間である、『勇者』――
「今も侵攻されてて、魔獣が田畑を襲ったり、魔人の姿があったり、色々聞く。けど……それを倒すのは私の仕事で、魔王を倒すのは私の仕事で、だけど」
人を脅かし、襲い、苦しめ、平和を掻き乱す存在――
「それは、果たして魔王だけかしら?」
真剣、と言うよりは、それを口にした由乃は、無邪気に素直に疑問を口にする、子供の様なきょとんとした瞳をしていた。
ミレオミールは、出すべき言葉が喉につっかえ、口から吐き出される事を拒否していた。
だって、それは――
「ユノ、人には――自分で解決しなきゃならない領域がある」
「そんなこた解ってるよ。私だって、面倒事を引き受けたいわけじゃないもの」
一番の面倒事が勇者なんだけど。由乃は言いながら、拗ねた瞳で光源を睨んだ。
けれど、その瞳が、総てを物語っている。
解っていない。
「解ってないよ、ユノ」
ミレオミールがそう零すと、由乃は再度、ゆっくりとその闇色の瞳を、澄んで晴れ渡った筈のミレオミールの瞳に向けた。
ミレオミールよりも弱く、腕も細く、魔法も使えず、小さく、子供で、女で、身勝手で、我儘で、やりたくないことは、決してしない、異世界の――
この世界に、なんら関係の無い、少女。
「解ってるよ」
それだけ。艶やかな闇を湛えた瞳にミレオミールの言葉に表せそうにない表情を映したまま、由乃はそれだけを答えて、彼女はそのまま、ベッドへと体を倒れ込ませた。
見上げた天井は光源に照らされ、部屋の中央と隅のベッドでは、酷く色に差があった。
月も出ない暗く寂しい闇の中で、由乃の部屋だけが、ミレオミールの魔法によって、月の光のような色で優しく照らし出されている。
それはエトワールの瞳の色にも似ていて、由乃の胸の奥に、温かな漣を立てるようだった。
「――解ってない。ユノ、お前は」
ミレオミールは、反論を続ける。けれど声から窺えるのは、心配というよりは呆れの範疇に思えた。
説得しようという意志は無く、ただ、由乃がしている事の枢要を理解させ、自覚させようという、真剣で、重たい言葉だった。
「ユノは、態々抱える必要の無い、この世の悪を――全部を一人で抱えようとしてるんだ」
ミレオミールは、基本的に由乃を止めない。
忠告も注意もするが、最終的な判断は、総て由乃のものに従ってきた。
今回もそうだ。彼がしたいのは、由乃を止める事では無く、成し遂げたい事の中に含まれる、嫌気がさすような様々な可能性を示唆し、本気で向き合う覚悟が有るのかどうかを、由乃に問うているのだ。
優しい人、なのだ。彼は、誰よりも。
彼の真剣な瞳に、由乃は「ばーか」と眠たそうに答える。
「解ってないのはミオの方だわ。私が言いたいのはそういうことじゃなくて……もっとこう、簡単な話で……」
中指と薬指と親指の先をくっつけ、人差し指と小指だけをピンと立てる。由乃曰く、狐、である。
口部分にあたる中指薬指と親指を開閉させることにより、まるで手で象られた狐が喋っているかのように、由乃はアテレコした。
「私が言いたいのはね、目の前で人が死にそうな事件が起こってそうなら、やっぱり黙ってらんないし、隣人との諍いまで持ちだされたら迷惑だけど、自分が助けたいと思った人を助けるのは、別にいけないことじゃないと思う。そういうことなの」
人語を解する狐は、耳を揺らしながら、まめまめしく口を口を動かした。
「今回はロニミシェとユリアおばさまとユエさんを助けたかっただけだし、それ以上でもそれ以下でも無い……ミオが心配するほど、私は私を粗末にしてないし、むしろとっても大事にしてんよって話よ」
「……要領を得ないな、ユノ。『魔王』は『魔王』に限らずって話を始めたのは、ユノなのに」
「だってさぁ……」
由乃は起き上がろうとして、右手で体を支えてしまって、奇声を上げながら再度ベッドへと落っこちた。左手で包帯の巻かれ得た手首を擦りながら、溜息交じりに愚痴っぽく呟いた。
「『勇者だからやれ』とか『勇者だからやるな』って、制限が曖昧なのよ。腹立たしい。だから、私は決めた」
狐では無く拳を、ぴんと天井へ向けて掲げる。
「私はね、私の基準で、『八色由乃』として私が正しいと思った事をするの。誰の指図も受け……有る程度は受けない。『八色由乃』兼『勇者』。勇者が私の附属物なの。わが道を突き進んで、公私混同上等の、私は私のやりたいことをします。はい」
中途半端な曖昧さの残る宣言をして、今度こそ由乃は起き上がった。
ふわぁと大きく口を開けて、口元に手を当てながら欠伸をする。どうやら眠気がやって来たらしい。
「ミオは昔私に、『魔人とは今は戦わなくて良い』って言ったね」
「……言ったね」
由乃は本当に唐突である。由乃をベッドに寝かして、もう変えるべきかと思い始めたミレオミールに、欠伸によって出て来た涙を拭いながら、再度欠伸をしつつ言葉を繋げる。
「それで、魔人と遭遇した時、ミオが私の替わりに戦ってくれた」
「逃がしたけどね」
ミレオミールが苦笑する。あの時の彼には由乃を守ることと、相手を退かせる事が精一杯だった。手負いにはできただろう。しかし、討ち取ることができなかったという事は、脅威は未だ存在する、と言う事なのだ。
けれど、由乃は「それはそれで良かったんだよ」と言った。
「ミオが私に『魔人と戦わなくて良い』って言った時……私、ミオに酷い事言ったね。あの時は、私が嫌だって言う事をやらせようとしてる仲間の一味みたいなもんだったから……ごめんね、ミオ」
「え?……あー、うん」
ミレオミールは曖昧な容赦を与えた。曖昧になってしまったのは、仕方が無いというものだろう。彼自身、それを正当な物だと思っていたし、由乃に対する嫌悪は無く、ほんの少しの罪悪感が物を言うだけで、それすらも抑え込んで由乃と並んで来たのだ。
謝られると、逆に困ってしまう。謝らなくてはならないのは、ミレオミールの方なのだから。
「でも、私、嫌だったのよ」
独り言のような、誰かの問いかけを必要としない、独り言のような主張だった。
嫌だった。
人と争う事が。人に傷を負わせる事が。人の――命を、奪ってしまう事が。
由乃は、嫌だった。何かの命を奪う事が、怖かった。
戦争の無い、戦闘の無い世界に生まれた由乃。
彼女が手を汚したくないと願うのを、誰が非難できただろう。
けれど、この世界は『勇者』を必要とし、由乃に手を汚すことを強要した。
それを由乃が嫌だと言うのは、嫌だと思うのは、仕方の無いことである。
魔人は、人の形をしているから、『魔人』なのだ。
いくら勇者になることを決めたと言っても、人を殺す事が悪である世界で生きて来た由乃にとって、割り切れという方が酷というものだろう。
由乃は、もう何度目かの溜息を吐いた。
今更ながらにすっかり忘れていた靴を脱ぎ、ベッドの上へ足を上げる。はしたないと母に怒られ続けたが直らなかった胡坐をかき、背筋をピンと伸ばした。
「ミオが――
殺す為に魔法を使う姿を見るのが、とても、嫌だった」
「……………………うん?」
ミレオミールは盛大に首を傾げた。恐らく、この場合は、もっと空気を読んで彼女の言葉に感動してあげるべきなのだろうが、真意が全く見えないので、首を傾げて疑問を呈することしかミレオミールには出来なかった。
「まぁ多分ミオに限らないんだけど」と前置きを入れ、由乃は言葉を続けた。
「何かね、私の至らなさで、知り合いが人を殺すところを見るっていうのは……予想以上にね、堪えた」
「……うん」
ミレオミールの魔法が魔人に牙を剥いた時、由乃の心にあったのは、どうしようもない無力感だった。
事実、由乃は魔人と言う存在に、まるっきり歯が立たなかった。由乃は只管に弱く、勇者の剣の能力を駆使しても敵わず、ミレオミールの防御と攻撃によって、やっと生きながらえることができた。
「あの時さ、嫌だって思った」
ミレオミールの刃が、魔人を切り裂くのが。
彼が『人』を殺すのが。
「……多分、自分でやる何倍も、嫌だった」
「……だから、今回は自分でやったんだ」
今回。
脱獄した者たちとの、戦闘。
由乃は体ごとミレオミールの方へ向けて、斜に構える彼を、正面からしっかりと、真剣な瞳の中に映しだした。
「ミオ、私もう、二度ときみが人を殺そうとするところ、見たく無いの」
そのためなら――
人を殴る感触を知っていた。
人を切りつける感触を知りたく無かった。
人の肉を断つ感触を――由乃は知ってしまった。
ボウガンの矢を指した生々しい感触は、今でも手に、脳に、焼き付いて放れない。
一度経験してしまったそれは、もう二度と由乃から切り離されることは無く、一生苛まれることとなるだろう。
(それでも)
負った罪は、総て由乃の物だ。
他の誰のものでも無く、誰かに押し付けた物でも無く。
由乃が一生懸けて償わなくてはならない、業。
「――そういうことは全部、『勇者』がやる。だから、ミオは――私を守って、助けて」
けれど、由乃は独りでは無いのだ。
由乃が勇者になると決めた時。誰にも見つからない、塔の後ろで惨めったらしく泣き腫らしていた時。
ミレオミールは、確かに由乃を『勇者』と決めたのだ。
『――「ユノ」、俺は、アンタに俺の総てを賭けるよ――』
ハッキリ言ってしまえば、意味は解らなかったし、勝手に賭けるなとも思った。
これからの生を総て、由乃に捧げると言った。そんなもの、由乃は欲しいとも思わなかったし、人一人の人生なんて重い物、要らないともはっきり思った。人一人の人生を預かるだけの、余裕など無かったから。
ミレオミールはふっと笑った。
由乃の揺るぎなさを感じたらしく、同じように体の向きを整え、片足をベッドの外へ投げ出したまま、由乃に正面から、凪いだ湖面のような瞳で微笑みかけた。
「人を殺すの、嫌な癖に」
「嫌だよ。だから極力やんないよ」
「傷付けるのも嫌な癖に」
「その話は今してたじゃん」
由乃は苦く笑いながら、それでも彼に笑顔を見せた。
「私、人殺しシーン見てられるほど、心強くないから」
「…………?」
ミレオミールは首を傾げた。
「自分でやるのより?」
「ミオに押し付ける心の強さを持ってない」
「……心が強いから、自分でやるんだろ?」
心が強いから、自身の殺人を許容することなく、向き合っていく事ができるのだと。人の命を奪うと言う事実から目を逸らさず、ミレオミールの手を守ろうとしてくれているのだと。
ミレオミールはそう問う。
けれど、由乃は「違う違う」と軽く手を振った。
「本当に強い人はね、きっと、誰が手を汚しても、自分だけは手を汚さないの。それは『捕まるから』とか『犯罪だから』とか、そういう外的要因じゃなくて、自身がしないって決意してるから、絶対に破っちゃいけない一線を定めているから――」
静かに息を吐きながら、由乃はどこか遠くを見るように、自身の手を見つめた。
「その人はきっと、自身が死ぬ事になったとしても、相手を殺さないという意志を曲げない事ができる――そういう人なのよ」
誰も、殺さない意志。
それは、『生きる』ために己に科した、最大級の枷。どんなに辛くても、心が悲鳴を上げたとしても、どんなに生きることを放棄したくなっても――
だとしたら、
「……なら、俺は、ユノの心が強く無くて良かった」
由乃がきょとんと瞳を丸くして、満足そうに笑うミレオミールを見上げた。
「ユノの心は、俺が全部守る。手を汚すなんて言うけど、汚れたら洗えば良いし――それに、ユノがどんなに自分の手を汚いって言っても、俺が手をつないでやる。絶対に」
絶対に。
「でもま、先ず、そんな事態にならない様に、この大魔術師のミレオミール様が絶対に助ける。だからユノは、ユノだけは――
俺のことを、信じてくれ」
言葉を、
存在を、
――総てを。
「……あっははは!」
急に、由乃は笑い転げた。文字通り、転げた。
ベッドにうつ伏せに転がり、腹を抱え、「んふふふふ」と堪え切れずに爆笑しながら、ばしばしとベッドを叩いて体を震わせる。
風呂上がりだから結われていない、くるくると癖のある長い髪が散らばり、現代日本風に表現するならば、恐怖映像のような状況である。
ミレオミールは急に恥ずかしく――と言うよりも正気に戻り、今までの真剣な空気は何処へやら、普段の気兼ね無い、まるっきり通常通りの雰囲気に包まれ、安心感に包まれながら大きく息を吐き出した。
「……ユノ、ここは感動しながら笑顔で『信じるよ』とか言ってくれるとこだと思うんだけど」
「だって……むり……あははは面白い!ミオが真剣にクサい台詞言うんだもん!」
「クサいって」
結構酷い。
由乃が真剣だった分、ミレオミールも真剣に返したのに、だ。
「それを言うなら、ユノだって充分過ぎるほどクサいと思うけど」
「そんなの良いよ。ミオは笑わなかったし」
体は起こしたものの、笑いは未だ収まらないらしく、よしのはふふふと俯いて震えた。
「ユノは笑うし」
「ごめ……ふっ、ごめん」
「まだ笑うし」
半ば呆れ、半ば諦め、その様子がいつもの由乃で、夕方通信時に見せた、強がりな笑顔で無かったことに、ミレオミールは安心した。
勇者、八色由乃。
召喚されてきたからで無く、異世界人だからで無く、彼女が、『八色由乃』だったから――
「ユノ」
不意に、いつも通り、由乃の頭を撫でようと、ミレオミールは震える彼女の頭に手を伸ばした。けれど。
手は むわん という感じに由乃の頭を通過し、ミレオミールは沈黙した。
気付いた由乃は更に笑い、「馬鹿め」とミレオミールを罵った。
「きみ、今、『幽体離脱』なんでしょ?触れないって言ってたの、ミオじゃん」
「……」
『幽体離脱』とは、霊魂が本来あるべき肉体から離れ、勝手気ままに歩き回る現象――では無い。
数種類ある通信魔法の一種であり、ミレオミール自身あまり使う事の無い魔法、である。命名は勿論由乃だ。長所は相手と会って話す事が出来る点で、短所は自身の身体が無防備になる点と、今正に直面することとなった、物体に触れることが出来ない、という点である。この状態で魔法を行使することもできないので、由乃に回復魔法をかけないのも、かけない、のではなく、かけられない、というのが正しい。
触れる物に関して、何故かベッドや床やソファの類は除外される。原理は良く解らないが、おそらく、その動作で何かを害する事が無いから、だろう。
「ミオ」
どうやら笑いが引っ込んだらしい由乃が、笑いすぎて顔を真っ赤にし、瞳を涙で潤して、非常にスッキリとした笑顔で、ミレオミールの名を呼んだ。
「信頼してるよ」
簡潔に、それだけを述べる。
ミレオミールは数瞬言葉を失って、ゆっくりと肩から無駄な力を一切抜き、無邪気で、混じり気の無い、幸福そうな笑顔を、由乃に返した。
次回おまけと言うか、至らなさ故の説明不足を数ヵ所補完して、一区切りとなります。




